高齢者の望ましい終末期ケア実現のための条件整備に関する研究-介護保険施設における終末期ケアの検討を中心に

文献情報

文献番号
200500269A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の望ましい終末期ケア実現のための条件整備に関する研究-介護保険施設における終末期ケアの検討を中心に
課題番号
H17-長寿-040
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
田宮 菜奈子(筑波大学 大学院 人間総合科学研究科 ヒューマン・ケア科学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 梶井 英治(自治医科大学 地域医療学センター 地域医療学部門)
  • 有賀 悦子(国立国際医療センター 緩和ケア科)
  • 大久保 一郎(筑波大学 大学院 人間総合科学研究科)
  • 柏木 聖代(筑波大学 大学院 人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
5,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者福祉施設の利用者が増加する日本において、介護保険施設における終末期ケアの体制整備は急務である。本研究は、1)施設内死亡と入院先死亡をアウトカムにした実証データに基づく症例対照研究により施設内死亡の関連要因を明らかにする 2)現場専門職に対する終末期ケア教育システムの提案 3)利用者の権利擁護に基づく終末期に対する事前意思確認の方法論の提案 4)施設内終末期ケアの費用の検討を目的とした。
研究方法
多施設フィールド調査(介護老人福祉施設2施設、介護老人保健施設1施設)と公表データに基づく全国調査を行った。
結果と考察
1)介護保険施設内死亡と関連する要因の検討
1介護老人福祉施設の調査により、高齢、家族の施設内での終末期ケア希望、および常勤医師の存在が施設内死亡と関連していることを明らかにした。
公表全国データにて、介護保険施設種別ごとに施設内死亡者を病院死亡者と比較し、施設内死亡と関連する利用者の個人の特性を検討した。その結果、介護老人福祉施設では85歳以上、女性、および要介護度5、介護老人保健施設では6ヶ月以上の入居期間、介護療養型医療施設では女性が施設内死亡と関連することが明らかになった。
2)現場専門職に対する終末期ケア教育システムの提案
 1介護老人福祉施設で行った、実証データに基づく職員勉強会により、終末期ケアに対するエンパワーメントの効果が示唆された。
3)利用者の権利擁護に基づく終末期に対する事前意思確認の方法論の提案
1介護老人福祉施設の調査により、「終末期の医師による説明および同意に関する記録書」を用いた終末期場所の決定の過程を検討し、この記録書が米国ナーシングホームにおける一般病院搬送制限の事前指示とほぼ同じ役割をはたしていることを明らかにした。
4) 施設内終末期ケアの費用の検討
 1介護老人福祉施設の7人の施設内死亡者の死亡前1,3ヶ月分の医療費と介護サービス費用および、1介護老人保健施設での病院死亡者3人の最終入院時医療費を算出し、過去の報告と比較検討した。これにより、病院や在宅死亡者の死亡直前の医療費と比較して、介護保険施設内死亡者の終末期医療費が低額であることが示された。
結論
現状の施設内死亡者は、高齢・家族の希望・医療体制が関連要因であり、終末期医療費は病院より低額であることが示された。今後、新たな加算の影響も含め、ケアの質も考慮したより一般化できる分析が課題である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-