文献情報
文献番号
200500237A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子治療薬の生体内投与後の毒性発現機構解析に関する研究
課題番号
H17-トキシコ-012
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
水口 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所基盤研究部遺伝子導入制御プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、アデノウイルス(Ad)ベクター投与後の毒性発現に至る分子メカニズムの解明や、関与する細胞(生体)側およびウイルス側因子の同定を行うことを目的とした。
研究方法
Adベクターと非ウイルスベクター投与後の遺伝子発現能と毒性について検討した。また、Adベクターを培養細胞に作用後の遺伝子発現変化についてDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。
結果と考察
1)Adベクターと非ウイルスベクター(lipoplex)をマウスに全身投与した場合の遺伝子発現能や自然免疫誘導能を比較解析した結果、Adベクター投与群ではlipoplex投与群に比べ、各臓器において1~5オーダー以上高い遺伝子発現が得られた。一方、自然免疫誘導能の指標となる血中IL-6、IL-12、TNF-α濃度については、lipoplex投与群はAdベクター投与群に比べ5~15倍高い濃度を示した。さらに非メチル化CpGモチーフを欠損させたplasmidからなるlipoplexを作製し同様の検討を行ったが、血中IL-6濃度は依然としてAdベクター投与群に比べ高いものであり、lipoplexは遺伝子発現能が低いだけでなく、少なくとも自然免疫誘導能に関する副作用がAdベクターよりも高く、in vivo遺伝子治療を進める場合には注意を要することが示唆された。2)従来型AdベクターおよびRGD型ファイバー改変Adベクターを初代培養腹腔内マクロファージに作用させた後の遺伝子発現変化を DNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析した結果、RGD 型Adベクターの方が従来型Adベクターより多くの遺伝子発現変化を引き起こすことが明らかとなった。また、ベクター作用 3 時間後において両ベクター共通に発現が上昇する遺伝子を調べた結果、炎症時に産生されるサイトカインやケモカイン、インターフェロン誘導遺伝子が多く認められており、Ad ベクターによりインターフェロンカスケードが活性化されていることが明らかとなった。
結論
Adベクターと非ウイルスベクターを投与後の自然免疫活性化能を検討した結果、これまで安全性が高いと考えられてきた非ウイルスベクターの方が、Adベクターに比べ、サイトカイン産生に伴う毒性が高いことが判明した。Adベクターを培養細胞に作用後の遺伝子発現解析について、DNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析した結果、インターフェロンカスケードが活性化されていることが明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2006-04-07
更新日
-