母親とともに家庭内暴力被害を受けた子どもに被害がおよぼす中中期的影響の調査および支援プログラムの研究

文献情報

文献番号
200500420A
報告書区分
総括
研究課題名
母親とともに家庭内暴力被害を受けた子どもに被害がおよぼす中中期的影響の調査および支援プログラムの研究
課題番号
H17-子ども-017
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 加茂 登志子(東京女子医科大学付属女性生涯健康センター)
  • 元村 直靖(大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター)
  • 笠原 麻里(国立成育医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
家庭内暴力、いわゆるdomestic violence (DV)への社会的な関心は近年ますます高まっており、今後の厚生行政の中で欠くべからざる重要課題である。実際には、母親が暴力を受けている際には子どもも虐待を受けていることが多く、また現実問題として、母子ともに夫の暴力から逃れ、離別して独自に生活を始めるという事例は非常に多い。そこで本研究班では、家庭内暴力(DV)において母子ともに被害を受けることによる、子どもへの心理的な被害、その後の発達、社会適応上の問題を明らかにする。さらに,被害後の母子の健康および母子間の相互関係を中期的に検討し,支援プログラムを作成することとした。
研究方法
加茂、金は一時保護施設などを利用し、その後のフォローアップが必要な母子を対象に、東京女子医科大学附属女性生涯健康センターメンタルケア科において追跡研究プロジェクトを立ち上げた。今年度は予備調査としてクリニックに通院しているDV被害母子(計11組7家族)を対象に子どもの問題行動や状態が母親のDV被害や精神状態とどのように関連しているのかを検討するため、質問紙・面接・行動観察による臨床評価を行った。また育児支援のためのPCIT (Parent-Child Interaction Therapy):親子相互関係療法の導入の可否について検討した。
結果と考察
その結果、①DVに曝された子どもの精神健康は全般的に注意を要する状態にあること、②母親は子どもの状態を把握することが困難な状態にあること、③母親への身体的暴力が子どもの精神状態、とりわけ内向的問題の悪化に関連すること、④母親の希死念慮の高さはひきこもりや身体化症状といった子どもの内向的問題やその他の社会性の問題にまで強く関連していることがされた。PCITは日本でも導入可能と思われた。
結論
DV被害母子は単に保護をするだけではなく、心理特性を踏まえたケアが必要である。母子関係に葛藤が見られ、母親の養育機能が傷害されているため、適切な育児支援プログラムの開発導入が求められる。この結果を踏まえ、来年度はPCITを実際に導入し、その有効性を検討する。

公開日・更新日

公開日
2006-09-20
更新日
-