高齢者における薬物代謝関連遺伝子情報を考慮した適正な薬物治療の基盤整備に関する研究

文献情報

文献番号
200500270A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者における薬物代謝関連遺伝子情報を考慮した適正な薬物治療の基盤整備に関する研究
課題番号
H16-長寿-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 裕司(浜松医科大学医学部臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 京一(大分大学医学部臨床薬理学)
  • 津谷 喜一郎(東京大学大学院薬学系研究科医薬経済学)
  • 景山 茂(東京慈恵会医科大学薬物治療学)
  • 野元 正弘(愛媛大学医学部臨床薬理学)
  • 橋本 久邦(浜松医科大学附属病院薬剤部)
  • 立石 智則(弘前大学医学部臨床薬理学)
  • 林 登志雄(名古屋大学大学院医学系研究科老年科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 高齢者では青壮年者に比べ有害反応や薬物相互作用が出現しやすい。薬物有害反応の出現に薬物代謝関連遺伝子の多型が関与する事が明らかになっているが、その関与の程度が、青壮年者と高齢者では異なるのかについては未だ明らかではない。本研究では、高齢者における薬物代謝関連遺伝子情報を考慮した適正な薬物治療を実践するための基盤となるエビデンスを構築することを目的とした。
研究方法
 薬物有害反応出現の特性や頻度を青壮年者と高齢者間で比較分析し、phenotypeデータとgenotypeデータの相関性について検討を加えた。また、高齢者が参加する臨床試験の実施可能性についてインターネット意識調査を行い、さらに、高齢者に対する適正な薬物治療実現に必要な政策基盤を明らかにするため、米国の政策および研究の状況を調査分析した。
結果と考察
 高齢者ではCYP2C19に関して、薬物代謝活性が高いと予想されるgenotype群でも、実際の薬物代謝酵素活性は低く、その結果、推定される以上の薬物血中濃度を示す場合が多い事が明らかとなった。
 高齢者ではゲノム医療への期待が高く、臨床試験参加に関して前向きな姿勢が認められた。また青壮年者に比較して、個人情報やプライバシーに対する抵抗感が低い事が示唆された。
 米国では、高齢者を対象とした公的保険制度の給付を受ける医療行為については、電子化された患者の処方と医療記録が薬剤疫学データベースとして構築され、公的な研究資源として広く利用されていた。また包括同意の下、DNAサンプルを長期保管し、匿名化した上で臨床データとリンクさせ利用可能なシステム整備が進められている。わが国でも科学的倫理的な合意形成とともに、DNAバンキングを含むシステム整備が急務と思われる。
結論
 高齢者においてそのgenotypeが、必ずしもphenotypeを予測する指標とはなり得ないことが明らかとなり、青壮年者のデータから設計されたゲノム情報に基づくテーラーメイド治療が、高齢者においては安易に適用できない可能性が示唆された。高齢者ではゲノム医療をはじめとする最新医学に対する期待が高く、みずから試験参加者として遺伝子解析を含む臨床研究に参加する事に対しても抵抗感は大きくはない。今後、高齢者を対象とした臨床研究を適正に実施しエビデンスを集積していくことが必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200500270B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者における薬物代謝関連遺伝子情報を考慮した適正な薬物治療の基盤整備に関する研究
課題番号
H16-長寿-001
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 裕司(浜松医科大学医学部臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 京一(大分大学医学部臨床薬理学)
  • 津谷喜一郎(東京大学大学院薬学系研究科医薬経済学)
  • 景山 茂(東京慈恵会医科大学薬物治療学)
  • 野元 正弘(愛媛大学医学部臨床薬理学)
  • 橋本 久邦(浜松医科大学附属病院薬剤部)
  • 立石 智則(弘前大学医学部臨床薬理学)
  • 林 登志雄(名古屋大学大学院医学系研究科老年科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 高齢者では青壮年者に比べ有害反応や薬物相互作用が出現しやすい。薬物有害反応の出現に薬物代謝関連遺伝子多型の関与が注目されているが、その影響が、青壮年者と高齢者では異なるのかについては未だ明らかではない。本研究では、高齢者における薬物代謝関連遺伝子情報を考慮した適正な薬物治療を実践するための基盤となるエビデンスを構築することを目的とした。
研究方法
