登録症例に基づく神経芽細胞腫マススクリーニングの効果判定と医療体制の確立

文献情報

文献番号
200500402A
報告書区分
総括
研究課題名
登録症例に基づく神経芽細胞腫マススクリーニングの効果判定と医療体制の確立
課題番号
H16-子ども-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
檜山 英三(広島大学・自然科学研究支援開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 升島 努(広島大学・大学院医歯薬学総合研究科)
  • 大瀧 慈(広島大学・原爆放射線医科学研究所)
  • 赤澤 宏平(新潟大学・医歯学総合病院)
  • 澤田 淳(京都第二赤十字病院)
  • 中山 雅弘(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 杉本 徹(京都府立医科大学・小児科)
  • 金子 安比古(埼玉県立がんセンター)
  • 中川原 章(千葉県がんセンター)
  • 福澤 正洋(大阪大学・大学院医学系研究科)
  • 林 富(東北大学大学院医学系研究科)
  • 浜崎 豊(静岡県立子ども病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経芽腫マススクリーニング(以下マス)事業は、治療不要な腫瘍の過剰診断と、死亡率低下に関する一定の見解が少ないことから休止が決定した。この休止の条件として、
1.本症の罹患と死亡の正確な把握、
2.マスの実施時期変更等、新たな検査方法の検討・評価、
3.本症による死亡の減少を目指した臨床診断と治療成績向上のための研究の推進と実施体制の確立、
の三点について対応することが示された。そこで、本研究は、これらの課題に対応し、マスの効果判定および有効マス事業の開発と臨床診断と治療成績向上を目的として平成16年度から開始した。
研究方法
1.後向き研究は、学会登録例約5000例のうち、1998年までに発症し、予後調査が終了した3646症例(マス発見例2086例)を集計し、検討を行った。
2.前向き研究は、マスを継続、継続検討中の自治体を中心に計画し、実際のプロトコル作成を行った。
3.に対して、マス施行中の保存検体を用いて、腫瘍特性解析を行い、治療が必要な腫瘍の層別化とその早期発見への新規マーカー探索を行った。
結果と考察
1.では、発症年齢は、予後良好例が1才未満に、予後不良例は1才、3才代に分布した。また、33項目の検討で予後と有意に相関した病期、病理、年齢、MYCN増幅、転移部位からリスク分類を提案し、今後の治療ガイドラインへの応用をめざしている。
2.では、適正な施行時期は18ヶ月の結果から、札幌市も平成18年から18ヶ月施行に変更を決定した。さらに、対象、施行法、症例登録などのプロトコルの作成がほぼ完了した。
3.では、網羅的ゲノム解析からゲノム異常は4群に大別され、腫瘍特性との関連が密であった。また、LC/MSを用いたマーカーの一斉解析法の確立、血清中遊離DNAによるMYCN増幅検出に成功した。これらは、今後のマス事業や診断に有用で、保存検体を用いた探索のため、全国の保存検体のバンキングを目的に規約を作成した。今後これらを提供できる体制とし、新たな研究の基盤としたい。
結論
生後6ヶ月児のマス事業の結果、この腫瘍の自然歴が解明された。生後1才未満に多い良性型腫瘍はゲノム異常からも層別され、今後治療を軽減する指標となることが示唆された。一方、生後18ヶ月頃から出現する悪性度の高い腫瘍に対しては、早期発見する新たなマスの構築や新規マーカー探索を含めた治療戦略が必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-09-20
更新日
-