生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価

文献情報

文献番号
200500458A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価
課題番号
H15-3次がん-010
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
津金 昌一郎(国立がんセンターがん予防・検診研究センター 予防研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科)
  • 若井 建志(愛知県がんセンター研究所)
  • 永田 知里(岐阜大学大学院医学研究科)
  • 溝上 哲也(九州大学大学院医学研究院)
  • 田中 恵太郎(佐賀大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
81,740,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人ががんを予防するために行うべき適切な生活習慣を、科学的証拠に基づいて提示するとともに、それを達成するための具体的な方法を開発し、最終的に、生活習慣改善によるがん罹患率の減少をめざす。
研究方法
日本人における全がん及び主要部位がん(胃・大腸・肺・乳・肝)と野菜・果物との関連を検討した疫学研究に基づき、共通基準によりその関連性の強さを客観的・量的に評価した。また、野菜及び果物以外の食事関連項目と上記がんとの関連に関する疫学的知見を整理した。現行大規模コホート集団を用いたメタ・アナリシスにより、飲酒量による日本人の全がん及び大腸がんリスクの量的評価を行った。がん予防をめざした生活習慣改善の具体的方法を開発評価するための介入研究として、職域集団、地域集団、高危険集団などにおける介入研究を開始・進捗させた。
結果と考察
野菜・果物摂取とがんとの関連については、胃がんにおいて野菜とのpossibleな、果物とのprobableな、大腸がんにおいて果物とのpossibleな負の関連があると結論づけられた。その他の部位については、判定するには証拠が不十分であった。飲酒とがんとの関連に関するメタ・アナリシスでは、男性において、1日3合以上で全がんのリスクが約1.3-1.4倍上昇し、大腸がんについては、1日1合以上でリスクとなり、1日4合以上の多量飲酒でリスクが2倍上昇すると推定された。胃がん予防をめざした地域介入研究では、野菜・果物の高摂取と減塩の食事指導により、血圧降下という健康によい副次的効果をもたらすことが示された。大腸がん予防をめざした食生活及び運動習慣に関する職域介入研究では、4月後介入群で運動量が増加する傾向を認めたが、12ヶ月後の評価では介入の効果は明らかでなかった。
結論
胃がんにおいて野菜とのpossibleな負の関連、果物とのprobableな負の関連、大腸がんにおいて果物とのpossibleな負の関連があると結論づけられた。胃がん予防をめざした地域介入研究では、野菜・果物の高摂取と減塩の食事指導により、血圧降下という健康によい副次的効果をもたらすことが示された。大腸がん予防をめざした職域介入研究では、4月後介入群で運動量が増加する傾向を認めたが、1年後の効果は明らかでなかった。これらの結果については、本研究班において開設したホームページで公開し、国民への還元を図る。

公開日・更新日

公開日
2006-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200500458B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価
課題番号
H15-3次がん-010
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
津金 昌一郎(国立がんセンターがん予防・検診研究センター 予防研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科)
  • 若井 建志(愛知県がんセンター研究所)
  • 永田 知里(岐阜大学大学院医学研究科)
  • 溝上 哲也(九州大学大学院医学研究院)
  • 田中 恵太郎(佐賀大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人ががんを予防するために行うべき適切な生活習慣を、科学的証拠に基づいて提示するとともに、それを達成するための具体的な方法を開発し、最終的に、生活習慣改善によるがん罹患率の減少をめざす。
研究方法
日本人における喫煙、飲酒、野菜・果物とがんとの関連に関する文献レビューとその要約と総括評価を行った。がん予防をめざした生活習慣改善の具体的方法を開発評価するため、職域集団、地域集団、高危険集団などにおける介入研究を実施した。日本人におけるがん予防に関する認識、関心度と期待度などについて把握するため、無作為抽出による意識調査を実施した。
結果と考察
