小児慢性特定疾患患者の療養環境向上に関する研究

文献情報

文献番号
200500421A
報告書区分
総括
研究課題名
小児慢性特定疾患患者の療養環境向上に関する研究
課題番号
H15-子ども-022
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
及川 郁子(聖路加看護大学小児看護学)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 忠明(国立成育医療センター研究所成育政策科学研究部)
  • 伊藤 龍子(国立成育医療センター看護部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、慢性疾患のある子どもと家族のための在宅における療養環境を整え、子どもや家族が心身ともに安定した日常生活を送ることができるようサポートするための保健・医療、福祉、教育の統合的サービスを基盤としたモデル事業を展開し支援システムの提言を行うことである。3年計画の3年目に当たる今年度は、昨年度開始した3つのモデル事業(1.相談事業、2.日常生活支援のための学校向けガイドブックの作成と配布、3.情報発信としてのホームページ(以下HP)の開設)について評価を行い、支援システムのあり方について検討した。
研究方法
それぞれのモデル事業の実践を行いながら、事業評価方法として調査やインタビューを実施し分析した。
結果と考察
モデル事業の内容と評価結果は次のようであった。1.相談事業:支援システムの拠点となる場作りとして都内の小児専門病院の外来に相談窓口を設置し、週2回2名の看護職や教育関係者などが相談に応じた。相談13ヶ月間で103名106件の相談がありほとんどが患者家族であった。相談内容は、入園・入進学・転校に関する相談と不安、親の付添いや学校生活の問題、医療費や療養生活の問題など多岐に渡っていた。相談者は、必要な情報が得られ、話を聞いてもらえる、継続的に関わってもらえるなどの理由から満足感は高かった。2.ガイドブックの活用状況は、気管支喘息18.8%、糖尿病6.1%であった。利用数は少なかったが、児童が在籍していると子どもの健康管理や同級生の説明等に利用され、内容に関しては高い評価を得た。また学校向けガイドブックとして先天性心疾患について作成した。3.HPへのアクセス件数は増加傾向にあり、2006年2月1ヶ月間で21267件、サイトへのリクエストはガイドブックの紹介、いろいろな小児慢性疾患、小児慢性特定疾患治療研究事業が多かった。HPは更新を行い最新の情報提供に心がけたが、養護教諭の本HPへのアクセスは15.2%であり、その理由として時間が無い、インターネット環境が無いなどが挙げられていた。
結論
小児慢性疾患患者や家族の療養環境向上のために、一医療機関の相談窓口を拠点として、保健・医療、福祉、教育の統合的アプローチを基盤とした支援システムのあり方を検討した結果、支援方法としてその意味を明らかにすることができた。また学校向けガイドブックの配布、HPの開設は広く小児慢性疾患に関する知識の普及や啓発に寄与することができた。

