高齢者疾患病理における遺伝素因の解明

文献情報

文献番号
200500293A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者疾患病理における遺伝素因の解明
課題番号
H16-長寿-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
白澤 卓二(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団・東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 沢辺 元司(東京都老人医療センター・剖検病理科)
  • 新井 冨生(東京都老人医療センター・臨床病理科)
  • 細井 孝之(国立長寿医療センター病院・先端医療部)
  • 村松 正明(東京医科歯科大学難治疾患研究所・分子疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
16,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究領域は、これまでにモデル動物やモデル疾患で発見された寿命・老化制御シグナルが実際にヒトにおいても、同様のメカニズムで老人病の発症および老化のプロセスを制御している可能性を検証し、更に高齢者のゲノム解析でその遺伝素因を検証、老人病の発症を予測・予防することにより健康寿命を延長する事が目的である。
研究方法
本研究領域は、これまでにモデル動物やモデル疾患で発見された寿命・老化制御シグナルが実際にヒトにおいても、同様のメカニズムで老人病の発症および老化のプロセスを制御している可能性を検証し、更に高齢者のゲノム解析でその遺伝素因を検証、老人病の発症を予測・予防することにより健康寿命を延長する事が目的である。
結果と考察
解析対象遺伝子は脳動脈,冠状動脈,大動脈を含む10血管の粥状硬化度を肉眼的に半定量的に評価し、得られた連続量としての粥状硬化度と前述の解析対象遺伝子SNPsの関係を統計学的に解析した結果、2カ所以上の血管で有意差が出た遺伝子はCYP1A1, TNFαであり,その他の遺伝子では1血管のみで有意であった.総頚動脈ではβ3-adrenoreceptor, TNFαで有意であった.脳動脈,冠状動脈で有意なSNPは見つからなかったが,脳動脈ではadiponectin, eNOS,TGFβ, XRCC1で,冠状動脈ではMCP-1で傾向(p<0.1)を認めた.大動脈ではeNOSが有意であった.8血管の粥状硬化度の平均を指標とすると,MCP-1で有意差(p<0.05),eNOS, ERα, PON-1, TNFαで傾向(p<0.1)が認められた.また、解析中に一般集団に0.3%の割合でみられる新規のTNFα遺伝子の変異を見いだした。この変異をもつ患者の病理・臨床診断には脳・血管系疾患が高頻度に認められ、動脈硬化の危険因子であると考えられた。

結論
本研究において解析した遺伝子群には、老年病発症を予測できる遺伝子が含まれている可能性があり、さらなる研究の発展により臨床の現場へのフィードバックが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200500293B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者疾患病理における遺伝素因の解明
課題番号
H16-長寿-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
白澤 卓二(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団・東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 沢辺 元司(東京都老人医療センター・剖検病理科)
  • 新井 冨生(東京都老人医療センター・臨床病理科)
  • 細井 孝之(国立長寿医療センター病院・先端医療部)
  • 村松 正明(東京医科歯科大学難治疾患研究所・分子疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究領域の目的は、これまでにモデル動物やモデル疾患で発見された寿命・老化制御シグナルが実際にヒトにおいても、同様のメカニズムで老人病の発症および老化のプロセスを制御している可能性を検証し、更に高齢者のゲノム解析でその遺伝素因を検証、老人病の発症を予測・予防することにより健康寿命を延長する事にある。
研究方法
東京都老人医療センターでは、約1700例以上の剖検例から、大脳皮質、心筋(左心室)、腎(皮質)、脾、肝(右葉)組織の収集を行い、全例において主に腎よりDNAを抽出し凍結保存している。この内1,536連続剖検例のDNAをSNP解析対象とした。男女比は1.1:1、平均年齢は80歳である.粥状硬化度の判定は脳動脈、冠状動脈、大動脈を含む10血管の粥状硬化度を肉眼的に半定量的に評価した。 44疾患関連遺伝子67 SNPと粥状硬化度の関係について、脳動脈、冠状動脈硬化については多重回帰分析を、他の血管についてはロジスティック回帰分析により統計処理した。
結果と考察
変異型のアレル頻度が5%以上のSNPは26遺伝子、38SNP見つかった。アレル頻度で見るとangiotensinogen、 β3-adrenoreceptor、 CYP1A1、 ELN、 eNOS、 ERα、 IL10、 IL1β、 MCP-1、 MPO、 p22phox、 p53、 TNFαの12遺伝子で有意な(p<0.05)SNPが同定された。このうち2カ所以上の血管で有意差が出たのはCYP1A1、 TNFαであり、その他では1血管のみで有意であった。総頚動脈ではβ3-adrenoreceptor、 TNFαで有意であった.脳動脈、冠状動脈で有意なSNPは見つからなかったが、脳動脈ではadiponectin、 eNOS、TGFβ、 XRCC1で、冠状動脈ではMCP-1で傾向(p<0.1)を認めた.大動脈ではeNOSが有意であった。8血管の粥状硬化度の平均を指標とすると、MCP-1で有意差(p<0.05)、eNOS、 ERα、 PON-1、 TNFαで傾向(p<0.1)が認められた。また、解析中に一般集団に0.3%の割合でみられる新規のTNFα遺伝子の変異を見いだした。この変異をもつ患者の病理・臨床診断には脳・血管系疾患が高頻度に認められ、動脈硬化の危険因子であると考えられた。
結論
本研究において解析した遺伝子群には、老年病発症を予測できる遺伝子が含まれている可能性があり、さらなる研究の発展により臨床の現場へのフィードバックが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500293C