 浜松医科大学、名古屋大学、愛媛大学、東京慈恵会医科大学、弘前大学において、薬物有害反応出現の特性や頻度を青壮年者と高齢者間で比較分析し、phenotypeとgenotypeの関係について検討を加えた。また、厚生労働省統計資料を基に高齢者薬物治療に関する医療経済的分析を行い、インターネットを利用しゲノム医療に関する意識調査を実施した。さらに、高齢者薬物治療に関する米国の政策および研究の状況を調査分析した。
結果と考察
 高齢者において、薬物有害事象の発生が青壮年者に比較し、高頻度となる事がいくつかの薬物で明らかにされた。また、薬物代謝関連遺伝子多型の影響が加齢により修飾される可能性が示唆された。CYP2C19に関して、高齢者では薬物代謝活性が高いと予想されるgenotype群において、実際の薬物代謝酵素活性は低く、推定される以上の薬物血中濃度を示す例が多く認められた。インターネットによる意識調査結果からは、高齢者ではゲノム医学をはじめとする最新医学に対する期待感が強く、臨床研究への参画姿勢が高い事が示唆された。米国では、電子化された薬剤疫学データベースが公的な研究資源として広く利用され、包括同意の下、DNAサンプルを長期保管し、将来の研究に利用可能なシステム整備が進んでいた。わが国でも科学的倫理的な合意形成とともに、DNAバンキングを含むシステム整備が急務と思われる。
結論
 高齢者においてそのgenotypeが、必ずしもphenotypeを予測する指標とはなり得ないことが明らかとなり、青壮年者のデータから設計されたゲノム情報に基づくテーラーメイド治療が、高齢者においては安易に適用できない可能性が示唆された。高齢者ではゲノム医療をはじめとする最新医学に対する期待が高く、みずから試験参加者として遺伝子解析を含む臨床研究に参加する事に対しても抵抗感は大きくはない。今後、高齢者を対象とした臨床研究を適正に実施しエビデンスを集積していくことが必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500270C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 高齢者において初めてgenotypeとphenotypeの関連を検討し、薬物代謝酵素CYP2C19を例に、高齢者ではgenotypeが薬物代謝活性を予測する指標とはなり得ないことを明らかにした。この結果は、青壮年者のデータから導かれたゲノム情報に基づくテ-ラ-メイド治療の概念が高齢者においては適用できない可能性がある事をはじめて示したものである。また、包括的同意の下に、DNAサンプルの積極的保存や、匿名化した上で臨床データと遺伝子データをリンクさせうるシステム整備が進む米国の現状を報告した。
臨床的観点からの成果
 高齢者における薬物有害事象の発生が、青壮年者に比較し高頻度となる事を臨床上使用頻度の高い抗不整脈薬、糖尿病治療薬、抗結核薬などのいくつかの薬物で明らかにした。またインターネットによる意識調査により、高齢者ではゲノム医療をはじめとする最新医学に対する期待が高く、みずから試験参加者として遺伝子解析を含む臨床研究に参加する事に対して抵抗感は大きくはない事など、高齢者を対象とした臨床研究の実行可能性を明らかにした。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
特になし。
その他のインパクト
 一般向けの公開シンポジウム(平成18年1月14日 於アクトシティ浜松コングレスセンター)を開催し、本研究成果を発表するとともに、高齢者に対する適正な薬物療法の実現や、高齢者医療の質の向上の為に、高齢者みずからが積極的に医療へ参加する必要性も紹介した。公開シンポジウムはNHKを含むマスコミで事前に案内され、その内容は静岡新聞、中日新聞紙上で取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
42件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamada H. Tateishi M. Harada K. et al.
A Randomized Clinical Study of Tea Catechin Inhalation Effects on Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus in Disabled Elderly Patients
JAMDA , 2 , 79-83  (2006)
原著論文2
内田 信也 渡邉 裕司 後藤真寿美 他
HMG-CoA還元酵素阻害薬 Pravastatin服用患者におけるリスクファクターと血清脂質値に関する調査
臨床薬理 , 38 (2) , 81-87  (2005)
原著論文3
Ishizawa Y. Yasui-Furukori N. Takahata T. et al.
The effect of aging on the relationship between the cytochrome P450 2C19 genotype and omeprazole pharmacokinetics
Clin Pharmacokinet , 44 (11) , 1179-1189  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-