生体内酸化ストレスによる老年性疾患の発症機構の解明と予防

文献情報

文献番号
200500325A
報告書区分
総括
研究課題名
生体内酸化ストレスによる老年性疾患の発症機構の解明と予防
課題番号
H17-長寿-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
石井 直明(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
19,740,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老化や疾患の原因として最も注目されるのが酸化ストレスであり、その主な発生源が細胞小器官ミトコンドリアの電子伝達系であることが知られている。しかし、電子伝達系から酸化ストレスを任意に発生させる手段が存在しないために、外部から過剰な酸化ストレスを負荷するような、正常な生体環境ではありえない条件下で実験がおこなわれている。我々の研究から、ミトコンドリア電子伝達系複合体IIのサブユニットであるSDHCの遺伝子変異がミトコンドリアから自然な状態で、活性酸素を過剰に産生することを見出している。そこで生体内酸化ストレスを原因とする老化や老人性疾患の解明と予防を目指して、SDHCの変異遺伝子を導入した遺伝子組換えマウスを構築した。
研究方法
1.変異型遺伝子組換えマウスの作成と表現形
変異型のSDHCのPCR産物を発現ベクターに挿入した遺伝子組換えマウスを作製した。このマウスに対して、外形、成長率、電顕像、行動、ミトコンドリアからの活性酸素発生量、電子伝達系酵素活性を調べた。
2.条件付変異遺伝子組換えマウス
 変異SDHCを導入した常時発現型のマウスが不妊であったことから、テトラサイクリンの転写活性/抑制による遺伝子発現の調節原理を利用した条件付変異遺伝子組換えマウスを作製した。本研究では、転写活性よりも抑制効果を強くし、完全な抑制制御が可能な系を新たに開発した。

結果と考察
変異SDHCを導入した常時発現型のマウスは、ミトコンドリアから活性酸素を過剰に産生し、野生型動物と比較して、成熟期以降に体重の減少を示し、視覚異常、筋肉異常、及び情動行動異常など早老症を示唆する表現形が確認された。これらの結果は、ミトコンドリア由来の活性酸素が、老化や各種疾患に関与していることを示すものであり、この遺伝子組換えマウスが生体内酸化ストレスを原因とする老化や老人性疾患のモデル動物として有用であることが示唆された。このマウスが不妊であったことから、テトラサイクリンの転写活性/抑制による遺伝子発現の調節原理を利用した条件付変異遺伝子組換えマウスが有用と考える。
結論
SDHC変異遺伝子組換えマウスは、ミトコンドリアから自然な状態で活性酸素を過剰に産生し、早老症の兆候を示すので、生体内酸化ストレスを原因とする老化やあらゆる老人性疾患のメカニズムの解明と予防に貢献することが可能となる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-06
更新日
-