小児2型糖尿病に対する経口血糖降下薬治療のエビデンスの確立特にメトフォルミンの至適投与量、有効性と安全性の研究

文献情報

文献番号
200500441A
報告書区分
総括
研究課題名
小児2型糖尿病に対する経口血糖降下薬治療のエビデンスの確立特にメトフォルミンの至適投与量、有効性と安全性の研究
課題番号
H15-小児-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 信夫(聖徳大学人文学部児童学科)
研究分担者(所属機関)
  • 杉原茂孝(東京女子医科大学東医療センター小児科)
  • 雨宮伸(埼玉医科大学小児科)
  • 横田行史(北里大学医学部小児科)
  • 田中敏章(国立成育医療センター臨床検査部)
  • 中村秀文(国立成育医療センター治験管理室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 小児疾患臨床研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は近年急速に増加、若年化している小児2型糖尿病の病態を明らかにし、治療に使用される経口血糖降下薬、特にメトフォルミンの有効性、安全性を評価することを目的に結成された。分担研究者の田中敏章、中村秀文ならびに研究委託機関である北里研究所・北里臨床薬理研究所が中心になり研究実施計画書(プロトコール)が作成された。その詳細は研究報告書の最終章に掲載したところである。これに基づいて公的資金による質の高い臨床試験を行い、その投与量、有効性、安全性を明らかにすることを目的とした。
研究方法
試験実地計画書に従って登録した症例に対し、メトホルミン750mg12週間、次いで12週の時点で、HbA1c値6.5%以下はそのままの量で、6.6%以上では1,500mgに増量して更に12週間投与し、有効性を評価した。
結果と考察
各研究施設における患者登録数は限られた期間であり、また管理している2型糖尿病患者の中で基準を満たしている症例は必ずしも多くなかった。最終的に目標症例数50例に対し、登録症例数47例(目標症例数の94%)に達することができた。登録症例の内訳:登録症例は新規患者24例、既治療患者23例であった。新規・既治療患者の間、および男女症例の間に有意な違いがないか検討した。既治療例の方がやや年齢が高く、肥満の程度が軽い傾向が見られたが有意差はみられなかった。研究開始がやや遅れたため、最終登録は平成17年12月末、最終投与は平成18年6月末の予定である。その後データーのクリーニングを経て、解析に進む予定である。平成18年3月6日時点での症例調査票の回収は31例である。この31例の中で有害事象は5症例に9件認められた。しかし、試験を中止するような重篤なものではなかった。
結論
公的研究費によるメトホルミンの臨床試験を実施し47例の症例が登録された。平成18年6月末に最終投薬が終了予定であるため、引き続きデータークリーニング、解析を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2006-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200500441B
報告書区分
総合
研究課題名
小児2型糖尿病に対する経口血糖降下薬治療のエビデンスの確立特にメトフォルミンの至適投与量、有効性と安全性の研究
課題番号
H15-小児-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松浦 信夫(聖徳大学人文学部児童学科)
研究分担者(所属機関)
  • 杉原茂孝(東京女子医科大学東医療センター小児科)
  • 雨宮伸(埼玉医科大学小児科)
  • 横田行史(北里大学医学部小児科)
  • 田中敏章(国立生育医療センター臨床検査部)
  • 中村秀文(国立生育医療センター臨床治験室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 小児疾患臨床研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は近年急速に増加、若年化している小児2型糖尿病の病態を明らかにし、治療に使用される経口血糖降下薬、特にメトフォルミンの有効性、安全性を評価することを目的に結成された。分担研究者の田中敏章、中村秀文ならびに研究委託機関である北里研究所・北里臨床薬理研究所が中心になり研究実施計画書(プロトコール)が作成された。これに基づいて公的資金による質の高い臨床試験を行い、その投与量、有効性、安全性を明らかにすることを目的とした。
研究方法
試験実地計画書に従って登録した症例に対し、メトホルミン750mg12週間、次いで12週の時点でHbA1c値6.5%以下は750mgままの量で、6.6%以上では1,500mgに増量して更に12週間投与し、有効性、安全性を評価した。有害事象に対してはデーターセンターからモニタリング委員会に報告され、対応がとられた。研究期間中に定期的に班会議を開催し、計画書の検討、登録症例等の検討を行った。その結果に基づき、一部研究計画書の変更が行われた。
結果と考察
平成16年10月28日、第1例目から、最終登録平成16年12月28日までの間に47例の登録があった。目標症例数50例の94%であった。登録症例は新規患者24例、既治療患者23例であった。新規・既治療患者の間、および男女症例の検討では、既治療例の方がやや年齢が高く、肥満の程度が軽い傾向が見られたが有意差はみられなかった。更に男女症例間でも検討したが、有意な違いは認めなかった。次に、登録47症例のHbA1c値および肥満度を比較検討した。HbA1c値は新規・既治療群とも6.5%にピークを認め、その後漸減しているようにみられた。肥満度のヒストグラムは肥満度45%のところにピークがあり比較的軽度から中等度肥満のところに症例が多く分布していた。平成18年3月6日時点での症例調査票の回収は31例である。この31例を中心に現在までの臨床試験の進行上の問題点について報告する。有害事象は5症例に9件認められたが中止になる重症のものはなかった。
結論
公的研究費によるメトホルミンの臨床試験を実施し47例の症例が登録された。平成18年6月末に最終投薬し、引き続きデータークリーニング、解析を行う予定である。本試験はアメリカにおけるメトホルミン2重盲検試験、ヨーロッパを中心としたメトホルミンとGlimepirideとの比較試験、カナダにおけるメトホルミンとインスリン抵抗性改善薬との比較試験に次ぐ世界で4番目の臨床試験である。この臨床試験をふまえ小児における適応拡大、投与量の増量を申請する予定である。

