思春期やせ症と思春期の不健康やせの実態把握および対策に関する研究

文献情報

文献番号
200500415A
報告書区分
総括
研究課題名
思春期やせ症と思春期の不健康やせの実態把握および対策に関する研究
課題番号
H16-子ども-031
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 久子(慶應義塾大学医学部 小児科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 福岡秀興(東京大学大学院医学系研究科 発達医科学教室)
  • 徳村光昭(慶應義塾大学 保健管理センター)
  • 高橋孝雄(慶應義塾大学医学部 小児科学教室)
  • 長谷川奉延(慶應義塾大学医学部 小児科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、近年全国的に小児に多発し、高い死亡率、発達障害、長期的なQOL低下をもたらす思春期やせ症(以下AN)とその予備軍の「不健康やせ」を「健やか親子21」の国民健康運動により減らことを目指す。本症は複雑な精神病理をもつ慢性疾患であるが、国民の認識不足、患者の否認と治療抵抗の強さ、専門家の乏しさが重なりあい、難治性になるまで放置されているのが実態である。治りやすい病初期に学校と小児科医による予防・早期発見・早期治療が有効である。成長曲線と脈を組み合わせた実践ツールを開発し、一次、二次ケアに重点をおく包括的診療システムを構築する。
研究方法
平成17年度は以下の課題に取り組む:1)第二次全国頻度調査、2)国際交流、3)包括診療システムモデルの構築、4)学校保健と小児科診療ガイドラインの作成。
結果と考察
1) 第二次全国頻度調査結果:不健康やせは中学3年で7.6%, 高校3年で16.5%. ANの累積発症率(中学1年―高校3年)は1.03%。2)国際交流:①第7回国際摂食障害学会にてAN徐脈(福島)とAN集中治療(渡辺)の研究を発表し、わが国独自のアプローチとして評価された。国際シンポジウムを開催しLask、B Pike、K, 生野照子、西園文、中村このゆ、徳村光昭、福島裕之諸氏による「学校保健におけるANの取組み」を多角的に検討した。3)学校―大学病院―関連病院ネットワークによる包括的診療システム:パイロット校にて成長曲線と脈を組み合わせたスクリーニングを実施し入院を要する患者の発生をゼロにした。その成果に基づき学校ー大学病院―関連病院小児科ネットワークによる包括的診療システムモデルを提案した。4)学校保健、小児科医のためのガイドラインを以下に作成した:(a)学校保健ガイドライン:①春秋の学校検診で肥満度-15%以下のやせを呈する生徒を抽出する。②成長曲線を作り、体重が1チャンネル以上下がる生徒を把握する。③その生徒を保健室に呼び脈を測り、徐脈(60/分未満)を認める場合病院を紹介する。(b)小児科診療ガイドライン:①成長曲線、脈と他の身体症状から鑑別診断し、次に確定診断する。②治療は安静臥床、栄養摂取、疾病教育を軸とする。重症例は専門治療につなげる。
結論
成長曲線と脈の身体指標を活用した予防・早期発見・早期治療の全国的展開による包括的診療体制は、世界的にもユニークなアプローチであり一層の普及を図る必要がある。

公開日・更新日

公開日
2006-09-20
更新日
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