わが国におけるStroke unitの有効性に関する多施設共同前向き研究

文献情報

文献番号
200500376A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国におけるStroke unitの有効性に関する多施設共同前向き研究
課題番号
H16-痴呆・骨折-023
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
峰松 一夫(国立循環器病センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 成冨 博章(国立循環器病センター)
  • 安井 信之(秋田県立脳血管研究センター)
  • 植田 敏浩(東京都済生会中央病院)
  • 豊田 章宏(中国労災病院)
  • 岡田 靖(九州医療センター)
  • 長谷川 泰弘(聖マリアンナ医科大学)
  • 豊田 百合子(国立循環器病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
22,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、わが国の医療体制に則した有効な脳卒中専門病棟 (stroke unit: SU) の定義や具備すべき条件を明らかにし、SUにより提供される医療の質を評価可能なものにすることである。
研究方法
まず,全国7835の有床病院を対象に、アンケートによる脳卒中急性診療の実態調査を実施した。次に、全国117施設で多施設共同前向き登録調査を行った。調査対象は、発症後3日以内に入院した完成型脳卒中(くも膜下出血を除く)であった。
結果と考察
アンケート調査の結果、SUを有する施設は8.3%と少なく、63.8%の施設が、一般病棟で他の疾患と混在して急性期治療を行い、脳卒中チームを持たない一般病棟混在型の体制をとっていることがわかった。また、夜間・休日には脳卒中を専門としない医師が初期対応をしている施設が78.4%にも及ぶことが明らかとなった。
 多施設共同前向き調査に関して、平成17年11月30日までの集計例(4268例、そのうち3ヶ月目の追跡調査終了は2585例)による中間解析を行った。参加施設の診療形態を、SU治療(急性期型、および急性期+リハ型)とそれ以外に分けて、28日目および3ヶ月目の転帰に与える影響について解析した。その結果、SU治療は、3ヶ月目の転帰良好 (modified Rankin scale; mRS 0-2) と有意な関連を認めた。さらに、脳卒中患者の転帰と診療施設の診療形態(structure) およびprocessとの関係について検討した。参加施設の診療形態を、脳卒中専門病棟、神経疾患病棟、一般病棟の3つに分類し、mRSが0、1である場合を転帰良好として、これに関わる因子を解析した。その結果、診療形態は、28日目、3ヶ月目のいずれの転帰とも関連を示さなかった。しかし、processのうち、7日以内のリハ計画作成率、7日以内の嚥下機能評価施行率と3ヶ月目の転帰は有意な関連を示した。
結論
今回の中間解析により、わが国においてもSU治療が脳卒中発症3ヶ月目の転帰を改善することが明らかとなった。さらに詳しく検討すると、脳卒中の転帰は、脳卒中診療施設のstructureよりも、そこで行われているprocessに関連する可能性が高いことが示された。tPA静注療法が保険診療として承認された現在においては、一刻も早い脳卒中診療体制の再構築が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200500376B
報告書区分
総合
研究課題名
わが国におけるStroke unitの有効性に関する多施設共同前向き研究
課題番号
H16-痴呆・骨折-023
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
峰松 一夫(国立循環器病センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 成冨 博章(国立循環器病センター )
  • 安井 信之(秋田県立脳血管研究センター )
  • 植田 敏浩(東京都済生会中央病院)
  • 豊田 章宏(中国労災病院)
  • 岡田 靖(国立病院機構九州医療センター)
  • 豊田 百合子(国立循環器病センター)
  • 長谷川 泰弘(聖マリアンナ医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、わが国の医療体制に則した有効な脳卒中専門病棟(stroke unit: SU) の定義や具備すべき条件を明らかにし、SUにより提供される医療の質を評価可能なものにすることにある。
研究方法
SUをもつ中核5施設に加え、全国112施設の参加を得て、合計117施設で多施設共同前向き登録調査を実施した。調査対象は、発症後3日以内に入院した完成型脳卒中(くも膜下出血を除く)であった。共通の調査票により、急性期の診断検査・治療内容、入院時および第7日目の神経症状重症度 (NIHSS)、リハビリ施行日数、多職種によるカンファレンス実施の有無、クリニカルパス使用の有無、第28日目の日常生活自立度 (mRS、 Barthel Index) などを調査した。3ヶ月後の追跡調査では3ヶ月目のmRS、主な生活場所(自宅、リハビリテーション専門病院、老健施設など)を調査した。登録期間は平成16年12月1日?平成17 年12月31日、3ヶ月目の追跡調査終了は平成18年3月31日であった。
結果と考察
平成17年11月30日までの集計例(4268例、そのうち3ヶ月目の追跡調査終了は2585例) による中間解析を行った。まず、参加施設の診療形態を、SU治療(急性期型および急性期+リハビリ型)とそれ以外に分けて、28日目および3ヶ月目の転帰に与える影響についてLogistic regression modelを用いて解析した。その結果、SU治療は、3ヶ月目の転帰良好 (mRS 0-2) と有意な関連を認めた。さらに、脳卒中患者の転帰と診療施設の診療形態(structure) およびprocessとの関係について検討した。参加施設の診療形態を、脳卒中専門病棟、神経疾患病棟、一般病棟の3つに分類し、mRSが0、1である場合を転帰良好として、これに関わる因子をLogistic regression modelを用いて解析した。その結果、診療形態は、28日目、3ヶ月目のいずれの転帰とも関連を示さなかった。しかし、processのうち、7日以内のリハビリ計画作成率、7日以内の嚥下機能評価施行率と3ヶ月目の転帰は有意な関連を示した。
結論
今回の中間解析により、わが国においてもSU治療が脳卒中発症3ヶ月目の転帰を改善することが明らかとなった。さらに詳しく検討すると、脳卒中の転帰は、脳卒中診療施設のstructureよりも、そこで行われているprocessに関連する可能性が高いことが示された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500376C

