文献情報
文献番号
200500358A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療的手法による、脳血管性痴呆症および虚血性脳血管障害に対する早期診断および予防法の確立に関する研究
課題番号
H16-痴呆・骨折-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田口 明彦(国立循環器病センター研究所循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
- 成冨 博章(国立循環器病センター脳血管内科)
- 長束 一行(国立循環器病センター脳血管内科)
- 福永 隆三(星ヶ丘厚生年金病院脳血管内科)
- 松山 知弘(兵庫医科大学医学部)
- 相馬 俊裕(国立病院機構大阪南医療センター臨床検査科)
- 岡本 昌也(国立病院機構大阪南医療センター循環器科)
- 北川 一夫(大阪大学大学院医学研究科)
- 丸山 彰一(名古屋大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究【痴呆・骨折臨床研究(若手医師・協力者活用に要する研究を含む)】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
14,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
従来の治療法では対処できなかった難治性の虚血性心疾患や末梢動脈閉塞症に対しては、まったく新しい手法である再生医療学的手法を用いた治療法の臨床応用が既に開始され、その治療的効果も明らかにされており、脳血管障害や脳血管性痴呆症など他の難治性の虚血性疾患に対する適応の拡大も示唆されている。本研究では血管血球系幹細胞が属する細胞分画であるCD34陽性細胞やCD 133陽性細胞の減少と、脳循環動態の悪化や脳梗塞の増加あるいは脳神経機能の低下や、認知症および循環器疾患の発症との関連を明らかにすることを目的としている。
研究方法
末梢血中血管血球系幹細胞と患者予後に関する断面研究および経時的コホート研究にむけて、認知症患者、脳血管障害患者および代謝異常など循環器系疾患ハイリスク患者を中心に、インフォームドコンセントに基づき前年度と合わせて合計約1000名のエントリーを行った。
結果と考察
脳梗塞患者における末梢血中血管系幹細胞と脳循環病態に関する断面的検討においては、前年度に我々が明らかにした、末梢血中血管血球系幹細胞の定量的評価と画像診断との関連だけではなく、末梢血中血管血球系幹細胞の減少が、①Barthel Indexやmodified Rankin Scale、NIHSSなど脳梗塞による機能障害の程度とは相関を示さないものの、②MMSEにより評価された認知機能の低下や、③Clinical Dementia Ratingによる痴呆評価との相関を見出した。さらに、糖尿病患者などでは、末梢血中血管血球系幹細胞の減少が腎機能障害の進行と関連していること、および透析患者などにおいては末梢血中血管血球系幹細胞の減少と循環器疾患の発症が相関していることなどを明らかにした。
結論
末梢血中の血管血球系幹細胞を増加させる治療法の開発に向け、臍帯血中幹細胞の移植、内因性幹細胞の動員、in vitroでの幹細胞増殖培養等様々な研究が非常に多くの施設で行われており、近い将来に臨床応用されると考えられている。それらの医療技術を虚血性脳血管障害の分野に応用するためにも、本研究は非常に重要な基盤研究となると考えている。本研究はこれらの成果を通じて我が国の要介護者の大幅な減少をもたらすことが可能であり、高齢者が健康で自立して生活する、活力のある社会を保ち続けることに大きく貢献することができると考えている。
公開日・更新日
公開日
2006-04-29
更新日
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