家庭内暴力被害者の自立とその支援に関する研究

文献情報

文献番号
200500408A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭内暴力被害者の自立とその支援に関する研究
課題番号
H16-子ども-020
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
石井 朝子(財団法人東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 奥山 眞紀子(国立生育医療センターこころの診療部)
  • 加茂 登志子(東京女子医科大学付属女性生涯健康センター)
  • 小西 聖子(武蔵野大学人間関係学部)
  • 村井 美紀(東京国際大学人間社会学部・社会福祉援助技術)
  • 町野 朔(上智大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,670,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DV被害者援助の充実を図るための基礎となる実証的なデータを提供し、さらにDV被害を受けた女性とその児童に対して現実的なより良い総合的支援策を講じるための手がかりを提供することを目的とする。
研究方法
研究1:全国の配偶者暴力相談支援センター及び女性相談所に訪れたDV被害者を対象に暴力の実態及び精神健康度を測る自記式質問紙を実施した。研究2:全国283ヶ所の母子生活支援施設長を対象に、DV被害を受けた入居者及びその家族の精神健康上の支援に関する自記質問紙調査を実施した。研究3:PTSD症状を有した民間シェルター入所女性を対象に健康回復のためのケア技法として認知行動療法的アプローチを取り入れた個人精神療法と集団精神療法を実施した。

結果と考察
研究1:34県45施設から300名分の回答を得た。DV被害の実態を測るDVSI(ドメスティックバイオレンス簡易スクリーニング尺度)の平均得点は、29.7点であった。この平均得点は、シェルター入所女性の暴力被害の実態とほぼ一致した。またCES-Dの尺度平均得点は、25.8であった。CES-Dのカットオフポイントは16であり、回答者の過半数でうつが疑われる結果であった。この結果から、全国の配偶者暴力相談支援センター、女性相談所等に訪れたDV被害者の暴力の実態は深刻であり、かつ精神健康度も低く、早急な援助介入をする必要があることが示唆された。
研究2:140施設から回答が得られた(回収率49.5%)。各施設ではDV被害を受けた母子に生じる精神健康上の問題への対処に苦慮しているおり、専門家や関係諸機関との連携を希望する声が強いこと、また被害母子が提供される心理援助の量や質は各施設間に相違がある可能性が示唆された。
研究3:DV被害女性に認知行動療法的アプローチを試みた結果、PTSDの症状は軽減し、その効果は追跡評価(6ヶ月、1年)においてもその効果は著名であった。認知行動療法的アプローチは、DV被害者のPTSD症状に奏功することが考えられる。
結論
DV被害者の社会への具体的な生活再建を目指した総合的な援助として、全国の配偶者暴力相談支援センター、女性相談所及び母子生活支援施設などの各種援助機関による援助ネットワークシステムの構築とまた、DV被害母子への認知行動療法的アプローチ等による具体的な健康回復のためのケア技法の確立が急務の課題と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-09-20
更新日
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