ヒト心筋・骨格筋からの心筋幹細胞株の樹立と末期的心不全への幹細胞移植医療実現化へ向けての研究基盤形成

文献情報

文献番号
200500266A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト心筋・骨格筋からの心筋幹細胞株の樹立と末期的心不全への幹細胞移植医療実現化へ向けての研究基盤形成
課題番号
H17-トランス-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
松原 弘明(京都府立医科大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 王 英正(京都大学 医学研究科)
  • 室原 豊明(名古屋大学 医学研究科)
  • 尾池 雄一(慶應大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
51,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト心臓組織やヒト骨格筋より心筋幹細胞を単離・増殖させ、アロ移植用細胞株の樹立し、心臓移植が必要な末期的心不全患者さん心筋に移植する。世界で初めての心筋細胞移植医療の実現化に向け、大動物を使用した前臨床試験及び心筋再生臨床試験を実施する。
研究方法
ヒト心筋・骨格筋から心筋幹細胞クローン化とアロ移植細胞株の樹立、大動物移植実験の実施:研究代表者らはヒト心筋および骨格筋から心臓幹細胞の単クローン化増殖・増幅に成功している。小動物移植実験は終了しているので、大動物(ブタ)を用いた前臨床試験を実施する。ヒト心臓組織は開心術中の心房、ヒト骨格筋は下肢切断肢より約5-10g採取する。コラゲナーゼ処理による分離後、我々が独自に開発した、単一細胞無血清浮遊系システムでスフェアを形成した幹細部群を再度酵素処理にて分離し、我々が発見した心筋特異的分化誘導培養液にて大量に増幅させる。ブタ冠動脈を遮断・再開通させ虚血心筋モデルを作成し、1月後に心筋幹細胞を生体吸収hydrogelとともに心筋内に移植する。血管造影・エコーにて移植後の心機能を評価する。
臨床試験プロトコール作成と第1相臨床試験:大動物前臨床試験の成績をもとに第1相臨床試験プロトコールは京大探索医療センター検証部で作成する。心臓移植ドナー待ち、あるいは他に治療法のない末期的心不全(虚血性心臓病または拡張型心筋症)を対象に、心筋幹細胞を移植する心筋再生医療の第1相臨床試験を開始する。
結果と考察
プロジェクト開始1年目となる平成17年の研究達成内容はマウス骨格筋及び心臓組織を用いて、単一細胞からクローン化増殖する心筋幹細胞の純化に取り組み、それぞれの体組織から心筋細胞のみならず、血管内皮平滑筋、脂肪細胞などにも分化しうる多能性幹細胞であることを明らかにした。さらに、ヒトの骨格筋及び心臓切除組織を用いた解析でも、これらのヒトの体組織内にヒト心筋細胞に分化する心筋幹細胞の存在を明らかにした。
考察
 我々が開発した心筋幹細胞は世界で初めての臨床応用可能な細胞ツールである。移植幹細胞の増殖方法、生体吸収ゲルを使った足場を確保した移植方法や大動物での安全性が新年度の解決目標である。これらの問題点をクリアーして、世界で初めての心筋再生医療の実施に向けて研究を進める。
結論
ヒト心筋あるいはヒト骨格筋から分離に成功した心筋幹細胞は、心筋分化効率、心機能改善効果から考えて、末期的心不全に対して最高の移植細胞ツールである。今後は安全性を目的とした大動物実験にて、前臨床試験を実施して、心筋再生臨床試験へと進む予定である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-10
更新日
-