日本人におけるがんとの関連に関して、喫煙については、それぞれ、全がん:Convincing(1.5倍)、胃がん:Convincing(1.7倍)、大腸がん:Possible(結腸がんInsufficient、直腸がんPossible)、肺がん:Convincing(3.6倍)、乳がん:Possible、肝がん:Probableの正の関連、飲酒については、全がん:Convincing(男1日3合以上で1.4倍)、胃がん:Insufficient、大腸がん:Probable(男1日4合以上で2倍)(結腸がんProbable、直腸がんProbable)、肺がん:Insufficient、乳がん:Insufficient、肝がん:Convincingの正の関連があると結論づけられた。野菜・果物摂取とがんとの関連については、胃がんで野菜とのpossibleな負の関連、果物とのprobableな負の関連、大腸がんで果物とのpossibleな負の関連があると結論づけられた。地域介入研究、職域介入研究等を実施した。意識調査の結果、日本人におけるがん予防に関する認識は、依然として感染や有害物質、汚染などの方が食生活などに比較して高く考えられていること、がん予防法の効果に期待があっても実際の取り組みはその半数でしか行われていないことなどが判明した。
結論
本研究における日本人の生活習慣とがんとの関連に関する要約と総括評価をもとに、がん予防をめざした生活習慣改善の具体的方法を開発・評価した。これらのがん予防情報については、本研究班において開設したホームページ(http://epi.ncc.go.jp/can_prev/)で公開し、国民への還元を図っていく。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500458C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国では、科学的根拠に基づいた日本人の疫学研究からのエビデンスが不足しており、既存のがん予防指針や勧告が必ずしも日本人に適用できるという保障はなかった。本研究では、主要な生活習慣とがんとの関連について、日本人を対象とした疫学研究の文献レビューに基づいて、関連の有無を客観的視点から評価し、関連がある場合には、メタ・アナリシスによりその影響の大きさを具体的数値として示した。これらの成果は、日本人にとって効果的・効率的な生活習慣改善によるがん予防の具体的方法を考案するための必須の科学的基盤になった。
臨床的観点からの成果
本研究の成果はがん患者の具体的診療に役立つものではないが、本研究において開発された効果的・効率的な生活習慣改善によるがん予防法が、国民に普及し、具体的に実施されれば、一部の国民が、がんになるのを未然に防止できるものと期待される。
ガイドライン等の開発
本研究において実施した生活習慣とがんとの関連に関する文献レビューに基づく科学的・客観的視点からの評価判定と関連の大きさについての具体的数値は、現行において最新のものであり、現代の平均的日本人に適用できる。従って、今後、がん予防に関するガイドラインの作成が予定されているが、そのための重要な基礎資料となる。
その他行政的観点からの成果
本研究において実施した生活習慣とがんとの関連に関する科学的証拠の評価判定結果と関連の大きさについての具体的数値は、わが国の今後のがん予防施策を具体的に進めていく上で不可欠な、極めて重要な基礎資料となる。
その他のインパクト
本研究によって得られた知見は、研究班において開設したホームページに掲載して、国民への積極的な情報還元を図っている。これらの知見については、いくつかの新聞でも取り上げられた。喫煙と全がんとの関連の強さから、日本人のがんをたばこ対策により9万人減らせるなどの推計や、日本人成人を対象に実施したオムニバス調査によるがんの原因に関する認識の結果については、複数のメディアに取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
46件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Inoue M, Tsuji I, Wakai K, et al.
Evaluation based on systematic review of epidemiological evidence among Japanese populations: tobacco smoking and total cancer risk.
Jpn J CLin Oncol , 35 , 404-411  (2005)
原著論文2
Mizoue T, Inoue M, Tanaka K, et al.
Tobacco smoking and colorectal cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol , 36 , 25-39  (2006)
原著論文3
Wakai K, Mizoue T, Tanaka K, et al.
Tobacco Smoking and Lung Cancer Risk: an Evaluation Based on a Systematic Review of Epidemiological Evidence among the Japanese Population.
Jpn J Clin Oncol , 36 , 309-324  (2006)
原著論文4
Nagata C, Mizoue T, Tanaka K, et al.
