転倒骨折予防運動訓練の効果改善プログラムの研究

文献情報

文献番号
200500385A
報告書区分
総括
研究課題名
転倒骨折予防運動訓練の効果改善プログラムの研究
課題番号
H16-痴呆・骨折-017
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
永富 良一(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 芳賀 博(東北文化学園大学)
  • 大瀧 保明(東北大学大学院工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,225,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
転倒予防には様々な要因を総合的に考慮する必要があるが、運動機能面の支援が有用性は高い。しかし身体要因による高転倒リスク者をスクリーニングする方法、また運動機能訓練の効率化、また訓練終了後の効果維持方法などの実務的な問題は解決されていない。そこでこれらの課題を克服し転倒予防訓練の効率化をはかることが期待される以下の5つの研究を行った。
研究方法
仙台市宮城野区鶴ヶ谷地区の70歳以上の高齢住民を対象に、1)集団運動プログラム(週1回5ヶ月)参加の有無により1年間の転倒関連運動機能の推移に違いがあるかケースコントロールスタディにより検証した。2)身体要因による高転倒リスク者を質問紙Motor Fitness Scale(MFS)によりスクリーニング可能かどうかを検討した。3)地域高齢者住民を運動支援リーダーとして養成し、リーダーによる自主的運動サークルが転倒リスクの軽減につながるかどうかを検討した。4)自宅で実施可能な簡易太極拳プログラム(8式太極拳+6式カンフー体操)が転倒関連体力に及ぼす効果を従来型筋力/歩行トレーニングを対照にした無作為割り付け対照試験で検討した。5)転倒リスク評価のための加速度センサーを利用した携帯型身体活動モニタリングデバイスの利用可能性について検討した。
結果と考察
1) 運動教室非参加者は1年でFunctional Reachが低下したが、参加者に低下はみられなかった。2) ROC曲線からMFSのcut-off値は転倒者10点、転倒骨折者7点であった。3) 60歳以上のボランティアリーダー主導による自主運動サークルを地域内7カ所で月2回開催した。MFS10点以下の住民129名が一年以上継続して参加している。約半年間のプログラム効果として非参加者ではMFS得点、老研式活動能力得点、及び要介護リスク得点等が有意に低下したが、参加者では維持、あるいは有意な低下がみられなかった。4) 12回(週1回3ヶ月)の簡易太極拳+カンフー体操プログラムの効果は従来型プログラムと同様にTUGTが改善した。5)自転車エルゴメータによる疲労課題前後で歩行時のapproximate entropyが増加し不安定化する傾向がみられたが、個人差が大きく評価指標としては今後の検討を要する。
結論
転倒予防運動訓練の効率化に対象者を限定するMFSが有効であり、効果評価には直後の評価より1年間の体力推移の評価が重要であることがわかった。自主サークル、認知度の高い自宅で実施可能な太極拳など画一的でない多様な機会を提供することが予防には重要であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200500385B
報告書区分
総合
研究課題名
転倒骨折予防運動訓練の効果改善プログラムの研究
課題番号
H16-痴呆・骨折-017
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
永富 良一(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 芳賀 博(東北文化学園大学医療福祉学部)
  • 大瀧 保明(東北大学大学院工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
転倒予防には様々な要因の総合的考慮を要するが、運動機能支援の有用性は高い。しかし転倒予防訓練の効率化には身体要因による高転倒リスク者のスクリーニング方法の確立、集団転倒予防教室の効率化、また訓練後の効果維持方法の確立が必要である。これらを克服し効果改善が期待される方法の検証を行う。
研究方法
仙台市宮城野区鶴ヶ谷地区の70歳から84歳までの住民を対象に、1)週1回5ヶ月間の転倒予防運動教室参加者と運動機能同等の非参加者の1年間の体力水準の推移を比較するケースコントロールスタディ、2)質問紙Motor Fitness Scale(MFS)の転倒骨折ハイリスク者スクリーニングに対する有用性検討のための郵送アンケート調査、3)能力別集団運動訓練による転倒予防効果改善を検証する3ヶ月間週1回の集団訓練効果を検証する無作為割り付け対照試験、4)簡易太極拳(8式+カンフー体操)教室(週1回3ヶ月)が転倒関連体力に及ぼす効果を従来型筋力トレーニングと比較する無作為割り付け対照試験、5)地域高齢者ボランティアによる自主運動サークル活動の体力維持効果検証、を実施した。さらに6)転倒予防プログラム募集に応じなかった理由の調査を行い、7)加速度センサーによる歩行安定性評価の有用性を検討した。
