疾患モデルを用いた発がんの分子機構及び感受性要因の解明とその臨床応用

文献情報

文献番号
200500450A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患モデルを用いた発がんの分子機構及び感受性要因の解明とその臨床応用
課題番号
H16-3次がん-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中釜 斉(国立がんセンター研究所 生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 木南 凌(新潟大学大学院医歯学総合研究科 遺伝子制御)
  • 山下 聡(国立がんセンター研究所 発がん研究部)
  • 杉江 茂幸(金沢医科大学 腫瘍病理学)
  • 庫本 高志(京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設)
  • 中島 淳(横浜市立大学大学院医学研究科 分子消化管内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
71,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
発がんの動物モデルを用いて、発がんの分子機構と発がんに対する環境及び遺伝的修飾要因の同定、さらには個体レベルの発がん感受性要因を明らかにする。得られた成果をもとに、遺伝子情報に基づいた個人対応型のがん予防策の構築やがんの新規化学予防剤或いは治療薬開発のための標的候補分子の同定などへの臨床応用を目指す。
研究方法
化学発がん物質誘発の大腸発がんモデルを用いて初期病変の遺伝子変化を解析し、がん発生の分子機構の解明や効果的ながん予防策構築のための基礎的資料を提供する。DSS腸炎併発マウス大腸がんモデルでは腸炎及び発がんに対する感受性の系統差を解析し、コンソミック系統を用いた解析の有用性を調べた。ヒトACFに対するPPARγリガンドの効果を検討した。さらに発がん感受性遺伝子に関しては、サブコンジェニック系統を用いた染色体局在の限定化と感受性の異なる種々の系統のハプロタイプ解析により候補領域を絞り込んだ。
結果と考察
大腸発がんの前がん病変であるdysplastic ACFで認めたRNA結合蛋白質SND1の過剰発現は、腸管上皮細胞の細胞間接触によるcontact inhibitionを解消することにより、軟寒天培地内でのコロニー形成能を賦与することが分かった。大腸発がん感受性遺伝子に関しては、種々のラット系統を用いたACF誘発性実験とハプロタイプ解析により局在候補領域をラット16番染色体上の数Mbの範囲数か所に限定化できた。C57BL/6J-MSM/Ms或いはA/J-SM/Jのコンソミック系統を用いて、大腸発がん及びDSS腸炎に対する感受性遺伝子のマッピングと責任遺伝子の同定が可能であることが示唆された。リンパ腫感受性遺伝子に関しては、Mtf-1が責任遺伝子であることの完全な証明には至らなかったが、感受性BALB/c系統では放射線照射後に大型リンパ球の割合や酸化的ストレス量の指標となるDCF量が多かった。Mtf-1の機能的多型とこれら表現型との関連性について検討する必要がある。胃がん感受性遺伝子の探索に関しては候補遺伝子Crabp2 のトランスジェニックラット2系統を樹立し、現在発がん実験を進めている。大腸にACFを有する患者で同意の得られた14症例に対し、PPARγリガンドであるpioglitazoneを投与したところ、ACFが小さいかACFの数の少ない症例において抑制効果を認めた。
結論
発がんの動物モデルの構築とモデル動物を用いた発がん過程の経時的解析は、がん初期発生の分子機構や発がん感受性要因の解明において、ヒト発がん研究の補完的かつ不可欠な役割を担うものである。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
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