公開日・更新日

公開日
2006-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500441C

成果

専門的・学術的観点からの成果
現在臨床試験を実施中である。6月末に薬物投与は終了し、データーの回収、解析に進む予定である。小児・若年2型糖尿病に対する経口血糖降下薬の承認は、外国でも行われてなく、第一選択薬であるメトホルミンを中心に世界で臨床試験が行われている。アメリカにおける2重盲検試験、ヨーロッパにおけるSU在との比較試験、カナダにおけるインスリン抵抗改善薬との比較試験についで、この研究は世界で4番目の臨床試験である。
臨床的観点からの成果
現在承認がとれていないまま、保護者に承諾を得て使用している。患者数は増加し、すでに種々の経口血糖薬が使用されている。薬物使用によりHbA1c値は有意に低下し、明らかな副反応はみられていない。今回の臨床試験で有効性が明らかになれば、臨床的に以下の2点に於いて臨床的成果が得られる。1つは誰でもが安全に使用できることになる。2つ目は現在上限が一日750mg に制限されているのが、1,500mgまでの安全性が証明される。
ガイドライン等の開発
1型糖尿病のインスリン治療についてはガイドラインが出来ている。2型糖尿病の経口血糖降下薬については、小児の承認を得ていない薬物なので、こを公的なガイドラインに載せて良いか議論が積み重ねられた。主要なメトホルミンの承認が得られれば、メトホルミンを中心とした2型糖尿病経口血糖降下薬の使用についてのガイドラインが作成されるものと思う。
その他行政的観点からの成果
こどもに対する適応が拡大されると、正式にガイドラインを含めた使用法が公表され、より適切な治療が可能になると考えている。行政的に実施している学童の検尿システムによって発見される2型糖尿病の事後処理がより容易になり、その成果を高めることが可能と考えている。今後SU剤やインスリン抵抗改善薬との比較試験を実施し、メトホルミン以外の経口血糖降下薬の適応拡大が可能になれば更に充実すると考える。
その他のインパクト
2型糖尿病の増加は世界的に見られ、我が国も例外ではない。中学年齢になると1型糖尿病を凌駕し、更に若年化の傾向が見られる。世界に類をみない学校検尿システム、学校における検診システムをより有効に活用し、こどもの健康増進につなげるべきである。残念ながら、毎年実施されている検診システムのデータは、個人のプライバシーとの理由で、何らのコメントもつけられぬまま、保護者に戻しているだけである。非常に貴重な労力、データが役立てられず残念なことである。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
14件
その他論文(和文)
24件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
26件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohtsu S, Takubo N, Kazahari M, et al
Slowly progressing form of type 1 diabetes mellitus in children: genetic analysis compared with other forms of diabetes mellitus in Japanese children.
Pediatric Diabetes , 6 (4) , 221-229  (2005)
原著論文2
Yokota I, Amemiya S, Kida K, et al
Past 10-year of insulin therapy for preschool-age Japanese children with type 1 diabetes
Diabetes Research Clinical Practis , 67 (4) , 227-233  (2005)
原著論文3
Sugihara S, Sasaki N, Kohno H, et al
Survey of current medical treatments for childhood-onset type 2 diabetes mellitus in Japan
Clin Pediatr Endocrinol , 14 (2) , 65-75  (2005)
原著論文4
中村伸枝、松浦信夫、佐々木望、他
1型糖尿病の学童から青年の「糖尿病に関連した満足度(QOL)」質問紙の検討
日本糖尿病教育・看護学会誌 , 9 (1) , 4-13  (2005)
原著論文5
結城瑛子、菊池信行、松浦信夫
母子の食行動と肥満との関連について
小児保健研究 , 64 (2) , 279-286  (2005)
原著論文6
中村伸枝、松浦信夫、佐々木望
1型糖尿病をもつ子どもと健康児のQOLの比較
糖尿病 , 49 (1) , 11-18  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-