伊万里市黒川町における老化に関する長期縦断疫学研究

文献情報

文献番号
200500300A
報告書区分
総括
研究課題名
伊万里市黒川町における老化に関する長期縦断疫学研究
課題番号
H16-長寿-002
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
山田 茂人(佐賀大学医学部精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
伊万里市黒川町では15年前より認知症予防事業が開始された。その概要は65歳以上の高齢者に頭部MRI 撮像とMMSEを施行し、前認知症段階のスクリーニングを行うとともに、健康に関する啓蒙活動を介して地域のコミュニケーションの充実をはかり、高齢化社会に対処するものである。我々もこの事業に参加し、前方視的に一般高齢者の老化の実態を調査して、認知症の早期診断と早期介入の方法とこれらの住民活動の有効性を評価することを目標としている。
研究方法
1、10年前にMRIを撮像した高齢者のMRI画像の経時変化と、知的機能の変化の関連を調べた。脳MRI画像の変化の指標にはJobstらの方法(1994)を用いた。側脳室下角幅の最大値(TW)と頭蓋横径を頭蓋横幅(CW)からTW/CW比を算出し萎縮の程度を検討した。また今回のMMSE得点から前回の得点を減じた値を認知機能の変化とした。今回はMMSEのほか時計描画テスト、前頭葉機能検査、Beckうつ病評価尺度を調べた。2、知的機能検査(MMSE,FAB,CDT,CDR)及びノルアドレナリン代謝産物である唾液中MHPG濃度の関連を調べた。
結果と考察
1,知的機能検査のMMSE得点は初回(Time A)に比べ今回(Time B)は平均1.1点の減少が認められたが有意ではなかった。Time AのTW/CWとMMSE得点には相関はなかった。Time BのTW/CWとMMSEの間に負の相関(P=.016) 及びTW/CWと BDI得点との間に正の相関(r=.375, P=.007)が認められた。また海馬萎縮度はMMSEの経時変化と正の相関が認められた(P=.003)。2、女性のMMSE得点とMHPG濃度に有意な負の相関(P=0.0108)が認められた。MMSE得点を24/25をカットオフポイントとして正常群と認知障害群に分けると、正常群のMHPGの平均は14.0ng/mlであり認知症群(21.2ng/ml)が有意に高値を示した(P=.0006)。
結論
1、海馬萎縮度はMMSEの経時変化と正の相関があり、左側脳室下角幅はMMSEで抽出される知的機能低下を反映していると思われる。
2、Time A のTW/CWと当時のMMSE得点には相関は認められず、10年後のTime B のTW/CWとMMSEの間に相関が認められたことは、被験者が70歳代の初回の測定から10年を経過するうちに脳の萎縮が進み80歳代になって知的機能の低下が顕在化したものと思われる。
3、唾液中MHPGの測定は認知症スクリーニングの指標になる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-09-27
更新日
-