乳癌患者における抗体療法の効果・副作用規定因子の探索

文献情報

文献番号
200500240A
報告書区分
総括
研究課題名
乳癌患者における抗体療法の効果・副作用規定因子の探索
課題番号
H17-ファマコ-006
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 康弘(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 千佳子(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
  • 西尾 和人(国立がんセンター研究所 薬効試験部)
  • 青儀 健二郎(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター )
  • 木下 貴之(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
  • 関 邦彦(国立がんセンター中央病院 臨床検査部)
  • 関島 勝(株式会社三菱化学安全科学研究所鹿島研究所 先端技術研究部)
  • 井上 浩明(株式会社東洋紡ジーンアナリシス 敦賀ラボラトリー)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【ファーマコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
49,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗HER2ヒト化モノクローナル抗体トラスツズマブはHER2蛋白を過剰発現あるいはHER2遺伝子の増幅を示す乳癌患者を対象に中心的に用いられている。単剤の奏効率は20-30%で臨床的な耐性、心筋障害などの副作用が臨床的に大きな問題となっている。これらの発現機序は明確でなく、現行の治療前の各種診断法ではトラスツズマブの効果・副作用予測は不十分である。本研究では、効果、副作用の予測因子を癌組織と宿主側因子から探索、検証することを目的とした。
研究方法
1. 臨床サンプルの収集と臨床試験の実施 トラスツズマブ投与を受けた患者を対象として当該施設の倫理委員会で臨床試験に対する承認を得る。また、対象患者から生検組織を採取、収集、保管する体制を確立する。
2. 基礎的検討として以下の解析手法の検証および新規測定系の確立を行った。
(1)抗体受容体部分 (FcγR) の遺伝子多型
(2)糖鎖修飾に関連するフコシルトランスフェラーゼの血清内活性
(3)標的となる腫瘍組織におけるHER2遺伝子変異
(4)チミジル酸合成酵素に関する遺伝子多型(SNP)
(5)フコシルトランスフェラーゼのSNP
結果と考察
1. 臨床試験の実施と臨床検体の収集: 本年度は臨床試験体制準備を行った。国立がんセンター中央病院および四国がんセンター倫理委員会で同臨床試験の承認を得、症例登録を開始し、対象患者から、末梢血、針生検による生検組織を採取、収集している。
2. 各種マーカーのアッセイ系の確立として(1)抗体依存性細胞障害能(ADCC)に関わる宿主側因子である、患者の抗体Fc受容体部分のSNPの測定系を確立と精度検定(2)抗体側の因子である糖鎖修飾について、修飾酵素であるフコシルトランスフェラーゼ(FT)およびフコシダーゼの血清中活性測定系の確立(3)同抗体の標的であるHER2遺伝子のSNPの方法論の比較、選定(4)バイオビーズを用い、末梢血単核球(エフェクター細胞)の遺伝子変動、腫瘍組織および血清中のHER2およびその下流シグナル蛋白質のリン酸化の網羅的な蛋白質の定量解析系の確立と標準化(5)FTのSNP検出系を確立した。
HER2蛋白2量体形成量についてはe-Tag系の感度が不十分であると判断し、他の方法による形成量定量化を試みている。
結論
トラスツズマブによる治療をうける乳癌患者を対象とした臨床試験を実施し、バイオマーカーの検討を行うための腫瘍組織及び末梢血の収集を開始した。各種アッセイ系の確立、精度検定、標準化を実施した。本年度は、上記の解析手法の検証および新規測定系の確立を行い、当初の計画が達成された。

公開日・更新日

公開日
2006-04-28
更新日
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