結果と考察
1)運動教室非参加者は1年間にFunctional reachの有意な低下がみられたが、参加者にはみられなかった。2)2052名を対象にしたアンケートにおいて転倒および転倒骨折のカットオフはそれぞれMFS10点と7点であった。3)能力別運動訓練の有用性を能力混在型と比較したが運動効果に差はみられなかった。ただし指導者が特に安全管理面で指導しやすかった。4)簡易太極拳プログラムは従来型同様に転倒関連体力維持改善に有効であった。太極拳は継続実施率が高く維持に有用である一方、補助具なしでの歩行が可能でないと実施困難であった。5)地域高齢者ボランティアによる自主運動グループ参加者では非参加者でみられたMFSの低下がみられず、維持効果が高いことが明らかになった。6)転倒予防プログラムに応募しなかった最大の理由は主治医の意見(32.7%)であった。7)歩行時加速度信号の解析からApproximate Entropyなどにより疲労時の歩行安定性の変化が検出されることがわかった。
結論
転倒骨折予防訓練の効果改善には、MFSによる適切なスクリーニング、能力別指導、簡易型太極拳のようなプログラムや地域運動支援ボランティアによる自主運動グループ活動の有用性が認められた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500385C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1年間の追跡調査により期限付き運動教室非参加者は有意に転倒関連体力の低下がみられるのに対して参加者では維持されていることが明らかになった。またMotor Fitness Scaleだけでも転倒ハイリスク者のスクリーニングが可能であることがわかった。RCTにより能力別運動指導の効果を検証したが、参加者の体力には反映されなかった。
臨床的観点からの成果
運動訓練に参加した地域高齢者と同等の運動機能レベルにあると考えられる訓練に参加しなかった地域高齢者住民にとって運動訓練の可否について主治医の意見が重視されていることがわかった。参加者では体力維持効果が得られていることから考慮すると、地域医療機関において運動に伴うリスクと運動制限に伴うリスクを慎重に判断する必要があると考えられた。
ガイドライン等の開発
仙台市スポーツ振興審議会 平成18年3月29日 高齢者自主サークルの活動の場について、総合型地域スポーツクラブにおける高齢者エクササイズについて
その他行政的観点からの成果
本研究成果を参考にしてH18年度に新施策として地域包括支援センターと連携し、2008年度までに市内123カ所で、介護予防事業参加高齢者が事業終了後介護予防に取り組む自主サークルを育成する方針 。指導員/ボランティアの養成、運動指導員の派遣を実施し、自主グループ同士の交流を促進する。また仙台市泉区ではH18年度社会福祉協議会が運営する高齢者サロン活動に本研究を参考に運動プログラムを導入することになった。
その他のインパクト
転倒予防運動教室の意義、効果について地元紙河北新報に、特集記事「元気に老いようパート2ー転倒・骨折の予防」として2004年10月に取り上げられ、2006年1月21日および同2月27日に再び同誌に啓蒙記事が報じられた。
東北大学医学部公開講座において本研究成果を披露(H17.11.19)

発表件数

原著論文(和文)
1件
印刷中1編、審査中1編
原著論文(英文等)
1件
加速度センサーによる歩行安定性評価について
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
能力別運動教室の効果について、運動支援ボランティア養成、自主グループにおける転倒予防について
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
仙台市高齢者の介護予防自主グループおよび指導者育成、 仙台市泉区社会福祉協議会高齢者サロン活動への運動プログラムの導入
その他成果(普及・啓発活動)
11件
地域講演会、公開講座、宮城県医師会生涯教育講座

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
矢野秀典、楊光、永富良一 et al.
地域虚弱高齢者に対する体力レベル別運動指導の効果
日本老年医学雑誌 , 43 (3) , 390-397  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-