遺伝子発現の網羅的解析によるワクチンの新しい安全性評価に関する研究

文献情報

文献番号
200500235A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子発現の網羅的解析によるワクチンの新しい安全性評価に関する研究
課題番号
H17-トキシコ-009
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
山口 一成(国立感染症研究所・血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 慎哉(東京医科歯科大学・大学院・臨床インフォマティクス講座)
  • 野村 信夫(産業技術総合研究所・生物情報解析研究センター)
  • 浜口 功(国立感染症研究所・血液・安全性研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
43,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまでに国立感染症研究所では、動物にワクチン接種した後にみられる毒性変化を指標にワクチンの安全性の評価を行ってきた。しかしながら、ワクチン接種に伴う副反応のメカニズムに関してはこれまで十分に明らかにされていない。近年トキシコゲノミクス分野の進展と共に、毒性に関連する遺伝子群の特定が進められており、今回われわれは新たに、トキシコゲノミクスの手法を用いてワクチンの毒性に関連する遺伝子を特定し、ワクチンが生体に与える反応を分子レベルで解明するとともに、ワクチンの安全性評価法の確立を目指す。
研究方法
毒性参照用百日せきワクチン、精製百日せきワクチン、百日咳毒素、それに生理食塩水をそれぞれ接種したラットから肝臓、脳、肺、腎臓を接種後1~4日に摘出し、合計192サンプルについて、DNAマイクロアレイ解析を行なった。合計11400個のラット遺伝子の発現をクラスター解析した。解析より同定した遺伝子について定量PCRを行ない、ワクチン接種に伴う遺伝子発現量を解析した。
結果と考察
DNAマイクロアレイの手法を用いてワクチンの毒性に関与する遺伝子群を網羅的に解析した。これらの解析の結果、ワクチン接種1日目で肝臓に高発現するAGP (alpha 1-acid glycoprotein)、Lbp (lipopolysaccaride binding protein)、Hpx (hemopexin)の3遺伝子が毒性に密接に関連していることを明らかにした。さらに異なる濃度の百日咳毒素(PT) を接種したラット肝臓での遺伝子発現量を定量PCR法で測定したところ、AGP、Lbp、Hpxの3つの遺伝子についてPT濃度依存的に発現量の増加を認めた。さらにこれらの遺伝子の発現量を指標とした際、PT濃度1 μg/mlの混入の検出が可能であった。
結論
百日せきワクチンの毒性に関与するAGP、Lbp、Hpx遺伝子を同定した。これらの遺伝子変化が、百日せきワクチン投与に伴う血液学的、病理学的データよりも、迅速かつ鋭敏であることを明らかにしており、異常毒性否定試験に変わる新しい国家検定試験としての百日せきワクチの安全性の評価法確立を目指している。(特許出願中:特願 2006-020432)

公開日・更新日

公開日
2006-04-04
更新日
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