痴呆のスクリーニング及び早期診断法の確立に関する臨床研究

文献情報

文献番号
200500359A
報告書区分
総括
研究課題名
痴呆のスクリーニング及び早期診断法の確立に関する臨床研究
課題番号
H16-痴呆・骨折-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院・医学系研究科精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 稔久(大阪大学大学院・医学系研究科精神医学講座)
  • 浦上 克哉(鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座)
  • 千葉 茂(旭川医科大学医学部精神医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
15,175,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病の早期発見、早期治療のために生物学的診断マーカーの確立のために研究をおこなった。
研究方法
病態生理学的観点から、アミロイド産生に関わるガンマセクレターゼ活性、タウ蛋白の変化、糖化産物、および酸化ストレス産物の観点から研究をおこなった。ガンマセクレターゼ活性に関してはNotchシグナル伝達に伴うNotchの段階的蛋白分解によって産生されるNbetaの解析をおこなった。タウ蛋白に関しては、患者の脳脊髄液中の第1メチオニン切断化タウ蛋白の解析をおこない、それへの結合特性を有するXIAPの解析をおこなった。糖化産物に関しては、患者脳脊髄液中のWGA結合糖タンパクを解析した。酸化ストレス産物に関しては、尿や血清中で検出可能な酸化ストレスマーカーについて、健常対照群、軽度認知障害(MCI)群、アルツハイマー病(AD)群、および前頭側頭型認知症(FTD)群の4群を対象に検討した。
結果と考察
ガンマセクレターゼ活性に関してはNotchの段階的蛋白分解によって産生されるNbetaの主な分子種はNβ21と延長型Nbeta25であること、プレセニリンの病原性変異体やNSAIDなどの薬剤によりAβ42産生量が変化すると、Nbeta25産生量もそれと相関して変化することを明らかにした。タウ蛋白に関しては、アルツハイマー病患者の脳脊髄液中には第1メチオニン切断化タウ蛋白が多量に含まれていることが判明した。また、この切断化タウ蛋白に結合するXIAPの発現制御に関して検討をおこない、AβによってXIAPの発現が抑制され、リチウムおよびGSK-3阻害剤はXIAPの発現を亢進させることを見いだした。糖化産物に関しては、患者で有意に結合が低下している蛋白がトランスフェリンであることを同定し、蛋白量に変化はなく、糖鎖が減少していることが示唆された。酸化ストレス産物に関しては、血清CoQ10酸化率(ubiquinolに対するubiquinoneの比)およびserum total antioxidantstatus(STAS)は、MCI群とAD群で対照群に比べて有意に変化しており、これらの血清酸化ストレスマーカーのアルツハイマー病早期診断上の有用性が示唆された。
結論
ガンマセクレターゼ活性、タウ蛋白の修飾、糖化産物、および酸化ストレス産物は診断に有効である可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200500359B
報告書区分
総合
研究課題名
痴呆のスクリーニング及び早期診断法の確立に関する臨床研究
課題番号
H16-痴呆・骨折-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院・医学系研究科精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 稔久(大阪大学大学院・医学系研究科精神医学講座)
  • 浦上 克哉(鳥取大学医学部保健学科生体制御学講座)
  • 千葉 茂(旭川医科大学医学部精神医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病の早期発見、早期治療のために生物学的診断マーカーの確立のために研究をおこなった。
研究方法
病態生理学的観点から、アミロイド産生に関わるガンマセクレターゼ活性、タウ蛋白の変化、糖化産物、および酸化ストレス産物の観点から研究をおこなった。ガンマセクレターゼ活性に関してはNotchシグナル伝達に伴うNotchの段階的蛋白分解によって産生されるNbetaの解析をおこなった。タウ蛋白に関しては、患者の脳脊髄液中の第1メチオニン切断化タウ蛋白の解析をおこない、それへの結合特性を有するXIAPの解析をおこなった。糖化産物に関しては、患者脳脊髄液中のWGA結合糖タンパクを解析した。酸化ストレス産物に関しては、尿や血清中で検出可能な酸化ストレスマーカーについて、健常対照群、軽度認知障害(MCI)群、アルツハイマー病(AD)群、および前頭側頭型認知症(FTD)群の4群を対象に検討した。
結果と考察
ガンマセクレターゼ活性に関してはNotchの段階的蛋白分解によって産生されるNbetaの主な分子種はNβ21と延長型Nbeta25であること、プレセニリンの病原性変異体やNSAIDなどの薬剤によりAβ42産生量が変化すると、Nbeta25産生量もそれと相関して変化することを明らかにした。タウ蛋白に関しては、アルツハイマー病患者の脳脊髄液中には第1メチオニン切断化タウ蛋白が多量に含まれていることが判明した。また、この切断化タウ蛋白に結合するXIAPの発現制御に関して検討をおこない、AβによってXIAPの発現が抑制され、リチウムおよびGSK-3阻害剤はXIAPの発現を亢進させることを見いだした。糖化産物に関しては、患者で有意に結合が低下している蛋白がトランスフェリンであることを同定し、蛋白量に変化はなく、糖鎖が減少していることが示唆された。酸化ストレス産物に関しては、血清CoQ10酸化率(ubiquinolに対するubiquinoneの比)およびserum total antioxidantstatus(STAS)は、MCI群とAD群で対照群に比べて有意に変化しており、これらの血清酸化ストレスマーカーのアルツハイマー病早期診断上の有用性が示唆された。

