老年期痴呆症における痴呆病態の基盤の解明

文献情報

文献番号
200500324A
報告書区分
総括
研究課題名
老年期痴呆症における痴呆病態の基盤の解明
課題番号
H17-長寿-005
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
木下 彩栄(京都大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 植村 健吾(京都大学医学研究科先端領域融合医学研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 アルツハイマー病の病態解明は、高齢者社会に突入した本邦において極めて重大な医学的、社会的課題となっている。アルツハイマー病の原因遺伝子であるプレセニリン(PS1)の機能に関しては、解明がすすみ、老人斑の蓄積に大きくかかわってきていることが知られてきたが、記憶障害の病態の基盤となる海馬のシナプスの脱落や神経細胞死の原因との関係においては、いまだに明らかになっていない。しかしながら、PSの機能喪失が成体でシナプスの脱落や神経変性に関わっていることが近年になって示され、 アルツハイマー病の病態に関わっている可能性が指摘され始めている。本課題では、PS1の基質の一つであり、記憶現象の基盤をなすlong term potentiation (LTP)に必須であるN-カドヘリンが、PS1による切断を介してシナプスの維持・可塑性に果たす役割を、in vitroにおいて解明してきた。当該年度においては、新たなシナプス制御に変異をもつノックインマウスを作成し、シナプス変性をきたすような新しいADのモデルマウスを確立することにより、病態の解明や治療の開発に役立てる。
研究方法
遺伝子工学を用いて、シナプス蛋白であるN-cadherinにPS1で切断を受けない変異を導入し、これをベクターに組み込み、ES細胞に導入する。さらにこれをスクリーニングして、陽性のクローンからキメラマウスを作成し、ノックインマウスのF1を作成する。このノックインマウスを解析し、PS1のシナプス蛋白への制御を解明し、さらに、シナプス脱落といった病態の解明につなげる。
結果と考察
上記によって行われた遺伝子改変マウスは現在陽性のクローンをいくつか得ることができ、現在キメラマウスを作成中である。
これにより、分担研究者がin vitroで見いだしたPS1のシナプス蛋白の制御がin vivoでも同様なメカニズムが働いているかを検証する意義は大きい。さらに、このPS1の機能障害がアルツハイマー病にどのように関わっているかを調べることにより、病態の解明を目指すことが可能になると期待される。
結論
上記のように、1年目としては十分な結果をだすことができた。モデルマウスが完成すれば、病理学的、行動学的、生化学的、生理学的に変化を解析し、PS1がシナプス蛋白の制御に果たす生理的な役割や、その病的意義を確立することができると期待される。

公開日・更新日

公開日
2006-06-05
更新日
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