男性ホルモン低下に起因する老年病の治療戦略とその機序に関する総合研究

文献情報

文献番号
200500351A
報告書区分
総括
研究課題名
男性ホルモン低下に起因する老年病の治療戦略とその機序に関する総合研究
課題番号
H17-長寿-046
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
秋下 雅弘(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学)
研究分担者(所属機関)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部 高齢医学)
  • 柳瀬 敏彦(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科)
  • 堀江 重郎(帝京大学医学部 泌尿器科学)
  • 熊野 宏昭(東京大学大学院医学系研究科 ストレス防御・心身医学)
  • 若槻 明彦(愛知医科大学 産婦人科学)
  • 近藤 宇史(長崎大学医歯薬総合大学院 分子情報制御)
  • 山田 思鶴(老人保健施設まほろばの郷)
  • 寺本 信嗣(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
19,340,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老年病の発症・進展におけるアンドロゲン低下の意義とその治療法について検討することを目的とする。
研究方法
1)アンドロゲン低下と老年病との関連を検討する横断観察研究、2)アンドロゲン補充療法および代替療法の効果を検討する介入研究、3)アンドロゲンの作用機序に関する基礎研究を実施した。
結果と考察
1)健常中高年男性では、DHEA-S濃度が糖脂質代謝指標と関連した。閉経後女性の高脂血症はアンドロゲン濃度と関連しなかった。男性生活習慣病患者では血管内皮機能とテストステロン濃度が独立した関連を示した。男性更年期およびうつ病患者では疾患指標と血中アンドロゲン濃度は関連しなかったが、うつ病患者の唾液中テストステロン濃度は症状スコアと関連した。男性認知症患者ではテストステロン濃度が認知機能と正の相関を示した。地域在住超高齢女性では、DHEA-S濃度が認知機能と関連した。要介護高齢者では、男性のテストステロンが日常生活機能全般と、男性のDHEA-Sが認知機能と、女性のDHEA-Sが基本的ADLと関連した。以上から、アンドロゲン濃度がより低値で、疾患や機能低下が進行した状態ほど両者の関連が明確になる可能性が示唆された。2)虚弱高齢男性に対するテストステロン補充療法により、中間解析で、認知機能の有意な改善を認めた。虚弱高齢女性に対するDHEA補充療法により、対照群に比し認知機能が有意に改善した。地域在住高齢女性に対する運動療法により、認知機能の改善とテストステロン、DHEA-S濃度の増加を認めた。以上、まだ少数例であるが、アンドロゲン補充療法、代替療法とも一定の有効性と安全性が確認できた。3)アンドロゲン受容体欠損マウスは肥満を呈し、その原因は活動量と脂肪分解の低下に由来した。培養平滑筋細胞を用いた血管石灰化モデルにおいて、テストステロンはアンドロゲン受容体を介して血管石灰化を抑制した。DHEAは、酸化生成物と細胞死の抑制、抗酸化物質グルタレドキシンの発現誘導と生存因子Akt活性の増加など心筋細胞における酸化ストレス応答性を抑制した。これらの結果から、概してアンドロゲンは老化や老年病に対して抑制的な作用を有することが示唆された。
結論
老年病の発症・進展にアンドロゲン低下が深く関係していると考えられ、今後研究を継続していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-