文献情報
文献番号
200500370A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中患者の機能回復促進に関する研究
課題番号
H16-痴呆・骨折-020
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
宮井 一郎(特定医療法人大道会ボバース記念病院)
研究分担者(所属機関)
- 久保田 競(日本福祉大学大学院情報・経営開発研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
7,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
脳卒中に対する回復期リハビリテーション(リハ)を現実的効果(I)と脳科学(II)から検証し、誰にいつ何をどこでどの期間行うべきか検討する。本年度は主に介入量の影響について検討した。
研究方法
I 脳卒中リハにおける訓練量増加の運動機能改善効果、II-1 脳卒中患者の運動学習と脳活動の関連、II-2 小脳失調患者における歩行中の脳活動変化、II-3 歩行運動の準備に関連した皮質活動、II-4 高齢者の歩行訓練による前頭葉機能の変化について検討した。IIの研究は光イメージングを用いた。
結果と考察
I-1 回帰樹木の結果、初回脳卒中730名で訓練量依存性の機能改善が見られたのは50日以内に回復期リハを開始し、かつ完全麻痺を呈さない患者であった。
II-1運動学習には回転板課題を用いた。健常対照は成績向上にともない、脳活動中心は、前補足運動野から補足運動野へシフトした。脳卒中患者の成績は向上するものの対照にくらべ低く,プラトー化は遅延、シフトも不明確で、視運動連関に依存する学習初期の状態が遷延することが示唆された。
II-2 健常人では、トレッドミル速度が定常状態になった後に、歩行を続けると補足運動野や前頭前野活動が低下してくるが、小脳失調を呈する脳卒中患者では同部の活動が維持されていた。
II-3 「用意」という課題への準備指示が前頭連合野と運動関連領域の皮質活動を歩行開始前から増加させ、その後の歩行運動に対する皮質制御にも影響を与える可能性が示唆された。
II-4 高齢者における歩行訓練は、前頭葉における特異的な認知機能を改善したことから、高齢者の前頭葉認知機能の低下を防止する手段として、歩行訓練が有効である可能性が示唆された。
II-1運動学習には回転板課題を用いた。健常対照は成績向上にともない、脳活動中心は、前補足運動野から補足運動野へシフトした。脳卒中患者の成績は向上するものの対照にくらべ低く,プラトー化は遅延、シフトも不明確で、視運動連関に依存する学習初期の状態が遷延することが示唆された。
II-2 健常人では、トレッドミル速度が定常状態になった後に、歩行を続けると補足運動野や前頭前野活動が低下してくるが、小脳失調を呈する脳卒中患者では同部の活動が維持されていた。
II-3 「用意」という課題への準備指示が前頭連合野と運動関連領域の皮質活動を歩行開始前から増加させ、その後の歩行運動に対する皮質制御にも影響を与える可能性が示唆された。
II-4 高齢者における歩行訓練は、前頭葉における特異的な認知機能を改善したことから、高齢者の前頭葉認知機能の低下を防止する手段として、歩行訓練が有効である可能性が示唆された。
結論
回復期リハにおける訓練量依存性の機能改善効果は発症後早期かつ機能障害が重篤でない群において最も期待されることが示唆された。訓練量増加に関連した機能回復促進効果の神経基盤は、脳卒中患者の運動学習や歩行運動の自動化の遅延(いわゆる「身体でおぼえる」こと)に関連し、課題指向型の日常生活動作練習の繰り返しはそれを補完していく可能性が示唆された。
歩行運動に関連した脳活動は実際の運動だけでなく、その準備によっても増強されること、高齢者の歩行習慣が認知に関連した前頭葉機能の低下を防止する可能性があることから、加齢に伴う運動や認知機能低下の予防のためにも運動量増加(運動習慣)は有用であることが示唆された。
歩行運動に関連した脳活動は実際の運動だけでなく、その準備によっても増強されること、高齢者の歩行習慣が認知に関連した前頭葉機能の低下を防止する可能性があることから、加齢に伴う運動や認知機能低下の予防のためにも運動量増加(運動習慣)は有用であることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2006-04-04
更新日
-