痴呆のスクリーニング及び早期診断法の確立に関する臨床研究(臨床研究実施チームの整備)

文献情報

文献番号
200500380A
報告書区分
総括
研究課題名
痴呆のスクリーニング及び早期診断法の確立に関する臨床研究(臨床研究実施チームの整備)
課題番号
H16-チム(痴・骨)-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院医学系研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病(AD)を始めとする痴呆の診断法確立のため、臨床研究グループにより、(1)より疾患特異的なCSFマーカーの検討、(2)より簡便なマーカーによる検討、(3)画像診断を補完する脳機能の生理学的検討を行った。
研究方法
CSF中では酸化ストレスを反映する酸化タウをウエスタン法により定量した。また、APP同様にγセクレターゼの基質となるNotchから切り出されるNβについてマーカーになりうるかを検討した。さらに、ある課題下での脳磁図(MEG)のAD診断への応用について検討した。
結果と考察
(1)脳脊髄液中の酸化(カルボニル化)タウの定量
AD患者(15名)、正常者(8名)、MCI(2名)の脳脊髄液中のカルボニル化タウを定量したところ、AD患者群は高値を示す結果が得られた。
(2)診断マーカーとしてのNβ測定の妥当性の検討
βAPPとNotch由来の基質および各種PS1病原性変異体を発現する細胞を用いてA42産生量と延長型Nβ25産生量を検討したところ、Aβ42産生が増加するに従い、延長型Nβ25産生量が増加した。これらの結果よりAを切り出すプレセニリンγセクレターゼによるγ切断とNβを切り出すS4切断機構は共通している可能性が示された。Aβと異なり、Nβは凝集性が低いと推定され、血中での測定が可能となる可能性がある。
(3)課題下MEGのAD診断応用の妥当性の検討
高齢者群及び若年者群にStroop課題を与え、MEGに供した。背外側前頭前野(Dorsolateral prefrontal cortex; DLPFC)の賦活が高齢者3例全例、左半球で見られた。一方、若年者のDLPFCの賦活は、左半球のみが3名、右が2名、両側が3名であった。両側例では比較的左で賦活が強かった。これは、側性化は左に優位であるが右も少なくないことを示す。これらの結果は、若年者、高齢者ともDLPFCが賦活され左に側性化が強く、高齢者でその傾向が強くなることを示している。また固視点注視時と課題時の神経活動の差が加齢によって小さくなることが示されている。この結果は、MEGがADの発病前治療、早期診断、発症予測、薬効判定などへ臨床応用が可能なことを示している。
結論
脳脊髄液中の酸化(カルボニル化)タウの定量、Nβ測定、課題下MEGは、従来のAD診断をより性格にし、かつ簡便に行える診断法確立を有益である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
200500380B
報告書区分
総合
研究課題名
痴呆のスクリーニング及び早期診断法の確立に関する臨床研究(臨床研究実施チームの整備)
課題番号
H16-チム(痴・骨)-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院医学系研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病(AD)を始めとする痴呆の診断法確立のため、臨床研究グループにより、①より疾患特異的なCSFマーカーの検討、②より簡便なマーカーによる検討、③画像診断を補完する脳機能の生理学的検討を行った。
研究方法
CSF中では酸化ストレスを反映する酸化タウをウエスタン法により定量した。また、APP同様にγセクレターゼの基質となるNotchから切り出されるNβについてマーカーになりうるかを検討した。さらに、ある課題下での脳磁図(MEG)のAD診断への応用について検討した。
結果と考察
(1)脳脊髄液中の酸化(カルボニル化)タウの定量
AD患者(15名)、正常者(8名)、MCI(2名)の脳脊髄液中のカルボニル化タウを定量したところ、AD患者群は高値を示す結果が得られた。
(2)診断マーカーとしてのNβ測定の妥当性の検討
βAPPとNotch由来の基質および各種PS1病原性変異体を発現する細胞を用いてA42産生量と延長型Nβ25産生量を検討したところ、Aβ42産生が増加するに従い、延長型Nβ25産生量が増加した。これらの結果よりAを切り出すプレセニリンγセクレターゼによるγ切断とNβを切り出すS4切断機構は共通している可能性が示された。Aβと異なり、Nβは凝集性が低いと推定され、血中での測定が可能となる可能性がある。
(3)課題下MEGのAD診断応用の妥当性の検討
高齢者群及び若年者群にStroop課題を与え、MEGに供した。背外側前頭前野(Dorsolateral prefrontal cortex; DLPFC)の賦活が高齢者3例全例、左半球で見られた。一方、若年者のDLPFCの賦活は、左半球のみが3名、右が2名、両側が3名であった。両側例では比較的左で賦活が強かった。これは、側性化は左に優位であるが右も少なくないことを示す。これらの結果は、若年者、高齢者ともDLPFCが賦活され左に側性化が強く、高齢者でその傾向が強くなることを示している。また固視点注視時と課題時の神経活動の差が加齢によって小さくなることが示されている。この結果は、MEGがADの発病前治療、早期診断、発症予測、薬効判定などへ臨床応用が可能なことを示している。
結論
脳脊髄液中の酸化(カルボニル化)タウの定量、Nβ測定、課題下MEGは、従来のAD診断をより性格にし、かつ簡便に行える診断法確立を有益である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
200500380C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アルツハイマー病(AD)をはじめとする認知症には未だ確立された診断がない。そこで本研究は(1)より疾患特異的な脳脊髄液(CSF)マーカーの検討、(2)より簡便なマーカーによる検討、(3)画像診断を補完する脳機能の生理学的検討を行った。具体的には、脳脊髄液中の酸化タウ、γセクレターゼの基質であるNotchの産物であるNβ、課題下での脳磁図(MEG)であるが、今までと違った側面からの生物マーカーの確立の可能性が示された。
臨床的観点からの成果
CSF中の酸化タウはADの疾患特異性が高く、従来の全タウ測定やAβ測定と合わせることで、より正確なADの診断ができる可能性がある。また、Nβ測定は血中で可能である可能性があり、より簡便な侵襲性の少ない検査法になる可能性が示された。MEGは非侵襲的に脳機能を見ることができ、画像診断を補完できる。これらの診断マーカーを臨床に応用することでAD診断法の進歩が期待される。
ガイドライン等の開発
特記事項無し。
その他行政的観点からの成果
特記事項無し。
その他のインパクト
特記事項無し。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
なし
なし
なし

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-