Tobacco smoking and breast cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among Japanese population.
Jpn J Clin Oncol , 36 , 387-394  (2006)
原著論文5
Tanaka K, Tsuji I, Wakai K, et al.
Cigarette smoking and liver cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among Japanese.
Jpn J Clin Oncol , 36 , 445-456  (2006)
原著論文6
Inoue M, Iwasaki M, Otani T, et al.
Public awareness of risk factors for cancer among the Japanese general population: a population-based survey.
BMC Public Health , 6 , 2-2  (2006)
原著論文7
Takahashi Y, Sasaki S, Okubo S, et al.
Blood pressure change in a free-living population-based dietary modification study in Japan.
J Hypertension , 24 , 451-458  (2006)
原著論文8
Sasazuki S, Sasaki S, Tsubono S, et al.
The effect of 5-year vitamin C supplementation on serum pepsinogen level and Helicobacter pylori infection.
Cancer Sci , 94 , 378-382  (2003)
原著論文9
Takashashi Y, Sasaki S, Takahashi M, et al.
A population- based dietary intervention trial in a high-risk area for stomach cancer and stroke: changes in intakes and related biomarkers.
Prev Med , 37 , 432-441  (2003)
原著論文10
Otani T, Iwasaki M, Inoue M, et al.
Body mass index, body height and subsequent risk of colorectal cancer in middle-aged and elderly Japanese men and women: Japan Public Health Center-based Prospective Study.
Cancer Causes Control , 16 , 839-850  (2005)
原著論文11
Tsubono Y, Otani T, Kobayashi M, et al.
No association between fruit or vegetable consumption and the risk of colorectal cancer in Japan.
Br J Cancer , 92 , 1782-1784  (2005)
原著論文12
Inoue M, Tsugane S.
Impact of alcohol drinking on total cancer risk: data from a large-scale population-based cohort study in Japan.
Br J Cancer , 92 , 182-187  (2005)
原著論文13
Hanaoka T, Yamamoto S, Sobue T, et al.
Active and passive smoking and breast cancer risk in middle-aged Japanese women.
Int J Cancer , 114 , 317-322  (2005)
原著論文14
Liu Y, Sobue T, Otani T, et al.
Vegetable, fruit consumption and risk of lung cancer among middle-aged Japanese men and women: JPHC study.
Cancer Causes Control , 15 , 349-357  (2004)
原著論文15
Inoue M, Hanaoka T, Sasazuki S, et al.
Impact of tobacco smoking on subsequent cancer risk among middle-aged Japanese men and women: data from a large-scale population-based cohort study in Japan -The JPHC Study.
Prev Med , 38 , 516-522  (2004)
原著論文16
Otani T, Iwasaki M, Yamamoto S, et al.
Alcohol consumption, smoking, and subsequent risk of colorectal cancer in middle-aged and elderly Japanese men and women: JPHC Study.
Cancer Epidemiol Biomarker Prev , 12 , 1492-1500  (2003)
原著論文17
Nakaya N, Tsubono Y, Kuriyama S, et al.
Alcohol consumption and the risk of cancer in Japanese men: the Miyagi cohort study.
Eur J Cancer Prev , 14 , 169-174  (2005)
原著論文18
Sato Y, Tsubono Y, Nakaya N, et al.
Fruit and vegetable consumption and risk of colorectal cancer in Japan: The Miyagi Cohort Study.
Public Health Nutr , 8 , 309-314  (2005)
原著論文19
Mizoue T, Yamaji T, Tabata S, et al.
Dietary pattern and colorectal adenomas in Japanese men: The Self-Defense Forces Health Study.
Am J Epidemiol , 161 , 338-345  (2005)
原著論文20
Sakamoto T, Hara M, Higaki Y, et al.
Influence of alcohol consumption and gene polymorphisms of ADH2 and ALDH2 on hepatocellular carcinoma in a Japanese population.
Int J Cancer , 118 , 1501-1507  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-