新生児聴覚スクリーニングの効率的実施および早期支援とその評価に関する研究

文献情報

文献番号
200500400A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児聴覚スクリーニングの効率的実施および早期支援とその評価に関する研究
課題番号
H16-子ども-010
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
三科 潤(東京女子医科大学母子総合医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 多田 裕(実践女子大学 生活科学部)
  • 加我君孝(東京大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 福島邦博(岡山大学 医学部)
  • 朝倉啓文(日本医科大学 産婦人科)
  • 田中美郷(田中教育研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
聴覚障害児のQOLを高める上で、聴覚障害の早期発見・早期支援を行うことが重要であるが、聴覚障害児の約半数は他には何等の疾病を有しない児であり、スクリーニングを行わない限り、これらの児の聴覚障害を早期発見することは困難である。
我々はこれまでの研究において、自動聴性脳幹反応(AABR)または耳音響放射法(OAE)を用いた新生児聴覚スクリーニングが有効な早期発見の手段であることを明らかにし、本邦においても1,000出生に約1名の両側難聴、及び、ほぼ同数の片側難聴が新生児期に発見できることが明らかにしてきた。
また、新生児聴覚スクリーニングにより発見し、早期指導を開始した例において、就学時に健聴児と同様の言語能力が認められたことも報告した。
全出生児対象のスクリーニングを広範囲に普及させるための方策、乳児期の精密診断方法、効果的な早期支援の方法に関して検討する。

研究方法
1. OAEと AABRを用いる2段階聴覚スクリーニングを引き続き実施して検討した。 
2.新生児聴覚検査モデル事業開始以来、平成17年までに実施した自治体は17である。事業実施状況を調査した。
3. 日本産婦人科医会の調査により、全国の産科1088施設を対象に聴覚検査実施状況を検討した。
4.乳児期の聴覚障害精密診断として、 聴性定常反応(ASSR)について検討した。
5.新生児聴覚スクリーニングで発見され、早期療育を受けた聴覚障害児の就学時の聴覚言語発達をWPPSI知能検査および読書力検査を用いて検討した。 
6.0歳児の家庭訪問による早期支援を実施した。




結果と考察
1.OAE及びAABRによる2段階スクリ-ニングは有効な方法である。地域での2段階スクリーニングも有効に実施できた。
2.新生児聴覚検査事業はこれまで17自治体で実施されたが、 出生児全例を対象とする事業は少なかった。
3.分娩取扱機関の60%が新生児聴覚検査を行っている。 
4.聴性定常反応(ASSR)はより正確な乳児の聴力を評価したい場合に有用である。
5.早期発見・早期療育の聴覚障害児の就学時の言語力は、健聴児と同程度であり、良好な成績であった。
6. 家庭訪問支援は、家族のみならず、指導者にとっても家庭環境下の指導が出来、有用であった。
結論
本邦では、新生児聴覚スクリ-ニングの要再検率は低く、効果的に実施されている。また、スクリーニングで発見され早期支援を受けた児の就学時の聴覚言語発達は良好で、早期発見の効果が示された。今後、さらにスクリーニングを普及させる必要があり、支援体制の充実も必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-09-20
更新日
-