肝ステム細胞を用いた毒性発現の評価解析方法の確立

文献情報

文献番号
200500234A
報告書区分
総括
研究課題名
肝ステム細胞を用いた毒性発現の評価解析方法の確立
課題番号
H17-トキシコ-008
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
三高 俊広(札幌医科大学 医学部附属がん研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 萌芽的先端医療技術推進研究【トキシコゲノミクス分野】
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
21,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々の研究目的は、肝幹細胞の一種である小型肝細胞を用いて毒性発現の評価解析方法を確立し、DNA chipによる遺伝子発現解析を組み合わせて薬剤の副作用や相互作用を予測する技術を開発すること及びヒト正常肝臓より小型肝細胞を分離培養する方法を確立することである。
研究方法
主に3つの研究を行った。
(1)毛細胆管へ分泌される代謝産物の同定方法の確立
ラット小型肝細胞を分離培養し、培養皿上に作成した類肝組織を用いて、放射線ラベルした基質の取り込み実験や肝細胞排泄実験を行った。
(2)女性ホルモン異常状態(疑似妊娠状態)における薬剤の代謝酵素遺伝子誘導発現の解析
薬剤投与によるラット小型肝細胞の遺伝子発現をGeneChip(Affymetrix)により解析するために、本年度は正常成熟ラット肝細胞と小型肝細胞の遺伝子発現の差異を検討し、基礎データの集積を行った。
(3) ヒト小型肝細胞を効率よく分離培養する方法の確立
ヒト小型肝細胞は、(A)手術により摘出された正常肝組織からの分離、(B)中国上海市にあるResearch Institute for Liver Diseases (Shanghai), LTD(RILD社)より提供されたヒト小型肝細胞分画、の2つの方法により得られた細胞を用いて検討した。実験方法については札幌医科大学倫理委員会の承認を得ている。
結果と考察
17年度はそれぞれの研究に関して、次のような結果を得た。
(1)培養皿上に形成させた類肝組織に放射線ラベルした基質を投与し、毛細胆管中に排泄された基質代謝物を回収することに成功した。
(2)GeneChip による網羅的解析の結果、小型肝細胞に有意に発現が多かった遺伝子数は992、成熟肝細胞で発現が高い遺伝子数は620であった。またGene Ontology (GO)解析により、小型肝細胞では増殖に関係する遺伝子、成熟肝細胞は代謝に関する遺伝子の発現が有意に多いことがわかった。
(3)外科手術により採取した肝組織断片よりヒト小型肝細胞をほぼ純粋に分離し、無血清培養液にて増殖させる方法を開発した。
結論
ヒト小型肝細胞を分離培養できるようになったので、来年度以降はラットを用いた研究成果をヒト小型肝細胞の研究に応用し、培養皿上で形成させたヒト類肝組織を用いて薬剤の毒性や代謝機序・相互作用を研究する予定である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-07
更新日
-