ソマトポーズに対するグレリンの臨床応用と基盤的研究

文献情報

文献番号
200500338A
報告書区分
総括
研究課題名
ソマトポーズに対するグレリンの臨床応用と基盤的研究
課題番号
H17-長寿-028
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
寒川 賢治(国立循環器病センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 一和(京都大学大学院医学研究科)
  • 千原 和夫(神戸大学大学院医学研究科)
  • 芝崎 保(日本医科大学)
  • 村上 昇(宮崎大学農学部)
  • 中里 雅光(宮崎大学医学部)
  • 赤水 尚史(京都大学医学部付属病院)
  • 児島 将康(久留米大学分子生命科学研究所)
  • 大津留 晶(長崎大学医学部歯学部付属病院)
  • 永谷 憲歳(国立循環器病センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成長ホルモン(GH)の分泌低下は、ソマトポーズとよばれ、老化現象として知られる筋肉と骨量の低下および内臓脂肪蓄積型肥満などをもたらす。主任研究者らが発見したグレリンは、GH分泌促進作用に加え、摂食亢進、エネルギー代謝調節ならびに循環器系の調節にも作用する。本年度は、これまでの基礎研究を基盤にして、グレリンの新たな生理機能の解明と実質的な臨床応用を目指した以下のような広範な検討を行った。
研究方法
1)心筋梗塞ラットにおける左室リモデリング抑制に対するグレリンの効果
2)膵臓におけるグレリン過剰発現トランスジェニックマウスの開発と解析
3)遺伝子変異モデルを用いたグレリンの生理機能
4)グレリンとその受容体作動薬の筋萎縮抑制効果の評価
5)ラット胎児の皮膚と脊髄細胞増殖の促進作用
6)グレリンの末梢投与による情報伝達系の解明
7)消化器疾患の病態におけるグレリンの病態生理学的意義
8)グレリン投与によるCOPDの治療と臨床第II相試験の開始
結果と考察
グレリンが心筋梗塞後早期の左室リモデリングを抑制することから、抗左室リモデリング薬としての有用性を示した。グレリン過剰発現トランスジェニックマウスの解析から、デスアシルグレリンが糖代謝に影響することを明らかにした。筋細胞株において、グレリンはAtrogin-1、MuRF1発現を抑制し、筋萎縮抑制効果が期待できると考えた。母親由来のグレリンとデスアシルグレリンが胎児へ移行し、胎児の細胞の分化増殖に重要であると推測した。健常高齢者において、グレリンが加齢に伴うGH/IGF-1系の調節や血圧、排便回数の変化に影響を与えることを示した。また、グレリンの末梢投与による摂食亢進にノルアドレナリンが関与していることを明らかにするとともに、胃切除術患者にグレリンの補充をすることによる、食欲の改善や体重減少の改善効果の臨床試験を開始した。一方、グレリン投与によるCOPD患者の運動耐容能の改善について、多施設二重盲検比較試験を開始し、安全性、有効性の検証を進めている。高齢者を対象とした臨床第II相試験「人工股関節置換術の周術期を対象としたグレリンの投与試験」を開始した。
結論
グレリンの新たな生理作用やソマトポーズ治療に対する有効性を明らかにした。さらにグレリンによる複数の臨床試験を開始し、治療薬としての臨床応用へ展開することができた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-