子ども虐待・ネグレクトリスクマネージメントモデルの作成に関する研究

文献情報

文献番号
199700033A
報告書区分
総括
研究課題名
子ども虐待・ネグレクトリスクマネージメントモデルの作成に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 重宏(駒澤大学)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤純(日本ルーテル学院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生行政科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国連の子どもの権利に関する条約第19条に子ども虐待・ネグレクトからの保護が明記されて以降、民間団体の子どもの権利擁護活動や児童相談所等の子ども虐待・ネグレクトへの積極的な介入が行われてきている。
また、厚生省は平成8年度予算で『子ども虐待防止の手引き』を作成し、4月以降子ども虐待・ネグレクトを発見する立場の人々に配布を予定している。このことにより、児童相談所には、今後子ども虐待・ネグレクトに関する発見者からの通報が増大することが予想される。これらの通報に対して児童相談所が適切な対応を迅速に行うためには、その全国を統一した判断基準の作成が緊急の課題となっている。
本研究『子ども虐待・ネグレクト・リスク・マネージメント・モデルの作成に関する研究』によりリスク・マネージメント・モデルが作成され、研修等を通してすべての児童福祉司に理解され、活用されるとで、子どもの権利擁護サービスをより発展させることが可能となる。なお,本研究は3年計画の2年度の事業である。
研究方法
研究班(ソーシャルワーク、心理学、児童精神医学、弁護士、児童相談所児童福祉司等で構成)を設置し研究を実施した。
初年度は、本研究事業をすすめるにあたって分担研究者および研究協力者と定期的な会合を持ち、資料の収集、翻訳、モデルの研究協議を行った。
研究班のメンバーは、?橋重宏、加藤純、庄司順一(日本子ども家庭総合研究所)、青葉紘宇(東京都児童福祉司)、田中島晁子(東京都児童福祉司)、渋谷昌史(上智社会福祉専門学校)、中谷茂一(東海大学)、鈴木力(東京育成園)、谷口和加子(日本子ども家庭総合研究所)、呉栽喜(東京大学大学院)、荒川裕子(日本子ども家庭総合研究所)、阿部優美子(日本子ども家庭総合研究所)、平本譲(駒澤大学大学院)、萩原絹代(フリーライター)、山本真実(日本子ども家庭総合研究所)、森茂樹(日本子ども家庭総合研究所)オブザーバーとして、才村 純(厚生省児童福祉専門官)、森 望(厚生省児童福祉専門官)の指導を得た。
結果と考察
子ども虐待・ネグレクトにかかわる児童相談所への通報件数が増大しつつある。だが、全国174カ所ある児童相談所の対応は、必ずしも標準化されてはいない。子ども虐待・ネグレクトを予防する民間団体からも多様な問題が指摘されている。
本研究は、オーストラリアの児童相談所で開発されたA Child Risk Management Modelの?翻訳と検討?数カ所の児童相談所でのパイロットスタディ、?日本版の作成と検討、?日本版の完成を3年間で実施するものである。これらの『子ども虐待・ネグレクトリスクマネージメントモデル』が作成されれば、全国174カ所の児童相談所が同じガイドラインでアセスメントをすることになり、子どもの権利擁護活動も全国的に均一化させることが可能となる。
初年度は、本研究事業をすすめるにあたって分担研究者および研究協力者と定期的な会合を持ち、資料の収集、翻訳、モデルの検討を行った。
具体的にはA Child Risk Management Model(オーストラリア)の翻訳と検討(分担研究者・加藤 純氏)、さらに、新たに入手したカナダ国ブリテッシュコロンビア州政府子ども家庭省が作成したThe Risk Assessment Model for Child Protection in British Columbiaの翻訳と検討(主任研究者・?橋重宏)を行った。
両リスク・アセスメントの翻訳をもとに、異職種の専門家で構成した研究会を定期的に開催し、研究協議をもとに、本報告をまとめた。
報告は、?.リスク・マネージメント・モデルの必要性(加藤 純)、?.オ―ストラリア・ビクトリア州における子ども虐待・ネグレクト・リスク・マネージメント・モデル(加藤 純)、?.ブリテッシュコロンビア州(カナダ国)のリスク・アセスメント・モデル(?橋重宏、庄司順一、渋谷昌史、谷口和加子、呉栽喜、荒川裕子、阿部優美子)、?.考察と提言(田中島晁子、青葉紘宇、鈴木力、荒川裕子、阿部優美子)により構成されている。
研究の結果、両リスク・マネージメントともに、文化・社会・経済的な背景が異なる国において作成されたものではあるが、日本版のリスク・アセスメント・モデルを作成する上で、基本的なフレームワークが理解できたこと、さらに、多様な示唆を受けたことがある。2つのモデルを比較すると、?A Child Risk Management Model(オーストラリア)は、簡潔ではあるが、ソーシャルワーカーの専門性(力量)が担保されないと使用できないこと、?The Risk Assessment Model for Child Protection in British Columbiaは、詳細なアセスメントのための指標が整理されており、初心者にとっては大変示唆的なモデルであるが、アセスメントに時間がかかるのはとの疑念がある。
両モデルともに、子ども虐待・ネグレクトにより子どもが死亡した事件について、その原因・背景を精査し、作成した点が共通している。日本においても、児童相談所がかかわりながら子ども虐待・ネグレクトを主因に子どもが死亡したケースの研究が必要となろう。
結論
A Child Risk Management Model(オーストラリア)とThe Risk Assessment Model for Child Protection(ブリテッシュコロンビア・カナダ)の知見をもとに、次年度では、The Risk Assessment Model for Child Protection in Ontario,1997の翻訳、研究協議、さらに、日本の児童相談所における子ども虐待・ネグレクトへの取り組みを総合し、日本での実践に役立つ、日本版子ども保護のためのリスク・アセスメント・モデルを作成したい。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)