がん予防に有用な情報基盤整備に関する研究

文献情報

文献番号
200500459A
報告書区分
総括
研究課題名
がん予防に有用な情報基盤整備に関する研究
課題番号
H16-3次がん-011
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小山 博史(東京大学大学院医学系研究科クリニカルバイオインフォマティクス)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
38,280,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

文献情報

文献番号
200500459B
報告書区分
総合
研究課題名
がん予防に有用な情報基盤整備に関する研究
課題番号
H16-3次がん-011
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小山 博史(東京大学大学院医学系研究科クリニカルバイオインフォマティクス)
研究分担者(所属機関)
  • 大江 和彦(東京大学大学院医学系研究科医療情報経済学)
  • 児玉 安司(東京大学医学部附属病院)
  • 小野木 雄三(東京大学大学院医学系研究科クリニカルバイオインフォマティクス研究ユニット)
  • 若尾 文彦(国立がんセンター中央病院放射線診断部)
  • 小出 大介(東京大学大学院医学系研究科クリニカルバイオインフォマティクス研究ユニット)
  • 山本 精一郎(国立がんセンター研究所・がん予防・検診研究センター情報研究部予防検診情報評価室)
  • 日紫喜 光良(産業技術総合研究所生物情報解析研究センター)
  • 菅野 康吉(栃木県立がんセンター研究所がん遺伝子研究室・がん予防研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、がん予防にむけた新しい社会システムとしての情報工学技術を用いた情報基盤として①一般向けがん予防情報基盤、②医療者向けがん予防情報基盤、③研究者向けがん予防情報基盤に有効なソフトあるいはシステムの開発を目標とした。
研究方法
欧米のがん予防の歴史と米国のがん征圧政策における情報工学の役割について抽出し「科学的に信憑性の高いがん予防情報が、適切なタイミングで、適切な人に提供されているための情報基盤とは」について国内の現状を分析し、その解決に有効と思われる情報基盤の整備を目指した。
結果と考察
A.一般の方向けがん予防情報基盤整備:①がん予防と健康増進のための情報を入力し、その入力データに応じて情報提供できる在宅用ソフトウエアを開発した。②がん予防に有効な情報基盤整備の研究に関するポータルサイトを構築した。
B.がん患者の方向けがん予防情報基盤整備:①がん予防情報コンテンツと個別の用途に応じ最適な情報の抽出論理を検索ログから解析できるシステムを開発した。②病院情報システムからがんのハイリスクグループを抽出する機能について開発・検証した。
C.医療従事者向けがん予防情報基盤整備:①医療者ががん予防に関する遺伝医療に関する最新の医学的知識を習得を目標としたe-learning システムを開発した。②がん検診レポーティングシステムの診断報告書から検診結果報告書を作成する判定登録システムを開発した。
D.がん予防に関する基礎研究者向け情報基盤整備:①乳がん患者に対する大規模コホート研究を行うことを目的とした生活習慣に関する質問票と代替療法に関する質問票を開発した。②がん予防薬と遺伝子・タンパク質との既知の関係を整理して集約したWebサイト「GenoCache」の機能の強化を行った。③Open Grid Service Architecture(OGSA-WebDB)を用い、がん予防に関する検索情報に対するOMIM、KEGG, JSNP, PharmGKBの仮想データベースを開発し、統合検索可能な基本システムを構築した。
結論
がん予防情報研究に有効な情報基盤を海外の文献等から抽出し、下記のシステム及び支援ツールを開発した。
1.計算機可読性を有するがん予防に関する用語・オントロジ
2.臨床データとゲノム関連データをデータマイニング可能ながん予防情報データベースシステム
3.遺伝子多型を加味した薬物動態モデル化ツール
4.個別最適化がん予防情報提供のための情報システム
5.在宅におけるがん予防情報提供ソフトウエア
6.Grid技術を用いたがん予防研究情報検索システム