結論
ガンマセクレターゼ活性、タウ蛋白の修飾、糖化産物、および酸化ストレス産物は診断に有効である可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500359C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アルツハイマー病の生物学的診断マーカーの確立に関して研究をおこない、1)アミロイド産生に関わるγセクレターゼ活性変化をNotchシグナル伝達産物から検出する方法を確立し、2)タウ蛋白の酸化およびが病態へ関与し、その一部が神経細胞死に関わる機序を明らかにし、3)脳脊髄液中の糖化蛋白質の一部が特異的に糖化レベルが少ないことを見出し、4)尿中および血清中の酸化ストレス産物は増加していることを明らかにした。
臨床的観点からの成果
アルツハイマー病の生物学的診断マーカーの確立としては、他疾患との鑑別マーカーとしては脳脊髄液中のカルボニル化蛋白の増加、脳脊髄液中のトランスフェリンの糖化レベルの減少、尿中8-ヒドロキシデオキシグアニンの増加、血清CoQ10酸化率の増加が、鑑別に有効であることが明らかになった。また血清CoQ10酸化率の増加とSerum Total Antioxidant Status (STAS)の低下はMCIにおいても認められ、病前のマーカーとなる可能性が示唆され、予防に役立つ可能性が示された。
ガイドライン等の開発
アルツハイマー病診断ガイドラインに関しては、生物学的マーカーの重要性が従来から唱えられ、脳脊髄液中アミロイドβ1-42の減少、脳脊髄液中全タウ蛋白の増加、脳脊髄液中リン酸化タウ蛋白の増加などがコンセンサスを得ているが、単独での診断が難しく、また早期診断マーカーも明らかではなかった。このような状況を補完するために、前述のように診断マーカーの開発をおこない、他疾患との鑑別および早期診断に有効なマーカーを提起した。
その他行政的観点からの成果
ここまでの研究を応用し、MCI(軽度認知機能障害)からアルツハイマー病にいたる群の鑑別法を確立することと、地域社会におけるMCIレベルの人々への疾患への喚起と早期医療的介入を実践するため、地域診療機関での連携を現在試行しており、早期診断から早期介入へのプランニングを検討している。発症前から地域での連携したフォローが確立できれば、今後の高齢者の認知機能のケアに関して、アルツハイマー病予防に関して行政的アプローチのプロトタイプが提言できると考えられる。
その他のインパクト
特許:セル・フリー・Notch切断分析方法および薬剤スクリーニング方法、大河内正康、武田雅俊、大阪TLO国際出願、PCT/JP2004/16685 2004/11/10提出
啓発活動:中之島センター「大阪大学こころの保健室」公開市民講座「高齢化社会の現状
と認知症(4回連続講演)」005/5/6、2005/5/13、2005/5/20、2005/5/27、「認知症の理解(4回連続講演)」2005/11/4、2005/11/11、2005/11/18、2005/11/25

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
18件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
41件
学会発表(国際学会等)
19件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
8件
(「大阪大学こころの保健室」 http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/psy/www/kokoro/kokoro.htm

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-