新規がん予防・早期発見システムを用いた包括的ながん予防の開発研究

文献情報

文献番号
200500460A
報告書区分
総括
研究課題名
新規がん予防・早期発見システムを用いた包括的ながん予防の開発研究
課題番号
H16-3次がん-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田原 榮一(財団法人放射線影響研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 安井 弥(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 児玉 和紀(財団法人放射線影響研究所)
  • 笠置 文善(財団法人放射線影響研究所)
  • 西 信雄(財団法人放射線影響研究所)
  • 藤原 佐枝子(財団法人放射線影響研究所)
  • 大石 和佳(財団法人放射線影響研究所)
  • 林 奉権(財団法人放射線影響研究所)
  • 谷山 清己(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本プロジェクトは、三つの大きな柱からなり、ユニークながん予防モデルと見なされる放射線影響研究所(放影研)の長期追跡集団を用いて消化器がんの早期発見・予防システムを確立する。
研究方法
1)SAGE法を用いて新規腫瘍マーカーの同定とがんの早期発見システムの開発。2)放影研寿命調査集団(LSS)のがん一次予防研究から食道・胃がんリスク評価チャートの作成。二次予防では、放影研成人健康調査(AHS)の血清試料を用いて胃がんネスティッド症例対照研究(胃がん357例、対照1,071例)と肝細胞がんへの進行促進要因に関するコホート内症例対照研究(肝がん224例、対照644例)。三次予防では、LSSがん罹患者の生存率に影響する因子の分析。3)IL-10遺伝子の多型と胃がん発症との関連を明らかにするための胃がん症例対照研究(胃がん238例、対照1,757例)。
結果と考察
1)では、SAGE法により新規に同定されたRegIVとMMP-10は、胃がんステージIにおいても血清中に検出され、その特異性は99%と85%であり、胃がんの早期診断の新しい腫瘍マーカーと見なされた。また、MMP-10は、胃がんの予後マーカーとしても役立つ。TelomereのG-Tail を簡便・高感度・定量的に測定できるG-tail telomere HPAを開発した。この新しい方法を用いてのG-tail測定は、がんのリスクを早い段階で検出できるものと期待される。2)の放影研長期追跡集団におけるがん一次予防研究から作成した食道がん・胃がんのがんリスクチャートは、早期の生活習慣改善を促す動機付けとなり、今後のがん予防対策に応用することができる。二次予防研究においては、胃がんの腸型とびまん型で、各リスク要因(H. pylori感染、放射線線量、喫煙など)の関与が異なっていた。三次予防研究では、女の胃がん、大腸がん、肝がんの発症後の喫煙習慣が予後と関連していた。3)では、IL-10遺伝子のハプロタイプの解析から血中IL-10レベルは、遺伝的影響のみならず放射線影響によっても増加し、胃がんリスクと密接に関連することを見出した。血中IL-10濃度は、リアルタイムでの胃がんリスクを表すことから、胃がん予防の代理指標として有望である。
結論
胃がんの新規腫瘍マーカー、RegIVとMMP-10、G-tail length、血中IL-10、そしてがんリスク評価チャートを包括的に組み合わすことによって、胃がん予防の良いモデルが確立されることを提唱したい。