公開日・更新日

公開日
2006-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500459C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、新しい社会システムとしてのICTを用いたがん予防法の基盤整備として①一般国民むけにがん予防情報提供が可能なオープンソースソフトウエアの開発、②医療機関向けには院内ネットワークでも導入可能ながん予防情報提供システムを開発、さらに、③最新のグリッド技術(OGSA-Web)を用いたOMIM、PharmGKB, PubMed, JSNPDBから統合検索可能な情報システムを開発し、専門的がん予防研究の情報処理基盤と高いエビデンス作成のための疫学介入研究等に有効な情報処理基盤を整備した。
臨床的観点からの成果
臨床におけるがん予防に関するデータ処理とデータマイニング用のデータベース仕様、個別最適化を目指したがん予防情報提供システムの開発、家庭医学の中でのがん予防に関する情報提供をがん検診や人間ドックなどの受診結果を登録することでがん予防に関する情報提供を可能とするオープンソースのソフトウエアを開発することで、ICTを用いた新しいがん予防に関する行動変容を期待できる手法を提案したことは、今後の臨床に根ざしたがん予防診療の質の向上にも貢献することが期待される。
ガイドライン等の開発
PubMed, OMIM, JSNP, PharmGKBという4つのデータベースの検索について組み合わせ検索や統合検索を可能する情報基盤システムを公開することで、がん予防に関するガイドライン等の作成支援を加速化することが強く期待できる。また、がん予防に関する臨床データとゲノムデータとのデータマイニングを可能とするデータベース仕様を提案したことで、本領域のデータベース統合のガイドライン的な役割を演ずることが期待される。
その他行政的観点からの成果
エビデンスレベルの高いがん予防情報を研究者のみならず一般国民に利用できるIT基盤を現時点で整備したことは、今後の国民へのエビデンスという評価概念の普及とそれによる科学的信憑性の高いがん予防情報選択する情報リテラシーを向上させることが強く期待できる。これにより、今後蓄積していくエビデンスレベルの高いがん予防情報の各施設での効果的活用の推進のみならず広く国民の生活習慣改善とがん検診受診率の向上に寄与できる基盤となることが予想できる。
その他のインパクト
日本経済新聞で概要について一面に紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
72件
原著論文(英文等)
36件
その他論文(和文)
22件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
108件
学会発表(国際学会等)
21件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
①一般向けがん予防情報に関する情報検索サイトを試験公開した。 ②個別がん情報最適化システムソフトをフリーで提供可能とした。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hanaoka T., Yamamoto S., Sobue T., et al.
Active and passive smoking and breast cancer risk: observational cohort study.
Int J Cancer , 114 (2) , 317-322  (2005)
原著論文2
Horstmann E., McCabe M. S., Grochow L., Yamamoto S. et al.
Risks and Benefits of Phase 1 Oncology Trials: 1991-2002.
New Engl J Med , 352 (9) , 895-904  (2005)
原著論文3
Kodera Y., Sasako M., Yamamoto S., el al.
Identification of risk factors for the development of complications following extended and super-extended lymphadenectomies for gastric cancer.
Br J Surg , 92 (9) , 1103-1109  (2005)
原著論文4
Takano T., Ohe Y., Sakamoto H., et al.
Epidermal growth factor receptor gene mutations and increased copy numbers predict gefitinib sensitivity in patients with recurrent non–small-cell lung cancer.
J Clin Oncol , 23 (28) , 6829-6837  (2005)
原著論文5
Ishihara J., Yamamoto S., Iso H., et al.
Incidence of multiple primary malignancies in a cohort of adult patients with soft tissue sarcoma.
Jpn J Clin Oncol. , 35 (8) , 444-452  (2004)
原著論文6
Sano T., Sasako M., Yamamoto S., et al.
Gastric cancer surgery: results of morbidity and mortality of a prospective randomized controlled trial (JCOG 9501) comparing D2 and extended para-aortic lymphadenectomy.
J Clin Oncol , 22 (14) , 2767-2773  (2004)
原著論文7
Iwata T., Sugano K., et al.
Frequent immune responses to a cancer/testis antigen, CAGE, in patients with microsatellite instability-positive endometrial cancer.
Clin Cancer Res , 11 (10) , 3949-3957  (2005)
原著論文8
Chihara Y., Sugano K. et al.
Loss of blood group A antigen expression in bladder cancer caused by allelic loss and/or methylation of the ABO gene.
Lab Invest , 85 (7) , 895-907  (2005)
原著論文9
Koide D., Peskin E..
New uses for computer in medical education, clinical practice, and patient safety in the US and Japan.
Progress in Informatics. , 1 (2) , 3-15  (2005)
原著論文10
Hara K. , Ohe K., Kadowaki T., et al.
Establishment of a method of anonymization of DNA samples in genetic research.
Journal of Human Genetics , 48 (6) , 327-330  (2003)
原著論文11
OnogiY. , Ohe K. , Tanaka M., et al.
Mapping Japanese Medical Terms to UMLS Metathesaurus.
MEDINFO , 11 (1) , 406-410  (2004)
原著論文12
Shinohara N. , Oyama H. , Matsuya S., et al.
A Computational Methd for Identifying Medical Complications based on Hospital Information System Data.
Chinese Hospitals , 9 (1) , 133-134  (2005)
原著論文13
Kuroda Y., Nakao M., Kuroda T., Oyama H. et al.
MVL: medical VR simulation library.
Stud Health Technol Inform. , 111 (1) , 273-276  (2005)
原著論文14
Nakao M., Kuroda T., Komori M., Oyama H., Komeda M.
Physics-based preoperative approach planning using hybrid virtual bodies.
Stud Health Technol Inform. , 98 (1) , 262-264  (2004)
原著論文15
Hori K., Kuroda T., Oyama H., et al.
Improving precise positioning of surgical robotic instruments by a three-side-view presentation system on telesurgery.
J Med Syst , 29 (6) , 661-670  (2005)
原著論文16
Kuroda Y., Nakao M., Kuroda T., Oyama H., Komori M.
Interaction model between elastic objects for haptic feedback considering collisions of soft tissue.
Comput Methods Programs Biomed. , 80 (3) , 216-224  (2005)
原著論文17
Kuroda Y., Nakao M., Kuroda T., Oyama H., et al.
FEM-based interaction model between elastic objects for indirect palpation simulator.
Stud Health Technol Inform , 98 (1) , 262-264  (2004)
原著論文18
Nakao M., Imanishi K., Kuroda T., Oyama H.
ractical haptic navigation with clickable 3D region input interface for supporting master-slave type robotic surgery.
Stud Health Technol Inform. , 98 (1) , 265-271  (2004)
原著論文19
Iwata T., Sugano K., et al.,
Frequent immune responses to a cancer/testis antigen, CAGE, in patients with microsatellite instability-positive endometrial cancer.
Clin Cancer Res , 11 (10) , 3949-3957  (2005)
原著論文20
Ishihara J., Yamamoto S., Iso H., et al.
Validity of a self-administered food frequency questionnaire (FFQ) and its generalizability to the estimation of dietary folate intake in Japan.
Nutrition Journal , 4 (26) , 1475-2891  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-