高齢者糖尿病に対する総合診療体制確立のための総合的研究―無作為化比較研究(J-EDIT)を中心に

文献情報

文献番号
200500282A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者糖尿病に対する総合診療体制確立のための総合的研究―無作為化比較研究(J-EDIT)を中心に
課題番号
H17-長寿-013
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
井藤 英喜(財団法人東京都保健医療公社多摩北部医療センター(院長))
研究分担者(所属機関)
  • 大橋靖雄(東京大学大学院医学系研究科健康科学)
  • 柏木厚典(滋賀医科大学内科学第三内科学講座)
  • 山田信博(筑波大学臨床医学系代謝・内分泌内科)
  • 横野浩一(神戸大学大学院医学系研究科生育医学講座老年内科学)
  • 梅垣宏行(名古屋大学医学部附属病院老年科)
  • 三浦久幸(国立長寿医療センター外来診療部外来総合診療科)
  • 大庭建三(日本医科大学付属病院老人科)
  • 荒木 厚(東京都老人医療センター内分泌科)
  • 飯島勝矢(東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
23,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者糖尿病の治療の目的は、糖尿病であっても、可能な限り健康寿命を長く維持する、また合併症や生活機能の低下があってもQOLの高い生活を送れるように医療を通して支援することである。その目的のためにどのような治療を実施すべきか明らかにするため臨床的エビデンスとして最も有用とされるランダム化比較研究を遂行し、追跡開始後4年目の調査を実施した。
研究方法
対象は、治療介入効果が期待できる中等度以上の耐糖能低下を有する高齢者2型糖尿病である。対象を無作為に強化治療群(成人糖尿病と同様の管理目標を達成すべく治療を行う)と通常治療群(主治医が妥当と考える治療を行う)に分け、両群における糖尿病性細小血管症、動脈硬化性血管障害、死亡、死因、日常生活機能(ADL:Activity of Daily Living)、認知機能、うつ状態、糖尿病負担度などの変化を前向きに追跡し2群間で比較検討する。同時に、検査値など臨床諸指標と上記諸観察項目との関係にき種々のサブ解析を行う。
結果と考察
平成12年4月から12月にかけプロトコール、調査項目、群割り付け方法、研究データ管理システムを作成した。平成13年3月より平成14年2月にかけ症例登録を行い、全国39施設より1,173症例の高齢者糖尿病が登録された。登録症例は無作為に、585症例は強化治療群に、588症例は通常治療群に群分けされた。強化治療群および通常治療群のHbA1C,年齢、性、血清脂質、血圧、糖尿病治療法、糖尿病性細小血管症、動脈硬化性血管障害などに両群間に差異を認めなかった。本年度は、平均追跡期間4年に相当する平成17年9月末までの生死、死因、動脈硬化性血管障害の発症の有無、糖尿病性細小血管症の発症・進展の有無および諸検査値の推移などにつき調査した。その結果、糖尿病に原因すると考えられる死亡、心血管イベントの発生率には両群の間に有意な差異は認めなかった。また、追跡開始後4年の成績も含め追跡開始後の体重、BMI、HbA1C、血清脂質、血圧などの推移にも群間の差異を認めなかった。
結論
介入開始後4年の時点では、強化治療群と通常治療群の間に、死亡、動脈硬化性血管障害の発生頻度などに有意差を認めていない。この事実は、HbA1C,血圧、脂質、体重などの推移において両群の間に差異を認めないこととよく一致する結果である。しかし、死亡や動脈硬化性血管障害の群間に差異がないと結論するには、さらに数年の追跡を必要とすると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-