高齢者の終末期ケアの医療と福祉の分担と連携に関する研究

文献情報

文献番号
200500294A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の終末期ケアの医療と福祉の分担と連携に関する研究
課題番号
H16-長寿-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
勝又 義直(名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻社会生命科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 久幸(国立長寿医療センター内科)
  • 中島 一光(国立長寿医療センター呼吸器科)
  • 武田 章敬(国立長寿医療センター)
  • 山本 楯(山本医院)
  • 南 美知子(金沢医療センター付属金沢看護学校)
  • 井上 豊子(介護老人保健施設ルミナス大府看護・介護部)
  • 丸口 ミサエ(国立看護大学校成人看護終末期看護担当)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の終末期ケアでは自らの意思を表明できないことが多く、人工呼吸器を装着するなどの救命処置を行うかどうかや中止することの是非の判断などで医療現場の苦悩は深い。また、在宅や介護施設では、終末期は病院へ搬送されて死を迎える例が少なくない。本研究では、日本における終末期の実態を踏まえ、適切な終末期医療のあり方と、医療と福祉の連携を図っていく方策を検討することを目的としている。
研究方法
本研究では、平成16年度に続き、地域の基幹病院における入院患者と救急外来患者での死亡例について個々の診療録を丹念に調査した。また、地域の介護施設について終末期ケアの実態や終末期についての調査を実施した。さらに、判断能力のある時期に事前指示書を作成できるよう、事前指示書書式と記入の説明文書を作成した。また、各州で自然死法が定められている米国で、終末期の医療と福祉についての現地調査を実施した。

結果と考察
地域介護施設における終末期の調査では、欧米と異なり、多くが病院に送られ死を迎える実態が明らかとなった。日本でも福祉と医療の適切な連携と分担を工夫していく必要がある。地域基幹病院における調査では、安定な状態から急激に終末期を迎える病態も少なくなく、早い段階から事前指示書の作成支援などを積極的に行う必要があると考えられた。そこで、事前指示書と説明文書のモデルが作成された。その中では、終末期に意思を表明できなくなったときに自分に代わって判断する「医療代理人」を指定する項も加えた。ただ、事前指示書は万能ではないので、事前指示書について常に話し合うなど意識の強化・確認を継続的に行う工夫が必要と考えられる。なお、法的な整備が無い日本の状況では、人工呼吸器を止めれば殺人とみなされる危険がないわけではない。まして「事前指示」がない状況での医療継続の中止は注意を要する。終末期の医療については、今後の更なる研究が必要と考えられる。
結論
地域介護施設における調査では、欧米と異なり、多くが病院に送られ死を迎えていた。日本でも福祉と医療の適切な連携と分担を工夫していく必要がある。また、病院では急激に終末期を迎える病態も多く、早い段階での事前指示書の作成支援が有効と考えられ、事前指示書と説明文書のモデルが作成された。ただ、現在の日本では、医療継続の中止は殺人と疑われる危険性があり、終末期の医療については、今後の更なる研究が必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200500294B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の終末期ケアの医療と福祉の分担と連携に関する研究
課題番号
H16-長寿-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
勝又 義直(名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻社会生命科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 久幸(国立長寿医療センター内科)
  • 中島 一光(国立長寿医療センター呼吸器科)
  • 武田 章敬(国立長寿医療センター痴呆神経内科)
  • 山本 楯(山本医院)
  • 南 美知子(金沢医療センター附属金沢看護学校)
  • 井上 豊子(介護老人保健施設ルミナス大府看護・介護部)
  • 丸口 ミサエ(国立看護大学校成人看護学終末期看護担当)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の終末期ケアでは、人工呼吸器など、生命維持を中止ないしレベルダウンすることの是非などについて患者本人の意思が不明な例がほとんどであり、医療現場や介護現場の苦悩は深い。また、介護施設では、終末期ケアまでは行わない例が多い。本研究では、このような日本における終末期の実態を実証的に調査し、それを踏まえて、適切な終末期医療のあり方と、医療と福祉の連携を図っていく方策を検討することを目的としている。
研究方法
本研究では、地域基幹病院における入院患者と救急外来患者での死亡例について、個々の診療録から症例ごとに時系列で医療判断を丹念に記録した。また、地域介護施設について終末期ケアのアンケート調査を実施した。さらに、ドイツ、オランダ、米国において終末期における医療と福祉についての現地調査を実施した。そして、これまでの検討に基づき、事前指示書書式と解説書のモデルを作成した。
結果と考察
地域介護施設の調査では、欧米とは異なり、終末期になると、多くの症例は病院に送られ死を迎えていた。高齢化が進む日本においては、福祉と医療の適切な連携と分担を工夫していく必要がある。地域基幹病院における調査では、事前指示のある例はまれであること、安定した状態から突如終末期となるような例が多いことなどが確認されたので、早い段階から事前指示書の作成支援など患者・家族のサポートが必要であると考えられた。そのため、試験的に事前指示書書式と説明文書を作成した。その中では、終末期に自分に代わって判断する「医療代理人」を選定する項を加えた。ただ、事前指示書は万能ではないので、事前指示書をもとに意識の強化・確認を継続的に行う工夫が必要と考えられる。なお、法的な整備がない日本の状況では、救命措置を止めれば殺人とみなされる危険がある。今後、終末期医療の法的な位置づけに踏み込んだ検討を進めていく必要がある。
結論
地域介護施設では、欧米と異なり多くの利用者が終末期は病院に送られて死を迎えていることが確認された。地域基幹病院の調査では、事前指示のある例は少ないことが明確となり、自己決定支援ツールとして事前指示書と説明文書のモデルが作成された。ただ、事前指示書は万能ではないので、継続的な話し合いが必要である。なお、法的な整備がない現在の日本では、医療継続の中止は殺人とされる危険性があり、今後の更なる研究が必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2006-06-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500294C

成果

専門的・学術的観点からの成果
終末期ケアの問題は、高齢化に急速に向かっている日本での今後の重要な課題であるが、医療と福祉の連携や医療と法律の調整など社会科学的な研究が少なく、個々の現場で種々な問題が生じている。この研究では、医療の現場における地道な実証的研究を積み上げ、その基盤の上で問題点を抽出し、欧米諸国の状況とも比較しつつ社会科学的観点での研究を開拓し、事前指示書書式を開発したものである。
臨床的観点からの成果
臨床現場に立脚した実証的研究により、本人の事前の意思表示はほとんどなく、しかも急激に終末期になる例も多いこと、終末期は結局病院に送られる例が多いことが明らかになった。そこで、早い時期から事前指示書作成のサポートを行うことや、事前指示書作成後も継続的なケアを行うことの重要性が認識された。そこで、提案されている事前指示書書式を活用した臨床での取り組みを準備しているところである。
ガイドライン等の開発
終末期ケア、とくに過剰と考えられる医療の中止や、福祉の現場での終末期ケアに関しては明確なガイドラインがなく、現場はきわめて慎重な対応を強いられている。この問題は、医学のみでなく倫理的、法的、社会的観点での検討を必要とし、欧米での検討経過も参考にしていく必要がある。ガイドラインはこれからであるが、今回は倫理的、法的、社会的な検討も加えて、事前指示書書式を開発した。
その他行政的観点からの成果
終末期ケアの問題は複雑で微妙な問題を多く含んでおり、明確な行政的成果が得られるのはもうすこし時間がかかると考えられる。
その他のインパクト
現段階ではまだインパクトのある成果は得られていない。今後、事前指示書の臨床的な試行が始まり、終末期ケアの持続的なサポートなどの成果が上がればインパクトのある成果に結実することが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-