公開日・更新日

公開日
2006-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200500421B
報告書区分
総合
研究課題名
小児慢性特定疾患患者の療養環境向上に関する研究
課題番号
H15-子ども-022
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
及川 郁子(聖路加看護大学小児看護学)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 忠明(国立成育医療センター研究所成育政策科学研究部)
  • 伊藤 龍子(国立成育医療センター看護部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性疾患のある子どもと家族のための在宅における療養環境を整え、子どもや家族が心身ともに安定した日常生活を送ることができるようサポートするための保健・医療、福祉、教育の統合的サービスを基盤としたモデル事業を展開し、支援システムの提言を行うことが本研究の目的である。
研究方法
1年目は文献検討や慢性疾患患児を支援する医療機関や保育所、学校等で調査を行い、その結果を基に支援システム案とモデル事業を検討した。2年目および3年目はアクションリサーチ法を取り入れたモデル事業の展開と評価を行った。
結果と考察
3つのモデル事業とその結果を述べる。1.相談事業:支援システムの拠点となる場作りとして小児専門病院の外来に相談窓口を設置し、週2回2名の看護職や教育関係者などが相談に応じた。13ヶ月間で103名106件の相談があった。相談内容は多岐に渡り、相談内容に応じた適切な機関への紹介、多職種との協議などの実施により、窓口を拠点とした統合的なアプローチを試みることができた。全ての相談を解決できたわけではないが、相談者の満足度は高かった。この試みは医療機関の継続事業として定着することとなった。2.日常生活支援のためのガイドブックの作成と配布:慢性疾患児の学校生活を支援するために「気管支喘息」「1型・2型糖尿病」「先天性心疾患」の学校生活上の注意点や症状への対処方法を中心としたガイドブックを作成し、気管支喘息と糖尿病のガイドブックは2234校の小中学校に配布した。配布後の調査で、それぞれ病気を持つ子どもが在籍しているとガイドブックの活用状況は高く、内容に関しても肯定的評価を得ることができ、活用の意義が明らかになった。先天性心疾患については医療機関等でも活用し、日常生活支援に繋げることを目指している。3.情報発信事業としてのホームページ(HP)の開設:多くの人の小児慢性疾患の理解に資するため、9つのサイトからなるHPを開設した。HPへのアクセス数は月2万件ほどで増加傾向にある。サイトのリクエストは、小児慢性疾患事業に関すること、作成したガイドブックのPDFによる紹介、色々な慢性疾患に集中していた。今回の状況は、意図した啓発活動に繋がっていくことが期待できる結果であり、このようなHPが少ないため更なる内容の充実を図っていくことが課題である。
結論
小児慢性疾患患者や家族の療養環境向上のために医療機関の相談窓口を拠点とした支援方法は、一定の成果を上げることができ、支援システム構築への基盤整備のための提言を行うことができた。またガイドブックの配布やHPの開設は、広く小児慢性疾患に関する知識の普及や啓発に寄与することができた。

公開日・更新日

公開日
2006-09-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500421C

成果

専門的・学術的観点からの成果
小児慢性疾患患者とその家族の療養環境向上のために、医療・福祉・教育を連携とした支援システムを検討するために、一医療機関の外来を拠点とする相談窓口を開設し、小児慢性疾患患者とその家族の問題点を具体的に検討・支援すると共に、この相談事業を通して小児慢性疾患患者への支援システムのための方法やプロセスを明らかにすることができた。また、相談を通して問題点や支援方法を蓄積することにより、問題の予防、早期対処、的確な支援に繋げることが可能である。
臨床的観点からの成果
1.医療機関で行った相談事業では、直接患者や家族の相談に応じることで問題解決やその糸口を支援することができ、さらには医療機関の事業として定着を図ることができた。
2.気管支喘息、1型・2型糖尿病のガイドブックとポスターを作成して小中学校に配布し、活用することができた。また先天性心疾患のガイドブックを作成し、医療機関等での活用も検討する準備ができた。
3.ホームページを開設し、広く小児慢性疾患の啓発活動を行った。
ガイドライン等の開発
本研究での相談窓口を拠点とした支援システムは一医療機関のみでの試みであったが、相談を通しながら医療・福祉・教育の連携を具体的に図るための方法やプロセスを明示しており、他機関でも利用可能なものを提示している。またガイドブックは、これまでに無い内容(症状が出たときにアクションプログラムを段階的に示している、学校生活上の注意点など)を中心に構成している点が特徴であり、医療と学校の連携を推進していくときの手がかりを提示できるものである。
その他行政的観点からの成果
相談事業、ガイドブックの作成・配布、ホームページ開設などの各事業は、小児慢性疾患患者とその家族に直接的な支援となるだけではなく、患者家族を取り巻く人々への理解や啓発に繋がるものであった。これは「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」で示された、患者や家族の心身の安定と積極的社会参加促進のために寄与するものである。
その他のインパクト
2005年3月第247号教育医事新聞に本研究内容が取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
(総説)及川郁子,小児慢性疾患患者の療養環境向上に向けて,小児保健研究,65(1),2006,5-10.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
小児慢性疾患患者の療養環境の現状と課題の調査結果を第35回日本看護学会、第51回日本小児保健学会で発表、ガイドブックの作成過程を日本小児看護学会第15回学術集会で発表
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
ホームページの開設(http://www.kodomo-care.com)、気管支喘息、1型・2型糖尿病のガ゙イドブックとポスターの作成・配布、先天性心疾患のガイドブックの作成・配布

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-