文献情報
文献番号
200500455A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの生物学的特性の分子基盤の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H16-3次がん-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
横田 淳(国立がんセンター研究所生物学部)
研究分担者(所属機関)
- 清野 透(国立がんセンター研究所ウイルス部)
- 落谷 孝広(国立がんセンター研究所がん転移研究室)
- 堺 隆一(国立がんセンター研究所細胞増殖因子研究部)
- 神奈木 玲児(愛知県がんセンター研究所分子病態学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
97,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、多様性のあるがんの生物学的特性を、ゲノム・リン酸化蛋白質・細胞接着糖鎖などの情報と、細胞不死化・幹細胞の樹立とがん化・分化誘導など、細胞がん化機構解明に重要な様々な情報と手法を組み合わせて解明し、がんの個性診断や分子標的療法の開発に有用な分子情報を得ることである。
研究方法
細胞不死化や幹細胞培養の技術とゲノム情報を組み合わせて多段階的な発がん過程の再現による分子基盤の解明を試みるとともに、ゲノム解析では解決できない蛋白質リン酸化や細胞接着糖鎖構造に関する解析も進め、がんの新たな制御法開発へ向けた研究を進める。
結果と考察
ヒト肺がんの約10%でホモ欠失している新規候補がん抑制遺伝子としてPTP-RDを同定した。肺がんのがん抑制遺伝子として単離したMYO18Bは筋線維のZ-lineに存在し、A-bandに存在する通常の筋型ミオシンとは異なった機能を有することが示唆された。p16/RB経路の不活化とテロメラーゼの活性化により、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮頚がんの多段階発がんモデルを作製した。E6の発現により、p53の分解を介して、扁平上皮の分化に関わるNotch1の発現が低下することを明らかにした。ヒト間葉系幹細胞を肝細胞へ分化させることに成功した。ラットES細胞の樹立に向けて、ES細胞の培養法と相同組み換えの条件検討が終了した。Fyn蛋白質に対する親和性とチロシンリン酸化の2つの特性から、ヒト肺がん細胞株の足場依存性増殖を制御する新規分子を同定した。ヒト大腸がん細胞株の低酸素培養によってシアル酸トランスポーター遺伝子の発現が上昇し、その結果、N-グリコリル型シアル酸を持つGM2ガングリオシドが増加することを見出した。それぞれの分野で新規分子の同定とがん特性発現の分子機構の解明が順調に進んだと考えている。
結論
ゲノム解析や不死化細胞培養系、リン酸化蛋白質解析、細胞接着糖鎖の解析から、新たな診断・治療の標的分子が同定された。ヒト肝細胞の分化誘導系を確立し、新たな標的分子同定のシステム構築が可能となった。
公開日・更新日
公開日
2006-04-14
更新日
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