難治性小児がんの臨床的特性の分子情報とその理論を応用した診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
200500457A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性小児がんの臨床的特性の分子情報とその理論を応用した診断・治療法の開発
課題番号
H16-3次がん-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
秦 順一(国立成育医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター研究所)
  • 大喜多 肇(国立成育医療センター研究所)
  • 宮下 俊之(国立成育医療センター研究所)
  • 副島 英伸(佐賀大学医学部)
  • 黒田 雅彦(東京医科大学)
  • 大平 美紀(千葉県がんセンター)
  • 熊谷 昌明(国立成育医療センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
31,036,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルムス腫瘍をはじめとする胎児性腫瘍を合併する腫瘍・奇形症候群(Beckwith-Wiedemann症候群やGorlin症候群等)、Ewing肉腫、横紋筋肉腫、白血病など小児がんの主たる病型および難治性再発例の特徴を含めた病態の特性を表す遺伝子変異の解析、網羅的分子発現プロファイリング、キメラ遺伝子や表面分子を明らかにし、それらを標的とした新規治療モデルを開発する。
研究方法
1)小児がんにおける遺伝子構造異常の詳細解析と遺伝子標的治療モデルの開発、2)エピジェネティックな遺伝子修飾や臓器形成遺伝子機能の解析、3)再発小児がんの生物学的特異性の解明と早期予知法の開発、4)中央診断システムと検体保存システムの構築による診断法の標準化と臨床研究・基礎研究の推進、を行った。
結果と考察
Beckwith-Wiedemann症候群におけるエピジェネティックな遺伝子修飾や遺伝子変異についてわが国最大の症例数での解析が進み種類や頻度が明らかになったが、欧米での報告との差異も明らかになった。Gorlin症候群の遺伝子変異同定を引き続き行ったが、本症候群で特徴的に生じるスプライス異常を網羅的に同定するDNAチップを開発した。
小児ALLの層別化指標として骨髄MRDのフローサイトメトリー検出のシステム構築を開始し、精度0.01%を達成した。小児がんに特化したDNAチップは開発が終了し、一部小児がんの中間危険群同定に役立つ可能性が示された。
小児腫瘍で生じるキメラ遺伝子を標的とした増殖制御法のモデル開発を継続したが、細胞株で有効であってもヒト腫瘍異種移植系では効果が見られないなどの問題点も浮かび上がった。現在、細胞の刺激伝達回路でキメラ遺伝子の下流に位置する遺伝子を網羅的に解析し、治療標的遺伝子を絞り込みつつある。小児がん研究推進に必須の中央診断と検体保存が本格化した。わが国で実施されている主な臨床研究と連携して作業が進められている。特に、小児ALLでは年間約150例のペースで細胞マーカー診断と検体保存が達成できている。
結論
希少疾患である小児腫瘍について中央診断と検体保存システムを構築しつつ研究を推進する体制を整備することが重要であると考えていたが、その観点からは多大な進歩が見られた。個々の研究成果は新規性、科学性が高いと考えているが、今後より一層の進展を目指す。

公開日・更新日

公開日
2006-04-19
更新日
-