文献情報
文献番号
200500259A
報告書区分
総括
研究課題名
活性蛋白の非注射型ナノDDS製剤
課題番号
H16-トランス-007
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
水島 裕(東京慈恵会医科大学DDS研究所)
研究分担者(所属機関)
- 上野 晃憲(東京慈恵会医科大学DDS研究所)
- 鈴木 潤(株式会社LTTバイオファーマ研究開発本部)
- 上野 幸生(株式会社LTTバイオファーマ研究開発部)
- 水島 徹(熊本大学医学薬学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
45,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
インスリンそのものの経皮吸収は殆どされず、経肺吸収でもヒトでは数%である。本研究の2価の金属イオンおよび塩基塩を粒子表面につける技術、またその粒子の経皮・経粘膜投与方法の開発は全く独創的である。我々は、インスリンを亜鉛によって疎水化した後、含水有機溶媒,炭素鎖14程度の脂肪酸,界面活性剤,2価の金属イオンと陰イオンを用いて、非注射で用いる活性タンパクナノ粒子作製技術を開発し、応用することを本研究の主な目的としている。
研究方法
16年度の成果として、インスリンのナノ粒子(ナノインスリン)製剤作製についての条件検討から設定した条件に基づき、17年度は、炭酸カルシウムで被覆されたナノ粒子インスリン製剤を作製した。動物(マウス)での経皮吸収について検討を加えた。その後、18年度に計画しているヒトでの臨床試験を視野に入れて、ボランティアで少量のナノインスリンによる安全性と有効性について前腕内側にワセリンを基材としたナノインスリンを塗布してプレリミナリーな検証を行うことを試み、その有効性を血糖値の測定により判定した。
結果と考察
物理的な検討でばらつきの小さな粒子径を持つ粒子であった。分析学的検討の結果では封入されたインスリンも変性・分解を受けている可能性が低いことを検証した。血中インスリン濃度上昇および血糖値下降が生じることを確認した。その際に、塗布した皮膚にはなんらの変化も認めなかった。塗布した皮膚にはなんらの異常を認めなかった。ヒトでは、コントロールに比べて有意な低下を示す結果ではなかった。
結論
今年度の成果として、インスリンを均一なナノ粒子化することに成功したこと、動物においては安全性と有効性の確認がなされたこと、さらに蛋白のフォールディングを調節出来るようになれば効率の良い粒子作製が可能になること、が挙げられる。本年度行ったマウスの皮膚においては、インスリンの吸収と血糖値低下が観察されたが、ヒトにおいては観察されていない。皮膚構造の違いまたは部位によるかもしれないが、さらに粒子作製の検討を行う必要があろう。しかし、この大きさのナノインスリンであれば、別の部位の皮膚に適用して検討することも必要かもしれない。また、別の投与経路(例えば、経肺投与など)での可能性について検討する価値はあると思われる。
公開日・更新日
公開日
2006-04-10
更新日
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