軽度発達障害児の発見と対応システムおよびそのマニュアル開発に関する研究

文献情報

文献番号
200500407A
報告書区分
総括
研究課題名
軽度発達障害児の発見と対応システムおよびそのマニュアル開発に関する研究
課題番号
H16-子ども-019
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
小枝 達也(鳥取大学地域学部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 隆(山口県立大学看護学部)
  • 山下裕史朗(久留米大学医学部小児科)
  • 前垣義弘(鳥取大学医学部脳神経小児科)
  • 下泉秀夫(国際医療福祉大学保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、軽度発達障害に焦点を当てた「気づきの場」をどのように構築するのか、また幼児期に見いだされた軽度発達障害児をどのように指導・支援したらよいのかという命題に答えるとともに、本邦全体で取り組むことのできるモデルを示すマニュアル作成を目的とする。
研究方法
(1) 3歳児健診にて発見するための手だてに関する検討(分担研究者林 隆)、
(2) 5歳児健診を基盤とした発生頻度調査(分担研究者小枝達也、下泉秀夫)、
(3) 構造化された医師の診察法の有効性に関する検討(分担研究者前垣義弘)、
(4) 行動評価を質問紙法で行った場合の有用性の検討(分担研究者山下裕史朗)
の4点について研究を実施した。
また、5歳児健診によって軽度発達障害児を見いだし、適正な療育・教育を行った場合の費用対効果を算出することを検討しており、そのために必要とされる条件等についても検討を行った。
結果と考察
(1)3歳児の行動を6カテゴリー(①多動性、②旺盛な好奇心、③破壊的な関わり、④不適切な関わり、⑤強い癇癪、⑥運動のアンバランス)に分けて評価した。注意欠陥多動性障害(ADHD)児や広汎性発達障害(PDD)児では、いずれの項目も平均値は有意に高かったが、多動性や旺盛な好奇心といった項目では、一般の3歳児でも高率に出現しており、判断は慎重にすべきと思われた。
(2)鳥取県の5歳児健診(1015名)にて軽度発達障害児の出現頻度は9.3%、栃木県の5歳児健診(1056名)でも8.2%という出現頻度であった。また、こうした児の半数以上が、3歳児健診では何ら発達上の問題を指摘されていなかった。
(3)5歳児健診における医師の診察法を構造化した。この診察法によって、精神遅滞(MR)やADHDは特徴的なパターンを示したが、高機能PDD児では全般的な通過率は良好であり、診察に集団における行動評価や保育者からの聞き取り情報なども加味する必要があると考えられた。
(4)軽度発達障害児の行動評価を質問紙で行ったが、質問紙のみでは鑑別診断は困難であり、ADHDやPDD等の診断には医師による診察や詳細な問診が不可欠であると考えられた。
結論
5歳児健診を基盤とすることによって、幼児期に軽度発達障害児の多くを把握することが可能であると推定された。半数以上は3歳児健診で問題なしと判定されており、現行の健診体制では十分に対応できないことが判明した。
構造化した診察法は軽度発達障害児の診断に有用であった。また、質問紙法への過度の依存は慎むべきであり、詳細な問診、医師の診察、集団場面の行動観察を組み合わせて包括的に診断するシステムが新たに求められる

公開日・更新日

公開日
2006-06-15
更新日
-