高次脳機能障害診断のための経頭蓋磁気刺激による誘発脳波計測システム等の開発

文献情報

文献番号
200500254A
報告書区分
総括
研究課題名
高次脳機能障害診断のための経頭蓋磁気刺激による誘発脳波計測システム等の開発
課題番号
H15-フィジ-003
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
諏訪 基(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中島八十一(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
  • 上野照剛(東京大学医用生体工学)
  • 三木幸雄(京都大学放射線科)
  • 鎗田 勝(日本光電)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 身体機能解析・補助・代替機器開発研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
81,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
17年度は経頭蓋磁気刺激(TMS)による誘発脳波のうち前頭葉に起源をもつ短潜時成分の効率的な誘発法の確立と、疾患例への応用を試みる。また、このようなTMSによる誘発脳波を低ノイズで効率的に記録できる計測システムを開発することを目指し、マルチチャンネル増幅器を備えた試作機を作成する。大脳白質病変については3Tの静磁場強度を持つMRIを用いた拡散テンソル画像で、これまで視覚化できなかった微細な病変を描出するために脳内線維束表示(tractography)を試みる。さらに、TMSの治療への応用を図るため、これまでに実施されている電気痙攣療法(ECT)と同等の脳内電流分布を得るために必要な刺激条件の決定と、それを可能にする刺激装置の要件を決定する。
研究方法
対象者を必要とした研究では、それぞれの所属施設において倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
結果と考察
TMSを用いた誘発脳波については、刺激コイルの方向による誘発脳波の動態の違いから最適刺激方向を決定した。また、びまん性軸索損傷による高次脳機能障害者に本法を適用し、画像診断で所見陰性にもかかわらず、短潜時成分に健常者との明確に異なる所見を得た。
TMSによる誘発脳波を測定するシステムの開発については、マルチチャンネル高性能増幅器を試行的に作製し、増幅器単体の性能はほぼ目的の性能を達成した。しかし、磁気刺激ノイズ混入の要因には、増幅器だけでなく電極や電極ペースト等、複数の要因があることが明らかにされた。
3TMRI診断装置を用いた研究では、マルチチャンネルコイルと組み合わせて脳の拡散テンソル画像を撮像した。脳腫瘍、血管奇形など脳占拠性病変症例において脳内線維束表示(tractography)を脳神経外科手術用ナビゲーションシステムへ導入し、臨床有用性が確認された。
電気痙攣療法(ECT)をTMSを用いて行う時の、TMSの刺激条件をシミュレーションにより求めた。その結果、TMSを用いてECTに近い電流分布を得るためには直径が150㎜程度の大きなコイルの使用が望ましいことが明らかになった。
結論
TMSによる誘発脳波は課題を課することなく前頭前野に起源をもつ脳波成分を誘発可能であるところから、前頭葉の白質病変を主たる病変部位とする高次脳機能障害者の診断法として有用であると考えられ、そのための刺激条件、記録条件が定められた。また、疾患例による記録はこの見解を支持した。この誘発脳波を記録する機器開発も実用機開発段階に進んだ。

公開日・更新日

公開日
2006-05-09
更新日
-