再生医療技術を応用したテーラーメード型代用血管・心臓弁の臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200500257A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療技術を応用したテーラーメード型代用血管・心臓弁の臨床応用に関する研究
課題番号
H16-トランス-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
中谷 武嗣(国立循環器病センター)
研究分担者(所属機関)
  • 山岡 哲二(国立循環器病センター)
  • 藤里 俊哉(国立循環器病センター)
  • 湊谷 謙司(国立循環器病センター)
  • 北村 惣一郎(国立循環器病センター)
  • 岸田 晶夫(東京医科歯科大学)
  • 庭屋 和夫(国立循環器病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 基礎研究成果の臨床応用推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
43,775,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、組織バンクが整備されたことで、提供された同種血管や心臓弁が使用されつつあり、良好な成績が報告されている。しかし、我が国では提供数が絶対的に不足している。我々は、同種あるいは異種組織から細胞成分を消失させた後に患者の細胞を組み込んだテーラーメード型組織移植を目指している。この再生型組織移植では、固定化されておらず細胞も除去されているため、移植後に自己細胞が侵入することで自己組織化される。これにより、移植後に成長する移植組織が作出し得ると考えられる。
研究方法
脱細胞化処理:ドナーとなる体重5?10kgのクラウン系ミニブタから、肺動脈弁及び下行大動脈を清潔麻酔下にて採取した。冷間等方圧加圧装置を用い、4℃にて980MPaの超高静水圧印加処理を10分間行い、ドナー由来細胞を破壊した。続けて、PBSをベースとする洗浄液及びエタノールで2週間撹拌洗浄した(パワーグラフト法)。
同種移植実験:クラウン系ミニブタを用い、脱細胞化肺動脈弁及び下行大動脈を用いた組織移植を行った。所定期間経過後、移植組織を摘出し、組織学的所見を検討した。なお、動物実験に関しては、麻酔や鎮痛剤の使用、最小使用数となるような実験計画の立案など、所属施設における規定に従い、実験動物の愛護に配慮した。
結果と考察
昨年度は、脱細胞化下行大動脈の同種移植実験について報告したが、移植後組織内の石灰化が認められた。その原因として、脱細胞化処理後の組織内のリン脂質の残存が考えられた。本年度後半より、超高圧処理後の洗浄過程にてアルコール処理を導入することで、その残存量を顕著に減少させることができた。現在、同種移植実験を継続中であるが、下行大動脈組織で、石灰化が極めて抑制されている結果を得つつある。
結論
欧米では脱細胞化処理に薬液を用いた方法で、既に数グループが臨床応用を開始しているが、米国社の製品では、不十分な脱細胞化が原因と思われる移植後早期の不全例が報告され、現在、製造停止状態にある。一方、独国フンボルト大学のグループは、100名以上の患者に適用しており、異常所見は認められていないと報告している。我々は、ミニブタを用いた同種肺動脈組織での良好な結果を受けて、脱細胞化同種肺動脈弁の臨床応用は2年以内に可能であろうと考えている。脱細胞化同種大動脈弁や血管、及び患者細胞を播種した異種組織についても数年以内の臨床応用を目指している。

公開日・更新日

公開日
2006-05-12
更新日
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