歯科保健医療の需給に関する地域構造的分析        

文献情報

文献番号
199700042A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科保健医療の需給に関する地域構造的分析        
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
宮武 光吉(財団法人口腔保健協会)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田眞人(東京歯科大学)
  • 大川由一(千葉県立衛生短期大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科保健医療機関および歯科保健医療担当者の需給関係についての諸要因は、その地域の特性により影響を受けていることが明らかにされているが、これらの要因について解析し、これらの需給関係ならびに地域分布がどのように変化してきたかについて検討し、今後の歯科保健医療の需給を推測するうえでの基礎的な資料とする目的で本研究を実施した。
研究方法
1)都道府県および二次医療圏ごとに歯科医療機関の分布の状況とこれらに影響を与えていると考えられる社会的、経済的要因について分析するとともに、一般医療機関との比較検討を行った。2)千葉県をモデルとして市町村単位に歯科医師数の年次推移を観察し、これらの地理的分布の評価をGini 係数を用いて解析し、地域格差の動向について分析を行った。3)上記の二研究を基礎として、都道府県、二次医療圏および市町村ごとに歯科保健医療施設および歯科保健医療担当者の現状分析と将来推計の方法について考察した。
結果と考察
都道府県、二次医療圏別にみた歯科医療機関の地域分布とその要因をみると、人口格差指数100以上を示したのは歯科医療機関では大都市およびその周辺の9か所、一般医療機関は東京および西部地域の21か所で、歯科は一般に比べ半数以下であったが、80未満では歯科は12か所であり一般の3倍であった。歯科の格差指数は最上位東京都166.5、最下位福井県68.1となり、一般の最上位は徳島県135.6、最下位は沖縄65.8となった。特に歯科の東京都と他の府県との格差は、一般と比較して非常に大きい。人口格差指数と所得格差指数から歯科医療機関の需給バランス指数を算出した結果、歯科は130以上が9か所、110~129.9は12か所、90~109.0が15か所、90未満が11か所であった。一般では同様の順序で18、7、12、10か所となり、130以上で歯科の2倍の値となっているほかは、双方に大きな差は見当たらなかった。しかし、指数140以上は歯科3か所、一般15か所と大きな差となっている。歯科医療機関の分布は人口格差が高い地域では、一部を除いて所得格差も同様に高い地域であることが認められた。例えば青森県で人口と歯科医療機関との分布状況をみると、都市部への集中と過疎化という二極化がみられ、東京都は区中央部と他部との格差が著しく大きいことが認められた。人口、所得格差とも二極化の傾向を示した圏域は青森県、東京都、京都府であり、指数100前後のグループに集中したのは、埼玉県、千葉県および神奈川県であった。人口格差は100前後に集まっているが、所得格差がほぼ3つのグループに分かれた地域は大分県であった。人口格差と所得格差、面積格差と所得格差の相関係数は、各々に都道府県:r = 0.541 , 0.675、二次医療圏:r = 0.805 , 0.879 であった。千葉県における歯科医師と歯科診療所の地域分布について、歯科医師数(総数)および診療従事歯科医師数は1980~94年にかけて倍増したが、Gini係数の差は小さく、地域分布の不平等度の変化はほとんどなかったと推測された。定住人口と昼間人口に基づいた診療従事歯科医師数のGini係数の差はわずかであり、昼夜間での地域分布に変化はなかった。1994年現在の歯科診療従事歯科医師(歯科診療所での従事者)の地域分布は歯科診療従事歯科医師(総数)に比べ不平等度が小さいことが確認された。歯科診療所の地域分布については、千葉県の人口10万対歯科診療所数は1978年に27.1であったが1994年現在では約1.6倍の42.4となった。歯科診療所のGini係数は0.148(1978年)から0.102(1994年)に減少し分布の不均等が解消される傾向を示した。1988年の就業歯科医師数69,499人が1996年には84,366人と1.2倍に達し、人口10万対歯科医師数も55.9から66.3へ
と増加している。これに対し、大学歯学部・歯科大学の学生募集人員の削減により、1989年の歯科医師免許交付者数は3,610人から1996年には2,890人へと19.9%の減少をみている。しかし、その地域分布をみると、都道府県、二次医療圏あるいは市町村ごとにその差が大きく、また、地域によってはその差は縮小されていない。これらの状況を把握し、その要因を分析する方法について検討したので、今後、これらを全国的に適用し、将来推計に用いるとともに、地域分布の不平等の解消のための資料として、利用することが可能であるの考えられる。
結論
1)歯科医療機関を都道府県、二次医療圏別にそれぞれ観察した結果、一般医療機関に比べて、その地域格差は大きく、二次医療圏ごとにみると、その分布状況や関連すると思われる要因との関係がより明らかにされた。2)千葉県の市町村ごとの歯科医師および歯科診療所の分布について、その不平等度を中心にみた結果、歯科医師については不平等度は解消されていないが、歯科診療所については解消されつつあることが示された。3)今後これらの結果を用いて、全国的に分析することが可能であると考えられる。

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