ヒト多段階発がん過程における遺伝子異常の把握に基づいたがんの本態解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200500449A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト多段階発がん過程における遺伝子異常の把握に基づいたがんの本態解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H16-3次がん-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
広橋 説雄(国立がんセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 坂元 亨宇(慶應義塾大学 医学部)
  • 稲澤 譲治(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
  • 細田 文恵(国立がんセンター研究所 ゲノム構造解析プロジェクト)
  • 村上 善則(国立がんセンター研究所 がん抑制ゲノム研究プロジェクト)
  • 牛島 俊和(国立がんセンター研究所 発がん研究部)
  • 金井 弥栄(国立がんセンター研究所 病理部)
  • 今井 浩三(札幌医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
194,618,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
諸臓器のがんにおいてジェネティック・エピジェネティックな遺伝子異常を網羅的に解析し、がんの遺伝子型と表現型の相関 (genotypephenotype correlation)を明らかにして、ヒトの諸臓器における多段階発がん過程のシナリオの全貌を解明する。
研究方法
独自に開発した高密度アレイを用い、諸臓器のがんで比較ゲノムハイブリダイゼーション解析を行った。がん克服戦略研究事業で同定したがん関連遺伝子TSLC1等の機能と異常を解析した。β-カテニンを含む核内複合体構成蛋白質を網羅的に同定した。大腸がん肝転移予測システムを確立した。MSI陽性大腸発がん機構の理解を進めた。DNAメチル化で不活化されるがん関連遺伝子を同定した。CpGアイランドメチル化形質 (CIMP)の予後予測力を検証した。発がん過程においてDNAメチル化制御機構の異常を解析した。厚生労働省告示「臨床研究に関する倫理指針」を遵守し、所属施設の倫理委員会の承認を得た。米国実験動物資源協会の「実験動物の管理と使用に関する指針」を遵守し、所属施設の動物倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
諸臓器のがんで高頻度にコピー数の減少・増加を示す微小染色体領域を新規に見出し、新規がん関連遺伝子を同定した。がんの臨床病理学的因子と相関するゲノム構造異常プロファイルを同定した。TSLC1-DAL-1分子経路が非小細胞肺がんの進展に関与し、TSLC1類似蛋白質TSLL2が前立腺がん抑制遺伝子である可能性を示した。β-カテニンが核内でFUSと相互作用し、プレmRNAスプライシングに関わる可能性を示した。ディスアドヘリン等機能分子の抗体パネルにより、大腸がんの肝転移予測式を確立した。BRAF遺伝子変異解析を組み込んだHNPCCスクリーニング法の有用性と、RASSFファミリー異常の大腸発がんへの寄与を示した。BACアレイを基盤とするメチル化CpGアイランド増幅法を開発し、DNAメチル化によって不活化されるがん関連遺伝子を同定した。PCDHB遺伝子を指標として含むCIMPが、神経芽細胞腫の強い予後予測因子であることがわかった。DNMT1発現亢進ががん関連遺伝子のDNAメチル化蓄積と相関し、膵がんの予後予測因子となることがわかった。
結論
がんの病理像と遺伝子・分子・細胞レベルの変化との対応の理解が進み、新しいがんの病態診断や標的治療の基盤となる知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-