公開日・更新日

公開日
2006-04-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200500460B
報告書区分
総合
研究課題名
新規がん予防・早期発見システムを用いた包括的ながん予防の開発研究
課題番号
H16-3次がん-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田原 榮一(財団法人放射線影響研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 安井 弥(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 児玉 和紀(財団法人放射線影響研究所)
  • 笠置 文善(財団法人放射線影響研究所)
  • 西 信雄(財団法人放射線影響研究所)
  • 藤原 佐枝子(財団法人放射線影響研究所)
  • 大石 和佳(財団法人放射線影響研究所)
  • 林 奉権(財団法人放射線影響研究所)
  • 谷山 清己(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本プロジェクトは、三つの大きな柱からなり、ユニークながん予防モデルと見なされる放射線影響研究所(放影研)の長期追跡集団を用いて消化器がんの早期発見・予防システムを確立する。
研究方法
1)SAGE法を用いて新規腫瘍マーカーの同定とがんの早期発見システムの開発。2)長期間追跡集団におけるがんの一次予防・二次予防・三次予防の基盤の確立。二次予防では、放影研成人健康調査の血清試料を用いて胃がんネスティッド症例対照研究と肝細胞がんへの進行促進要因に関するコホート内症例対照研究。三次予防では、寿命調査集団のがん罹患者の生存率に影響する因子の分析。3)HLAクラスIおよびIL-10遺伝子の多型と胃がん発症との関連を明らかにするための胃がん症例対照研究。
結果と考察
1)では、SAGE法により新規に同定されたRegIVとMMP-10は、胃がんステ
―ジIにおいても血清中に検出され、その特異性は99%と85%であり、胃がんの早期診断の新しい腫瘍マーカーと見なされた。TelomereのG-Tail を簡便・高感度・定量的に測定できるG-tail telomere HPAを開発した。RUNX3は胃がんのみならず乳がんでも高頻度に不活化していることを示した。2)の放射線影響研究所長期追跡集団におけるがん一次予防研究から作成した食道がん・胃がんのがんリスクチャートは、早期の生活習慣改善を促す動機付けとなり、今後のがん予防対策に応用することができる。二次予防研究においては、胃がんの腸型とびまん型で、各リスク要因(H. pylori感染、放射線線量、喫煙など)の関与が異なっていた。三次予防研究では、女の胃がん、大腸がん、肝がんの発症後の喫煙習慣が予後と関連していた。3)では、HLA-A*2601が被爆による胃がん発症の高感受性群であり、IL-10遺伝子のハプロタイプの解析から血中IL-10レベルは、遺伝的影響のみならず放射線影響によっても増加し、胃がんリスクと密接に関連することを見出した。
結論
胃がんの新規腫瘍マーカー、RegIVと MMP-10, G-tail length, 血中IL-10, そしてがんリスク評価チャートを包括的に組み合わすことによって、胃がん予防の良いモデルが確立されることを提唱したい。

