がんの臨床的特性に関する分子情報に基づくがん診療法の開拓的研究

文献情報

文献番号
200500456A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの臨床的特性に関する分子情報に基づくがん診療法の開拓的研究
課題番号
H16-3次がん-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 輝彦(国立がんセンター研究所腫瘍ゲノム解析・情報研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 落合 淳志(国立がんセンター東病院臨床開発センター)
  • 市川 仁(国立がんセンター研究所腫瘍発現プロジェクト)
  • 菅野 康吉(栃木県立がんセンター研究所がん遺伝子研究室・がん予防研究室)
  • 青木 一教(国立がんセンター研究所がん宿主免疫研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
77,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重要な臨床的特性を規定する分子情報の解析に基づきがん診療の標的を同定、新たな診療法を開拓・検証する事を目指す。具体的には(1)食道がん等の治療前生検組織解析による放射線化学療法(CRT)等の治療感受性の予知、(2)AMLの発症・悪性化に働く分子経路の解明と新規治療標的分子の同定、(3)HNPCCの新しいスクリーニング指標の開発、(4)固形がんに対する同種主要組織適合抗原(MHC)遺伝子導入と造血幹細胞移植の複合療法の開発。
研究方法
(1)治療奏効性の予知を目指して、遺伝子発現プロファイルに代表的判別アルゴリズムを適用した。また、開発した画像解析システムにより腫瘍内血管密度を客観的に測定した。(2)AMLのキメラ遺伝子の機能と下流遺伝子を探索した。小児AMLの遺伝子発現プロファイルのunsupervised clusteringにより亜群を同定した。(3)HNPCCの遺伝子検査にて病的変異を検出するリスクを層別化して解析した。(4)マウス移植がんの系に同種造血幹細胞移植モデルを組み合わせ、同種MHC class I抗原発現プラスミド局注による免疫遺伝子・細胞複合治療を開発した。
結果と考察
(1)6種類の判別アルゴリズムの誤判別率は0.17?0.34で大半がnon-CR群である事から、試料数の偏りが原因と考えられた。腫瘍内血管密度が放射線治療奏効性と相関する事を示した。(2)造血幹細胞自己複製の促進がt(8;21)-AMLとinv(16)-AMLの発症に関わる共通分子経路である事を示唆した。小児単球系AMLにおいて、治療の層別化に有用な新たな亜群分類の可能性を示した。(3)多重がんの罹患歴を主とする第一度近親内の情報と、発端者の初発がん罹患時年齢からHNPCCの遺伝子検査で病的変異を認める確率の新たな指標を考案した。核家族化が進む本邦のHNPCCスクリーニングに有用と期待される。(4)免疫遺伝子・細胞複合療法により、GVHDを増悪する事なく全身性の腫瘍特異的免疫反応が増強される事、移植後の免疫系再構築時に腫瘍抗原を暴露しておいても免疫寛容が誘導される事なく抗腫瘍効果が得られる事を示した。
結論
上記目的に関して、(1)?(3)については、前向き臨床研究での症例追加と検証の段階に進むべき成果を得た。(4)は実験的治療の複合であるが、その基本的rationaleが示され、今後段階的な臨床試験を企画する。

公開日・更新日

公開日
2006-04-27
更新日
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