ヒトがんで高頻度に変異の見られるがん関連遺伝子の発がんにおける意義の解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200500451A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトがんで高頻度に変異の見られるがん関連遺伝子の発がんにおける意義の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H16-3次がん-003
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田矢 洋一(国立がんセンター研究所放射線研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 博文(国立がんセンター研究所生物物理部)
  • 北林 一生(国立がんセンター研究所分子腫瘍学部)
  • 原 英二(徳島大学ゲノム機能研究センター)
  • 北川 雅敏(浜松医科大学医学部生化学第一講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
72,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非常に多くのヒトがんにおいて、p53とRB蛋白質を中心とした細胞周期、チェックポイント関連蛋白質に変異が起きていることがわかってきた。したがって、これらの蛋白質の生理機能を集中的に解析することによって、多くのヒトがんに共通した発がん機構を明らかにでき、新しいがん治療法開発への応用の道も開けると期待できる。本研究はそれを目指した。
研究方法
細胞にDNAダメージを与え、リン酸化部位特異的な抗体でRB蛋白質のリン酸化状態を解析した。また、MOZのノックアウトマウスを作製し、MOZ欠損胎児性繊維芽細胞MEFにおけるDNA傷害に対する感受性を調べることにより、p53を介した細胞周期やアポトーシスの制御におけるMOZの役割について検討した。また、MOZ欠損細胞におけるp21やBaxなどp53の制御する遺伝子の発現の変化について調べた。
結果と考察
細胞にDNAダメージを与え、リン酸化部位特異的な抗体でRB蛋白質のリン酸化状態を解析したところ、ほとんどの部位は脱リン酸化されるのにSer612のみはリン酸化がたかまり、しかも、それによってE2F-1とRB蛋白質との結合が強まることがわかった。さらにこのSer612の周辺はChk2によってリン酸化される部位のコンセンサス配列をもっていたので、Chk2によるリン酸化を試してみたら、やはり推定通りであった。MOZ欠損細胞では細胞周期の停止が殆ど見られず、野生型に比べてアポトーシスを起こす細胞が顕著に増加していた。MOZ欠損細胞では細胞周期の停止に関わるp21の発現上昇が見られず、アポトーシスに関わるBaxの発現がアドリアマイシン処理後早期から上昇していた。したがって、MOZを欠失したマウス胎児性繊維芽細胞ではp21の発現誘導が見られないことにより細胞周期の停止が起こらないと考えられる。一方でBaxの発現は早期から誘導されることからDNA傷害に対する感受性が増大していると考えられる。
結論
細胞がDNAダメージを受けるとRB蛋白質上のすべてのリン酸化部位は脱リン酸化されるというのがこれまでの常識であったが、Ser612だけは例外的にリン酸化が高まり、それがE2F-1とRB蛋白質の結合を促進することを見いだした。そし、Ser612-kinaseはChk2であると同定した。また、MOZ のノックアウトマウスではp53/MOZの標的であるp21の発現を介した細胞周期停止が出来ないためにアポトーシスを起こしたものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-10-30
更新日
-