女性の未婚率上昇に関連する意識についての調査研究

文献情報

文献番号
199700035A
報告書区分
総括
研究課題名
女性の未婚率上昇に関連する意識についての調査研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
小倉 千加子(愛知淑徳大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生行政科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子化の主要な原因とされている女性の晩婚化の進行、並びに未婚率の上昇の心理的原因を調査し、分析すること。特に未婚女性の結婚に対する考え方やライフコース上における結婚の位置づけが、世間で言われる常識的な見解とは違っているのではないか、との前提に立ち、質問紙法による簡便で大量な情報収集をあえて避け、女性の深層にある本音を探ることを目的とした。
研究方法
都市圏(東京、横浜、大阪、京都、神戸)を住居とするか、もしくは職場としている未婚女性52名を無作為に抽出(年齢のレンジは21歳~36歳)。あらかじめ生年月日、生地、家族構成、家族の学歴並びに職歴、本人の学歴並びに職歴を質問した後、半構造化された面接を行った。平均面接時間は、 2時間。結婚に対する意識、将来の家庭生活のイメージ、現在の仕事に対する意欲などを主な項目としながら、自由な発言を含め、すべて本人の許可を得た上で録音し、文章に再生した。被験者は1961~1976年生まれにあたるため、この複年コーホートを一つの「世代」と設定した上で、コーホート分析も合わせて行った。
結果と考察
?未婚女性における結婚願望は強い。ただし、結婚というライフイベントは、出産というイベントと強く結合して意識されており、従って結婚への願望とは、母になるライフコースに不可避の選択として位置づけられている。?出産可能年齢が上昇するにつれ、初婚年齢の上限も上昇する。30歳以下は「30歳までに」、30歳を過ぎると「35歳までに」、35歳を過ぎると「40歳までには」と目標年齢が 5年ずつ先延ばしされていく。40歳で結婚願望は表明されなくなる。?結婚というイベントを成立させるために、民間の結婚相談業へ行くことには強い抵抗感が存在する。すなわち、女性は結婚への欲望を自覚することに激しい羞恥感情を抱いている。それを隠蔽するため、「結婚は恋愛の延長線上にあるもの」という主張も多くみられた。恋愛に陥るためにはまだまだ「自然な出会い」が必要とされている。?結婚相手には、「自分と価値観が同じ人」とか、「コミュニケーションできる人」という条件と、「尊敬できる人」という条件が頻出する。結婚は依然として階級内婚か階級上昇婚である。結婚の出発となる「出会い」の自然さとは、階層を隔てる壁を超えないところでしか恋愛が発生しないことを示唆している。?1990年当時によく言われた「 3高」は消滅している。特に男性の身長に対する女性のこだわりが激減している。今やむしろ、「十分な給料」「理解し合えること」「家事に協力的」という条件を満たした男性の方がパートナーとして相応しいという意見が多かった。結婚が友人に対する虚栄や男性の力への畏怖から脱し、実質本位に変化しつつある現れであろう。?結婚後のライフコースについては、「自分は仕事を継続したいと思っているが、相手に十分な収入があるなら専業主婦になってもいい」と意見が多かった。この新専業主婦志向は、従来の「男は仕事、女は家事」という性別役割分業、さらに「男は仕事、女は仕事と家事」という新性別役割分業への反発の上に生じたもので、「男は仕事と家事、女は家事と趣味」という分業志向の別名である。家事も重要な労働なのだから夫は妻に感謝し、協力しなければならない。その上で妻は、趣味と実益を兼ねた「新しい働き方」を見つける権利があり、夫は妻の「才能」に対して理解を向けなければならない。こういう「新しい働き方」は、在宅で行われることが多いため、育児との両立が容易である。出産・育児というイベントは体験価値があるので一度はやってみたいが、二度やるには十分過ぎる。それ以外に自分の自己実現のためのエネルギーを温存しておきたい。という以上の結果に至った。
結論
未婚女性は、結婚し、主婦
になって初めて「居場所」と「経済」と「子供」を確保でき、その上で安心して自己実現を目指したいと考えていることがわかる。結婚はゴールではなく、ゴールにたどりつくために重要な通過点である。いきおい、その選択は慎重になり、晩婚化は避けられない状況となる。

公開日・更新日

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