妊娠・出産の快適性確保のための諸問題の研究

文献情報

文献番号
200500426A
報告書区分
総括
研究課題名
妊娠・出産の快適性確保のための諸問題の研究
課題番号
H16-子ども-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 武夫(聖マリア病院母子総合医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 朝倉 啓文(日本医科大学産婦人科学教室)
  • 岡本喜代子(日本助産師会)
  • 久保春海(東邦大学医学部産婦人科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健やか親子21運動のために課題2「妊娠・出産の安全性と快適性の確保と不妊への支援」の幹事会として行っているものであり、妊娠出産の快適性の確保とは何かを各幹事会が分担して研究した。
研究方法
日本産婦人科医会は、平成16年度の産科医へのアンケート調査から診療所、病院での快適性を勤務助産師数と産科医師の意識との関連性で分析した。日本助産師会は有床助産所290ヵ所に、嘱託医師、協力医療機関のアンケート調査をした。日本母乳の会は平成16、17年、赤ちゃんにやさしい病院(BFH)で出産した母親の1カ月健診時のアンケート調査から分娩様式による満足度の差の有無を分析した。日本産婦人科学会は平成12?16年の5年間に東邦大学医学部大森病院当院で分娩となった3、104症例を対象とし、ART群とNon-ART群の 産期パラメーターを比較した。
結果と考察
診療所では助産師が多くなるに伴い課題2への医師の積極的な取り組みが目立ち、「快適性の必要性」も高く認知し、病院では分娩の快適性を高める取り組みは、行われていない。病院での助産師数は、快適性以外の理由で数が確保されていると考えられた。
有床助産所の嘱託医師の確保は97.5%で、産婦人科医師は81.1%。分娩を取り扱わない者が35.3%。緊急対応には、協力医療機関の協力が不可欠と考え、自ら開拓した協力医療機関と複数契約をしている。
分娩様式による母乳育児率、母性心理、安全性の認識、快適性、満足度に大きな差は見られず、産褥期に快適性、満足度の高いケアが行われていることがわかった。しかし、麻酔分娩では母親への変化の過程が滞りがちなため、支援が特に必要と考えられた。
ART群対 Non-ART群で、単胎児も双胎児も差はなかった。帝王切開率はART群で高率であった。IVFとICSIの比較では児の周産期予後も帝王切開率も有意差を認めなかった。
結論
快適性の確保は少子化の解決の有力な点と示唆される。助産師の積極的な採用、活用、及び、母子同室・母乳育児の推進の根拠となるであろう。さらに母親の満足度、達成感、エンパワメントを得ることと位置づけられた快適性は子育てまで及び、さらに次回への妊娠・出産につながることがわかった。日本助産師会と日本産婦人科医会との組織的なアプローチが必要であり、その実現に向けた行政、各関係団体・関係者の調整や努力が必要である。
ARTによる出生児と自然妊娠の児との間に周産期予後に差はなかったことは、不妊症からの妊娠はリスクが高いという考えの払拭に繋がると考えられる。先天異常の発生率については、さらなる追跡調査研究が重要である。

公開日・更新日

公開日
2006-10-16
更新日
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