生体の持つストレス応答機能を利用した老化制御、予防研究

文献情報

文献番号
200500302A
報告書区分
総括
研究課題名
生体の持つストレス応答機能を利用した老化制御、予防研究
課題番号
H16-長寿-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
磯部 健一(名古屋大学大学院医学系研究科分子総合医学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 祖父江元(名古屋大学大学院医学研究科 神経内科)
  • 長谷川忠男(名古屋市立大学大学院医学研究科 感染防御・制御学分野)
  • 高橋雅英(名古屋大学大学院医学研究科、病理)
  • 木内 一壽(岐阜大学工学部 生命工学科 生命情報工学講座1)
  • 林 登志雄(名古屋大学 医学部、付属病院、老年科)
  • 丸山光生(国立長寿医療センター、老化機構)
  • 長瀬文彦(名古屋大学医学部保健学科検査技術科学専攻)
  • 赤津裕康(医療法人さわらび会福祉村病院長寿医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,030,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急速な高齢化に伴い、高齢者がいかに活動的な生活をおくれるかは差し迫った課題である。私達は老化のメカニズムの基礎的研究を通し、生体は老化を防御する仕組みをあらかじめ持っていることを明らかにして来た。一方人の老化によって発生する様々な疾患を考える時、老化によって現れる成分に対して生体防御系が反応して病気の形成に関与することが知られてきた。酸化LDLに対するマクロファージさらに獲得免疫系の関与はよく知られているが、アルツハイマー、ポリグルタミン病、パーキンソン病は異常蛋白、凝集体として蓄積したものに対する免疫反応が病態に関与する可能性がある。本研究の進展につれ、生体応答が防御に働くものと、病態形成に働くものがあることが次第に明らかになってきた
研究方法
人の老化、老化様疾患のモデルとして同じ哺乳類であり、遺伝的背景がしっかりと確立しているマウスを使用した。マウスには遺伝子を導入したり、特定の遺伝子をノックアウトして使用した。マウス、あるいは人の細胞株をin vitroで培養して実験に供した。また、神経細胞、グリア細胞をマウスより分離培養した。 免疫系細胞をマウス骨髄、脾臓より分離し培養した。細胞抽出液のウエスタン解析で、シグナル伝達系を検索した。また、RNAを取り出し、RT-PCRを行った。また、網羅的解析のため、刺激前後のサンプルで、マイクロアレイを行った。
結果と考察
本研究の進展につれ、生体応答が防御に働くものと、病態形成に働くものがあることが次第に明らかになってきた。こういった観点から本年度は様々な研究が進展した。特に、老化によって発現が上昇するAb1-42はマクロファージ系ケモカインを産生し、炎症と貪食に関与すること、ミクログリアがアルツハイマー病の病態に大きく関与する可能性を示した。活性酸素と同様に一酸化窒素(NO)が動脈硬化の初期病変に関与することを示した。また、HSP70あるいはHSP90がCAGリピート病の病態進行を遅らせることを明らかにした。
結論
老化促進ストレス刺激により生体の蛋白をはじめとする様々な変異分子に対し、生体が反応する仕組みを明らかにするため、この研究班を立ち上げた。本年度は実際の老年疾患において、こういった考え方で研究を進めた。その結果アルツハイマー病にはミクログリアが活性化されケモカイン、サイトカインを放出することで脳の局所的炎症を引き起こすこと、動脈硬化にマクロファージ系の関与が推測されているが、NOがその病態に大きく関与すること、CAG リピート病にシャペロンが関与し、その阻害剤が有効であること等を見いだした。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
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