成果

専門的・学術的観点からの成果
多施設共同前向き登録調査の3ヶ月目の追跡調査が平成18年3月31日で終了した。最終報告では、より多数例についての多面的な解析を行う予定である。最終データ解析により、診療形態別の治療成績の差異や、治療成績向上のために必要な診療体制の要件が明らかになる。また、わが国の医療体制に則したStroke unit (SU) の定義とその医療の質の評価法が示され、エビデンスに基づく脳卒中医療の大幅な改善の足掛かりも得られる。
臨床的観点からの成果
今回の中間解析により、わが国においてもSU 治療が脳卒中発症3ヶ月目の転帰を改善することが明らかとなった。さらに詳しく検討すると、脳卒中の転帰は、脳卒中診療施設のstructureよりも、そこで行われているprocessに関連する可能性が高いことが示された。
ガイドライン等の開発
わが国の「脳卒中治療ガイドライン2004」では、SUでの脳卒中治療はグレードA (行うよう強く求められる)に位置づけられている。しかしながら、これは欧米の医療体制下における一般病棟治療との比較により導かれた結論であり、医療体制の異なるわが国における有用性を推測するに足るデータはなかった。今後、ガイドラインを改訂する際、本研究の結果がわが国での唯一のエビデンスになると思われる。
その他行政的観点からの成果
本研究は、わが国の急性期脳卒中医療を担っている種々な医療施設の参加により行われている研究であり、参加施設の脳卒中医療レベルの向上と、周辺の非参加施設への波及効果が得られる。さらに、本研究成果によって、脳卒中急性期のみならず回復期リハビリから在宅介護まで、長いスパンにわたる継ぎ目のない地域脳卒中医療構築への足掛かりが得られると期待される。
その他のインパクト
多施設共同前向き登録調査を行う前に、全国7835の有床病院を対象に、アンケートによる脳卒中急性期診療の実態調査を実施した。その結果、SUを有する施設は8.3%と少なく、63.8%の施設が、一般病棟で他の疾患と混在して急性期治療を行い、脳卒中チームを持たない一般病棟混在型の体制をとっていることが明らかとなった。また、夜間・休日には脳卒中を専門としない医師が初期対応をしている施設が78.4%にも及ぶことがわかった。

発表件数

原著論文(和文)
26件
原著論文(英文等)
48件
その他論文(和文)
75件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
50件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kimura K, Kazui S, Minematsu K, et al.
Analysis of 16,922 patients with acute ischemic stroke and transient ischemic attack in Japan
Cerebrovasc Dis , 18 , 47-56  (2004)
原著論文2
Inoue T, Kimura K, Minematsu K, et al.
Clinical features of transient ischemic attack associated with atrial fibrillation: Analysis of 1084 TIA patients
J Stroke Cerebrovasc Dis , 13 , 155-159  (2004)
原著論文3
Kimura K, Kazui S, Minematsu K, et al.
Hospital-based prospective registration of acute ischemic stroke and transient ischemic attack in Japan
J Stroke Cerebrovasc Dis , 13 , 1-11  (2004)
原著論文4
Ogata T, Kimura K, Minematsu K, et al
Variation in ischemic stroke frequency in Japan by season and by other variables
J Neurol Sci , 225 , 85-89  (2004)
原著論文5
Inoue T, Kimura K, Minematsu K, et al.
A case-control analysis of intra-arterial urokinase thrombolysis in acute cardioembolic stroke
Cerebrovasc Dis , 19 , 225-228  (2005)
原著論文6
Kimura K, Minematsu K, Yamaguchi T
Atrial fibrillation as a predictive factor for severe stroke and early death in 15,831 patients with acute ischemic stroke
J Neurol Neurosurg Psychiatr , 76 , 679-683  (2005)
原著論文7
Kimura K, Minematsu K, Kazui S, et al
Mortality and cause of death after hospital discharge in 10,981 patients with ischemic stroke and transient ischemic attack
Cerebrovasc Dis , 19 , 171-178  (2005)
原著論文8
数井誠司、木村和美、峰松一夫、他
脳梗塞急性期医療の実態に関する研究グループ(J-MISIC):急性期脳梗塞の臨床像およびその医療の地域差に関する多施設共同研究
臨床神経学 , 42 , 736-744  (2002)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-