政府管掌健康保険における都道府県別、疾病別医療費の分析に関する研究

文献情報

文献番号
199700031A
報告書区分
総括
研究課題名
政府管掌健康保険における都道府県別、疾病別医療費の分析に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
鎌形 健三(社会保険診療報酬支払基金)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生行政科学研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療保険においては、医療費適正化を目的として、被保険者に対して、検診や、疾病予防のための健康教育及び広報等の保健事業が実施されている。保健事業の効果的、効率的運営のためには、疾病別医療費の水準を県間及び疾病間で比較し、医療費の高い県及び各県で医療費が高い疾病に対して、重点的に事業を行うことが考えられる。このために、各疾病分類毎に年齢構成の影響を除去した医療費の水準を表す地域差指数を算出し、県別、疾病分類別に医療費の水準の比較を行う。
さらに、この指標と、医療費に影響を与えると考えられる諸要素との関係を観察して、医療費適正化のための施策立案、保健事業運営のための基礎資料を得ることを目的とする。
研究方法
? 各県において、年齢階級別加入者数は変化せずに、疾病分類別、年齢階級別1人当たり診療費及び受診率が、全国値と等しくなったとした場合の、診療費及び診療件数を算出し、これを基準診療費及び基準受診件数として設定した。各県の疾病分類別診療費及び受診件数の実績値をこれで除することにより、疾病分類別診療費、診療件数の水準を表す地域差指数を算出した。基礎数値は、医療給付受給者状況調査の結果を使用した。同調査は、政府管掌健康保険加入者の平成8年4月診療分診療報酬明細書を調査対象とする標本調査である。
? ?の地域差指数と、医療の供給面からは、医療施設数、病床数、医師数等、需要面からは有訴者率等の、医療費に影響を与えると考えられる要素との相関関係を観察した。なお、当研究で用いている計数は、上記のように標本調査の結果を基にした推計によって得られたものであり、常に誤差を含んでいることから、個別に県の状況を把握することよりも、全体的な傾向を把握することを主眼としている。また、同調査は、平成8年4月単月の調査であるため、当年のみの特別な変動や季節的要因の影響もあり得ることに注意する必要がある。
結果と考察
1.地域差指数の分布
医科・歯科計の県別地域差指数については、西日本は東日本と比較して高い傾向がみられた。
疾病分類別にみると、「感染症及び寄生虫症」、「耳及び乳様突起の疾患」、「消化器系の疾患」、「肝疾患」(「消化器系の疾患」の再掲)、「筋骨格系及び結合組織の疾患」、「損傷,中毒及びその他の外因の影響」については、西日本のほうが高い傾向がみられた。
一方、「妊娠,分娩及び産じょく」では、北海道、東北地方の県で高い傾向がみられた。
なお、当研究結果の、政府管掌健康保険における県別地域差指数の順位は、国民健康保険のものと異なるが、その原因として、当研究で捉えている政管健保の県別医療費は、各県に勤務する被保険者及びその被扶養者に係る医療費であるため、県外居住者の医療費も多く含まれているが、国保の県別医療費は、主に各県の居住者に係る医療費であると考えられることの他、被保険者の特性の違い等が考えられる。
2.診療費の地域差指数と県の諸指標の相関関係
?人口10万人当たり医療施設数
医科計及び「筋骨格系及び結合組織の疾患」等、種々の疾病分類の地域差指数と、人口10万人当たり一般病院数の間に正の相関がみられた。
?人口10万人当たり病床数
医科入院計及び入院における種々の疾病分類の地域差指数と、人口10万人当たり一般病床数(又は精神病床数)の間に正の相関がみられた。
特に、「精神及び行動の障害」(精神病床数との間)、「神経系の疾患」、「循環器系の疾患」、「脳血管疾患」(「循環器系の疾患」の再掲)、「筋骨格系及び結合組織の疾患」で、他の疾病分類と比較して相関が強くなっているのがみられた。これらの疾病分類においては、入院件数の地域差指数との相関も強くなっているのがみられた。
?人口10万人当たり医師数(医療施設従事医師数)
医科計及び種々の疾病分類の地域差指数と、人口10万人当たり医師数、また、歯科の地域差指数と、歯科医師数の間に正の相関がみられた。
3.地域差指数が上位・下位5位以内の県と、県の諸指標の関係
地域差指数が上位5位以内の県については、地域差指数と正の相関がみられた人口10万人当たり病院数、病床数、医師数等の、医療供給側の指標で順位が高い傾向がみられ、逆に、下位5位以内の県については、これらの指標で順位が低い傾向がみられた。ただし、一部には、地域差指数の順位が、医療供給側の指標の順位と離れている県もみられたことから、他に地域差指数と相関関係がある要素の存在が考えられるが、当研究ではそのような指標を特定できなかった。
結論
人口10万人当たり医療施設数、病床数が多い県においては、地域差指数が高い傾向がみられた。しかし、地域差指数は、それらの指標のみによって予測することは不可能であり、他に地域差指数と相関関係がある要素の存在が考えられる。
このことから、医療費適正化を目的として、地域毎に疾病予防策を講じる際の基礎資料を得るためには、医療保険加入者を対象として、日常生活に関する要素等と、医療給付状況の関係について、さらに精密な調査、分析を行うことが望まれる。

公開日・更新日

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