乳幼児突然死症候群(SIDS)における科学的根拠に基づいた病態解明および臨床対応と予防法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500434A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児突然死症候群(SIDS)における科学的根拠に基づいた病態解明および臨床対応と予防法の開発に関する研究
課題番号
H17-子ども-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
戸苅 創(名古屋市立大学大学院医学研究科先天異常・新生児・小児医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 市川 光太郎(北九州市立八幡病院 救命救急センター)
  • 高嶋 幸男(国際医療福祉大学大学院)
  • 中山 雅弘(大阪府立母子総合医療センター 検査科)
  • 的場 梁次(大阪大学大学院医学系研究科 法医学)
  • 北島 博之(大阪府立母子総合医療センター 新生児科)
  • 横田 俊平(横浜市立大学大学院医学研究科 発生成育小児医療学)
  • 中川 聡(国立成育医療センター 手術集中治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
9,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業においては小児科学、病理学、法医学の協力のもと、乳幼児突然死症候群(SIDS)の科学的根拠に基づいた病態解明と予防法の開発、および平成14年?16年度の厚生労働科学研究による「乳幼児突然死症候群(SIDS)のガイドライン」の普及を目的とした。
研究方法
SIDSの病態について神経病理学的、病理組織学的、循環呼吸生理学的な研究、代謝状態のメタボロームによる検索、グリア細胞と脳内サイトカイン・ストームについての研究を行った。ガイドラインの普及と小児救急医療における臨床対応について全国の小児救急医療施設に対してアンケート調査を行った。発症予防ならびにモニタリングについてはパルスオキシメータの有用性について検討した。
結果と考察
神経病理学的研究からはGABA作動性神経細胞は胎児期後半の早期から、既に発現し、生後も持続していたが、GABAトランスポーターやカリウムチャネルは胎児期後半から乳児期に発達的変動が激しかった。また、プロスタグランジンD2合成酵素についての検討から、SIDS剖検脳の脳幹ニューロンにリポカリン型PGDS(L-PGDS)の強い発現が確認された。L-PGDSの発現の誘導はアストログリオーシスやアポトーシスが起こる以前の比較的早期の段階に起きていると考えられた。呼吸循環調節の面からはSIDS患児血清中でテイネシンCが高値であったことからSIDSの病因に肺高血圧症が潜在化している可能性が示唆された。鑑別診断の観点からは、急性脳症との鑑別を目的として脳組織での炎症性サイトカインの免疫染色法、血清・髄液のサイトカインのマイクロビーズとFACSを用いた測定法を確立した。窒息との鑑別については血中乳酸値が窒息死を反映する可能性が示唆された。
救急医療施設を対象に行ったアンケート調査からは、「SIDSのガイドライン」の認知度がまだ低いことが判明した。
パルスオキシメータにてSIDS発症に関与することが示唆されている閉塞性無呼吸が検出できることが示唆された。
結論
乳幼児突然死症候群(SIDS)の病態には中枢神経系、呼吸循環調節系の発達的異常が関与する可能性が示唆された。モニタリングについてはパルスオキシメータの有用性が示唆された。「SIDSのガイドライン」については、日本SIDS学会の「診断の手引き」とともに全国の医療関連施設への普及啓発のための方法について検討していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2006-10-16
更新日
-