わが国の21世紀における新生児マススクリーニングのあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200500401A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国の21世紀における新生児マススクリーニングのあり方に関する研究
課題番号
H16-子ども-011
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
山口 清次(国立大学法人島根大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 重松 陽介(国立大学法人福井大学医学部)
  • 原田 正平(国立成育医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国で新生児マススクリーニングが開始されてから29年が経過したが、取り巻く環境が変化し事業の見直しも求められている。すなわち少子化、新技術の開発、精度管理、患者追跡体制などの問題、および発見された患者の長期的QOLの問題などである。そこで新技術(タンデムマス)導入を検討するとともに、スクリーニング体制の見直し等を通じて事業の質的向上と効率化をはかる。
研究方法
 1)新生児マススクリーニング事業の効率的な体制を確立するために、対象疾患の予後調査、診療指針の作成、診断支援、確定診断体制、関連技術、費用対効果、スクリーニング施設基準の検討を行なった。
 2)新たに発見される疾患の我が国における頻度および分析技術の向上を目的として、タンデムマスによるパイロット研究を実施した。
 3)新生児スクリーニングの質的レベルの維持と向上をはかるため、現行のマススクリーニングで生じている問題を調査しさらに、精度管理、患者の追跡体制を検討した。
結果と考察
 1)対象疾患の予後は、発症してから診断された例は予後が悪く(正常生活20%以下)、スクリーニング発見例では正常生活は77%と有意に良好であった。費用対効果についてアメリカでの研究によるとタンデムマスによるスクリーニングで5,827 (736-11,419)/QALYという数字が出されており、非常に強い政策的根拠が出されている。タンデムマス検査施設基準として、スケールメリット、十分な教育訓練を受けた技術者、コンサルタント医師との連携、地域の参加、十分な精度管理などがあげられた。
 2)タンデムマスによるパイロットスタディー成績によると、日本人での発見頻度は1:7,000-9,000と計算された。偽陽性率は今年度は0.29-0.64%であった。タンデムマスのアミノ酸測定値は少なくとも現行のHPLC劣らないことが証明された。
 3)現行マススクリーニングの問題として、採血漏れ、検体搬送漏れ、検体紛失などを経験した施設は33施設(82.5%)にのぼった。また現行スクリーニングで発見された患者の10年以上の予後、QOLを検討したところ大部分の患者のQOLは良好であった。
結論
 タンデムマスは簡単な1回の検査で、現行のアミノ酸血症3疾患を含む20種類以上の疾患を効率よくスクリーニングでき、わが国でも導入する価値が高い。そして新技術導入を機に効率的なスクリーニング体制を再構築すべき時に来ている。

公開日・更新日

公開日
2006-06-07
更新日
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