公開日・更新日

公開日
2006-04-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500460C

成果

専門的・学術的観点からの成果
胃がんの新規腫瘍マーカ(RegIV, MMP-10)、G-tail length, 血中IL-10,そしてがんリスク評価チャートを包括的に組み合わせることによって、胃がん予防の良いモデルが確立されることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
RegIVとMMP-10は、胃がんステージIでも血清中に検出され、その特異性は99%と88%であり、胃がんの早期診断の新しい腫瘍マーカである。また、血中IL-10濃度は、リアルタイムでの胃がんリスクを表す。
ガイドライン等の開発
ガイドラインは現在検討中である。
その他行政的観点からの成果
放射線影響研究所長期追跡集団におけるがん一次予防研究から作成した食道・胃がんのがんリスクチャートは、早期の生活習慣開眼を促す動機付けとなり、今後のがん予防対策に応用することができる。
その他のインパクト
本研究で得られた胃がん予防モデルは、科学的証拠に基づいた開発研究成果であり、今後、被爆者およびその二世のみならず一般国民のがん予防対策に役立つものと考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
64件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
1) 特許申請中 特願2004-36361「がんの新規診断法」(安井), 2) 特許申請準備中「HBV DNAの高感度定量系の開発」(大石)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Motoshita J, Oue N, Yasui W, et al.
DNA methylation profile of differentiated-type gastric carcinomas with distinct mucin phenotypes.
Cancer Sci , 96 (8) , 474-479  (2005)
原著論文2
Oue N, Mitani Y, Yasui W, et al.
Expression and localization of RegIV in human neoplastic and non-neoplastic tissues: RegIV expression is associated with intestinal and neuroendocrine differentiation in gastric adenocarcinoma.
J Pathol , 207 , 185-198  (2005)
原著論文3
Yamada M, Fujiwara S, Suzuki G, et al.
Smoking and alcohol habits as risk factors for benign digestive diseases in a Japanese population: the Radiation Effects Research Foundation Adult Health Study.
Digestion , 71 , 231-237  (2005)
原著論文4
Hayashi T, Imai K, Morishita Y, et al.
Identification of the NKG2D haplotypes associated with natural cytotoxic activity of peripheral-blood lymphocytes and cancer immunosurveillance.
Cancer Res , 66 (1) , 563-570  (2005)
原著論文5
Yasui W, Oue N, Ito R, et al.
Search for new biomarkers of gastric cancer through serial analysis of gene expression and its clinical implication (Review article).
Cancer Sci , 95 (5) , 385-392  (2004)
原著論文6
Sauvaget C, Kasagi F, Waldren CA.
Dietary factors and cancer mortality among atomic-bomb survivors.
Mutation Res , 551 , 145-152  (2004)
原著論文7
Yamada M, Kasagi F, Suzuki G, et al.
Effects of dementia on mortality in the Radiation Effects Research Foundation Adult Health Study.
Gerontol , 50 , 110-112  (2004)
原著論文8
Suzuki G, Shimada Y, Hayashi T, et al.
An Association between oxidative stress and radiation-induced lymphomagenesis.
Radiat Res , 161 , 642-647  (2004)
原著論文9
Allen NE, Sauvaget C, Suzuki G, et al.
A prospective study of diet and prostate cancer in Japanese men.
Cancer Causes Control , 15 , 911-920  (2004)
原著論文10
Nakachi K, Hayashi T, Imai K, et al.
Perspectives on cancer immuno- epidemiology.
Cancer Sci , 95 (12) , 921-929  (2004)
原著論文11
Hayashi T, Hayashi I, Shinohara T, et al.
Radiation-induced apoptosis of stem/progenitor cells in human umbilical cord blood is associated with alterations in reactive oxygen and intracellular pH.
Mutat Res , 556 , 83-91  (2004)
原著論文12
Ogawa T, Hayashi T, Kyoizumi S, et al.
Anisomycin downregulates gap-junctional intercellular communication via the p38 MAP-kinase pathway.
J Cell Sci , 117 , 2087-2096  (2004)
原著論文13
Yamaoka M, Kasagi F, Hayashi T, et al.
Decreases in percentages of navive CD4 and CD8 T-cells and increases in percentages of memory CD8 T-cell subsets in the peripheral blood lymphocyte populations of A-bomb survivors.
Radiat Res , 161 , 290-298  (2004)
原著論文14
Yasui W, Oue N, Ono S, et al.
Histone acetylation and gastrointestinal carcinogenesis.
Ann NY Acad Sci , 983 , 220-231  (2003)
原著論文15
Hamai Y, Oue N, Yasui W, et al.
DNA hypermethylation and hypoacetylation of the HLTF gene are associated with reduced expression in gastric carcinoma.
Cancer Sci , 94 (8) , 692-698  (2003)
原著論文16
Oue N, Taniyama K, Yasui W, et al.
DNA methylation of multiple genes in gastric carcinoma: Association with histological type and CpG island methylator phenotype.
Cancer Sci , 94 (10) , 901-905  (2003)
原著論文17
Kuraoka K, Oue N, Yasui W, et al.
Correlation of a single nucleotide polymorphism in the E-cadherin gene promoter with tumorigenesis and progression of gastric carcinoma in Japan.
Int J Oncol , 23 , 421-427  (2003)
原著論文18
Fujiwara S, Sharp GD, Cologne J, et al.
Prevalence of hepatitis B virus infection among atomic bomb survivors.
Radiat Res , 159 , 780-786  (2003)
原著論文19
Sharp GB, Fujiwara S, Mabuchi K, et al.
Hepatocellular carcinoma among atomic bomb survivors: Significant interaction of radiation with hepatitis C virus infections.
Int J Cancer , 103 , 531-537  (2003)
原著論文20
Hayashi T, Fujiwara S, Morishita Y, et al.
HLA haplotype is associated with diabetes among atomic bomb survivors.
Hum Immunol , 64 , 910-916  (2003)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-