文献情報
文献番号
200500362A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の早期診断、治療戦略の開発
課題番号
H16-痴呆・骨折-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
石神 昭人(東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
- 半田 節子(東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
- 久保 幸穂(東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
6,175,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
アルツハイマー病(AD)での特徴的な病理所見としてアミロイドベータ蛋白質(Aβ)が蓄積した老人斑やリン酸化タウ蛋白質が蓄積した神経原線維変化は有名である。これら蛋白質は、本来、正常な機能を果たしていたものがやがて様々な修飾を受け異常化し、神経細胞の内側や外側に蓄積したためと考えられる。我々は、アルツハイマー病の脳で蛋白質中のアルギニンという塩基性アミノ酸がシトルリンという中性アミノ酸に変換された異常な蛋白質(シトルリン化蛋白質と総称)が多く出現することを初めて見出した。本研究では、シトルリン化蛋白質やシトルリン化蛋白質産生酵素(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ; PAD)を高感度に検出するELISAシステム(酵素免疫測定法)を開発し、アルツハイマー病の早期診断を行う臨床検査試薬を開発する。また、シトルリン化蛋白質がアルツハイマー病発症の引き金となるか明らかにする。
研究方法
シトルリン化蛋白質がアルツハイマー病発症の引き金となることを証明する。即ち、①神経細胞やグリア細胞を培養し、様々な酸化ストレスによるPADの活性化やシトルリン化蛋白質の出現を解析する。また、②PADやシトルリン化蛋白質の高感度ELISAシステムを構築し、アルツハイマー病早期診断を行う臨床検査試薬を開発する。
結果と考察
アルツハイマー病の早期診断を行うELISAシステムを開発するため、PADやシトルリン化蛋白質に対する多種多様なモノクローナル抗体を作製した。PADに対するモノクローナル抗体は約30種類確立した。特異性の高い固相抗体、標識抗体の組み合わせを検討中。また、シトルリン化蛋白質がアルツハイマー病発症の引き金となるか明らかにするため、神経細胞やグリア細胞に様々な酸化ストレスを与えた。その結果、これらの細胞で早期にPADが誘導され、細胞死が起こる以前にシトルリン化蛋白質が出現することがわかった。
結論
今年度、シトルリン化蛋白質がアルツハイマー病の発症や進行に深く関与する可能性を強く示唆する多くのデータを得た。また、シトルリン化蛋白質を産生するPADを高感度に検出するELISAシステムも完成間近である。神経細胞やグリア細胞を用いた基礎研究からもシトルリン化蛋白質が早期細胞障害時に出現することは明らかである。従って、PAD、シトルリン化蛋白質のELISAシステムはアルツハイマー病の早期診断薬に成りうる可能性が高い。
公開日・更新日
公開日
2006-04-04
更新日
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